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トラウマからの回復に必要なメンタライジング能力(2021.09.24更新)

トラウマは、極度のストレス体験そのもの(ストレス因)を指すだけでなく、極端な恐怖感や圧倒された感じ、そして極度の孤立感を体験することによって受ける長期的な悪影響(ストレス反応)だといえますよね。

「複雑な心理的トラウマ」による影響は、「情動的苦痛を引き起こすと同時に、苦痛を調整する能力の形成を妨げ」ます。

 

「複雑性PTSD」や「発達性トラウマ障害」、あるいは「愛着トラウマ」「関係性トラウマ」など、心理的トラウマにより引き起こされた情動的苦痛の緩和不全が「感情調節の障害」です。

そして、この情動的苦痛は、さらなる「関係性の障害」を引き起こし、「否定的な自己概念」をますます強化していきます。

 

トラウマ体験は主観的なものです。

 

対照的に極端な例を挙げると、実際には存在していない脅威をあなたが感じ取ったとします。

(たとえば強盗が銃を持っていると言い、あなたに金を出せと言ったが、実際にはその強盗は銃を持っておらず、あなたを傷つけるつもりは決してなかったことが後でわかるというような場合です)

しかし、もしあなたがそのときに生命と身体の保全がおびやかされ、危うい状態にいると感じたならば、それもまたトラウマとなっても当然なのです。

ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド』創元社

 

このようなストレス状況やトラウマ体験の影響から回復するこころの力を「レジリエンス」と呼びます。

レジリエンスは、ストレスや逆境に対して効果的に対処する心理的能力と言われています。

 

ホロヴィッツは、「自己-関係観察」ができるようになることを心理療法の諸学派に共通する目標と考えました。

 

「自己-関係観察」は、

  1.  こころの状態についての気づき
  2.  感情・考え・情動のコントロールについての気づき
  3.  自己概念あるいはスキーマ(関係のなかにおける役割モデル)についての気づき

の3つを含んでいます。(こころの健康クリニック芝大門で行っている対人関係療法も、リワークプログラムもこの原則に沿っています)

 

つまり「自分自身についてどのように考え、他者とどのようにかかわり、ストレスや逆境にどのように対処するのか」というライフスタイルの変化を引き起こすことが心理療法の共通目標なのです。

 

このうち、「自分自身についてどのように考え、他者とどのようにかかわるか」の部分が「ストレスや逆境にどのように対処するのか」というレジリエンスの土台になるということです。

これは「メンタライズする能力」とも呼ばれます。

 

メンタライズということは、自分自身や他者のこころの状態、たとえば感情や欲求や願望や考えや態度などに、気づくということです。

私たちがメンタライズしているとき、私たちは自分自身の行動や他者の行動の意図を理解できます。

感情的になったこころの状態から距離をとって、自分の現在の体験についてより合理的で、明確な考えを持つことができます。

ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド』創元社

 

「メンタライズする能力」によって、「ストレスや逆境にどのように対処するのか」に合理的で明確な考えができるのです。

 

しかし、日常生活の中では、ストレス状況(ストレス因と自分の中で起きるストレス反応)は避けられません。

それだけでなく、パートナーとの別離、離婚や死別などの喪失体験(日ごとに年をとり若さを失っていくことも含まれます)も生活の中では避けられないストレス状況ですよね。

あるいは犯罪に巻き込まれたり、被害に遭ったりなど、外傷的出来事に遭遇することだってあり得るわけです。

 

このようなストレス状況に対して、私たちは気持ちを奮い立たせるか(闘争)、そのような状況を避けるか(逃走)、どちらかなじみのある唯一の方策を使い続けることで、ますます空虚になっていくのです。

 

英語でcrisisという言葉に相当する漢字の熟語は「危機」ですが、この危機という言葉は、「危うさ」を示す「危」という語と、「好機」や「機会」を示す「機」という語の2つから成っています。

通常、トラウマというものは恐ろしいものですが、そうであると同時に、メンタライズするのに必要な素材が存在している場合には、それが成長の好機となる可能性もあります。

ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド』創元社

 

こころの健康クリニック芝大門で行っている「過食症(過食嘔吐)」「過食性障害(むちゃ食い)」の対人関係療法による治療では、過食(むちゃ食い)衝動が起きたときは、回復のチャンスが巡ってきたととらえるように教えていますよね。

 

ちょっと涼しさを感じる秋口には、夏の間に身体のシグナルを無視したムリなダイエットに取り組んだ人にとっては、リバウンド大食が起きやすくなります。

こういう時こそ、身体感覚がどんなニーズを訴えているのか、しっかりと身体の声を聞いてあげる必要があるのです。

 

感情や情動あるいは身体感覚をただ感じて、その感覚をリフレクト(内省)することで、「触れつつ、巻き込まれない(一緒にいる)情動耐性を高める受容のプロセスになります。

つまり、乱れた食行動(摂食障害)から回復するためには、「気持ちに気づくこと」「気持ちを受け容れること」から取り組み始める必要があるということです

 

対人関係療法での過食症の治療課題は、「自分の気持ちに注意してはっきりつかめるようになる、つまり自分自身との関係を改善し、他人との関係を改善すること」です。

つまり「自分自身や他者のこころの状態、たとえば感情や欲求や願望や考えや態度などに、気づくということ」によって、「ストレスや逆境にどのように対処するのか」について、「感情・考え・情動のコントロールについての気づき」が生まれ、「ネガティブな気持ちをコントロールするために食べ物を利用しなくてすむようになる」のです。

 

つい話が摂食障害の方にそれてしまいました。

 

職場でのハラスメントなどの対人トラウマや、夫婦/パートナー関係でのトラウマ、あるいは幼少期に形成された対人関係パターンの治療でも、同じように「自己-関係観察」つまりメンタライジング能力を高めていくことが必要不可欠なのです。

 

院長

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