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アタッチメントと臨床的な問題(2021.09.15更新)

「ジーナーらは、アタッチメントの問題を適応レベル(レベル1〜5)によって分類し(中略)、現時点で精神学的診断として用いられているのは、ストレス関連障害に含まれるレベル5に相当する反応性アタッチメント障害および脱抑制型対人関係障害である」としています。山下. 臨床に活きるアタッチメント研究の知見. こころの科学: 216, 23-29, 2021.

 

アタッチメントの適応レベルと関連する臨床問題との対応は、たとえば「反応性アタッチメント障害」および「脱抑制型対人関係障害」などの「愛着障害」はレベル5で、神経発達症(発達障害)や成長不全に関連し、「安全型(B型)」はレベル1で、レジリエンスに関連します。

 

毒親の正体とアタッチメント』で説明した回避型(A型)やアンビヴァレント型(C型)の「非安全型(不安定型)」はレベル2に相当し、小児期では反抗挑戦性障害や分離不安障害、あるいは、思春期以降に発症するパニック発作や抑うつ症状と関連するとされています。

 

問題は、解離症状や自傷行為、破壊的行動と関連する無秩序・無方向型(D型)と呼ばれる「非安全型」タイプです。

 

再会時に母親へしがみつきながら顔を逸らしていたり、床に寝ころがってかんしゃくを起こしたり、その場に立ち尽くしフリーズしたりといった矛盾した反応を示す乳児が存在することを見出し、無秩序・無方向型(D型)と名づけた。

この生後12ヵ月頃の乳児期にD型アタッチメントを示した子どもは、その多くが児童虐待を初めとする逆境的環境で育っていることもわかってきた。

(中略)

乳児期終盤にD型と評価された子どもが6歳になったときのSSP(註:ストレンジシチュエーション法)による観察で、母親との再会時、役割逆転を中心とする統制的パターンがしばしば優勢になっていることを見出した。メインらは、この統制的パターンが処罰的統制と配慮的統制の二種類に分けられることを示し、何れも子どものこころの健康を悪化させる可能性が高いと指摘した。

統制的パターンのうち処罰的統制とは、命令したり指図したりすることで親を支配し統制下に置こうとする姿勢が優勢になることを指している。この姿勢が目立つ子どもは頻繁にかんしゃくを起こし、さかんに命令し、親、とくに母親を暴君のように支配しようとする。

もう一方の配慮的統制とは、子どもが過度に親を気づかい、賢明に世話をしようとする姿勢が優勢になることを意味している。

前者は直接に親をいらだたせ、手を焼かせることで問題となりやすく、早くから反抗挑戦症や素行症として問題化することが多い。他方、後者は親にかしづき支えようとするため問題は見えにくく、子どもが母親の秘められた依存症の受け皿となって、共依存的な母子関係に長くとどまることになりやすい。

齊藤. 乳幼児期のアタッチメント不全と大人のメンタルヘルス. こころの科学: 216, 88-89, 2021.

 

逆境的小児期体験に関連する無秩序・無方向型(D型)と似た、対人関係の問題を呈するアタッチメントの病態水準には、レベル4の「安全基地の歪み」があります。

安全基地の歪み(レベル4)」は、物質依存や摂食障害、反社会傾向と関連するとされており、レベル3とレベル4は「人を信じられない病(信頼障害)」と考えることができそうです。

 

「過食嘔吐をともなう拒食症(神経性やせ症・過食/排出型)」では、「併存しうる精神疾患として、抑うつ障害、双極性障害、不安症(社交不安症、パニック症など)、強迫症、パーソナリティ障害、神経発達障害、アルコールその他の薬物の物質使用障害(乱用・依存)などがある」とされており、それ以外にもリストカットや万引き・窃盗などの問題が併存することがあり、「多衝動型過食症」と呼ばれることもあります。摂食障害ポータルサイト

 

養育者(親)やパートナー/配偶者との関係は、「制限型の拒食症」や「神経性やせ症・過食/排出型」では[処罰的統制(相手を従わせようとする)]になることが多く、一方、「神経性過食症」の一部や「過食性障害」では[配慮的統制(相手に合わせようとする)]を呈することが多いような印象があります。

 

レベル3の「無秩序・無方向型(D型)」や「安全基地の歪み(レベル4)」では、国際トラウマ質問票で検査をしてみると、侵入症状(フラッシュバック)や過覚醒などのPTSD症状ははっきりしない一方、「自己組織化の障害」と呼ばれる症候群を呈することが多いようです。

 

別の医療機関あるいはカウンセリングで「複雑性PTSDと言われた」とおっしゃる方は、長期反復性のトラウマ体験や逆境的小児期体験がなく、当然のことながらPTSDの診断基準を満たさず、自閉症スペクトラム障害(ASD)にともなう「自己組織化の障害」のみを満たす人がほとんどです。

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)の「感情調節不全(衝動を含む自己制御の障害)」「否定的な自己概念(認知の障害)」「対人関係の障害(関係性の障害)」が「自己組織化の障害」と重なりあうことが、自閉症スペクトラム障害(ASD)が複雑性PTSDと誤認される要因になっていると考えられます。

 

この症状群(註:自己組織化の障害)は、コントロール不能のかんしゃくや傷つきやすさといった感情制御困難、無価値感や罪悪感など否定的自己概念、そして他者と親密な関係を結べないなどの対人関係障害の三領域からなるとされている。

この自己組織化の障害は、D型アタッチメントから統制的パターンへの展開とその持続を通して結晶化していく、自己と対人関係の病理の表現型といってよいだろう。

(中略)

D型をはじめとするアタッチメント不全のもたらす結果は、一つ複雑性PTSDに限られるわけではなく、境界性パーソナリティ障害やそれに準ずる非機能的なパーソナリティの基底を構成する要因ともなっているのではないだろうか。

齊藤. 乳幼児期のアタッチメント不全と大人のメンタルヘルス. こころの科学: 216, 88-89, 2021.

 

従来診断では、自己との関係の病理(葛藤)を「神経症圏」、自己との関係・対人関係(二者関係)の病理を「パーソナリティ障害圏」、自己との関係・二者関係・集団との関係の病理を「精神病圏」と呼んでいました。

 

レベル2に相当する回避型(A型)やアンビヴァレント型(C型)の「非安全型(不安定型)」は自己との関係の病理(葛藤)を主とする「神経症圏」に相当するようです。

一方、レベル5の反応性アタッチメント障害および脱抑制型対人関係障害などの「愛着障害」は、「精神病圏」に相当します。

 

成人期の対人間暴力や嗜癖の問題がみられる事例の多くで、無秩序型のアタッチメント(レベル3)や安全基地の歪み(レベル4)など、機能不全のアタッチメントを背景に持つことが示されている。

山下. 臨床に活きるアタッチメント研究の知見. こころの科学: 216, 23-29, 2021.

 

「自己と対人関係の病理」は、「パーソナリティ障害圏」ということであり、これがレベル3の無秩序・無方向型(D型)や安全基地の歪み(レベル4)に見られるということです。

 

 

このように関係性発達の過程で見られる困難は、自分自身との関係と二者関係・集団との関係の問題が複合的に重なりあっていることから、対人関係に焦点をあてるだけでなく、自己の基底にある関係性発達の病理にも焦点を当てる治療が必要ということですよね。

 

院長

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