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変化に伴うストレスとストレス対処法(2021.04.05更新)

クリニックのある芝大門周辺では、3月末にツバメが戻ってきていました。

 

4月に入り、新しい環境に戸惑っていらっしゃる方も、早く馴染もうと悪戦苦闘されている方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

去年の今頃、新型コロナウイルス感染症の蔓延で緊急事態宣言が発出され、在宅勤務やテレワークなど、働き方も生活スタイルも大きく変化しました。

「コロナストレス」とか「コロナうつ」という新語・造語もできたりして、変化がこれほどまでに人の身心に負担をかけるものだということを実感された方も多いと思います。

 

変化だけでなく外界の様々な刺激によって、ストレス反応が引き起こされます。

ストレス反応は、気分や感情の不安定さなどの情動的反応だけでなく、睡眠・覚醒リズムの障害、思考力・判断力の低下、投げやりになったりお酒の量が増えるなど行動パターンの変化、疲労感や頭痛、肩こりなどの身体症状などに表れ、不快感を伴って自覚されることが多いものです。

 

最も大切なのはストレスに対する誤解をなくし、やみくもにストレスを排除、あるいは乗り越えようとして、かえって悪循環に陥らないようにすることである。

ストレスをワルモノとして対峙する姿勢は、対決、そして勝ち負けという理解につながり、最終的には自身を強弱という価値観で評価することになりやすい。

藤原、他『心は鍛えられるのか』遠見書房

 

ストレス反応を単にネガティブな問題として受け止めることは、生存のために本来必要で不可欠な適応過程そのものを排除することにつながってしまう(前掲書)と言われるように、ストレス反応は生体が環境の変化に適応するための努力の結果であるわけです。

 

問題(ストレッサー)に対して、ストレスコーピングが適切に機能すると、ストレス対処の好循環が生まれ、ストレス反応は徐々に軽減していく。

したがって基本的には、問題に直面しストレス状態にある人が、いかに効果的なストレスコーピングを採用し、実行することができるかが重要であるといえる。

藤原、他『心は鍛えられるのか』遠見書房

 

過重労働や長時間労働などのストレスの関与が知られている「適応障害」についてのICD-10の診断ガイドラインには、「発症は通常生活の変化やストレス性の出来事が生じて1カ月以内であり、ストレスが終結してから6カ月以上症状が持続することはない」とされています。

「適応障害」では、ストレッサーとなる状況や出来事がはっきりしているので、その原因から離れると症状は次第に改善します。つまり徐々に適応反応が起きてきます。

 

しかしながらストレスの影響が大きく、ストレスコーピングが十分に機能せずすでに悪循環に陥っている場合は、上記とは異なる対処が必要になる。

ストレス対処が悪循環に陥った場合、ストレス反応が増大し、時には精神疾患を発症する。

このような状態では、たとえ周囲の人が効果的なストレスコーピングを提供しても、かえって悪循環を強化してしまう。

藤原、他『心は鍛えられるのか』遠見書房

 

しかしながら、「適応障害」と診断されても抗うつ薬が処方されて休職を指示されることがほとんどのようです。

 

ストレス因となった環境から離れることで、ストレス反応は急速に収まります。ある患者さんは、「うつ病だから休職しなさいと言われてホッとした」とおっしゃっていました。

処方された抗うつ薬の効果ではなく、環境から離れたことが効果があったのです。その代わり、患者さんは抗うつ薬の副作用である眠気や便秘などに悩まされることになったと話されてました。

 

「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」である「適応障害」の治療は3つの柱からなっています。

 

1つは「ストレス因の除去」であり、たとえば職場であれば仕事の量を軽減する、勤務時間を短くする、場合によっては本人の適性に合った業務を考えたり、折り合いの悪い上司や同僚と別の部署にするなどの、職場環境調整がこれに当たります。

あるいは、夫婦・パートナー間のDV関係や、巻き込み型強迫に伴うカサンドラ症候群の場合には、相手から離れることがストレス因の除去に該当しますよね。

「適応障害」の引き金になった「ストレス因」を分析しないまま復職し、たんなる軽減業務の対応しか行われていない場合は、当然のことながら復職後1〜6ヵ月以内に再休職になる可能性が高いのです。そのような経験をした方も多いのではないでしょうか?

 

2つ目は「ストレス因に対しての本人の適応力を高める」ことです。

仕事の場合であれば、自分が対応すべき問題であるのかどうか、また対応可能な問題なのかどうかを判断します。対応困難と判断した場合にはじめてストレッサーとして認識され、さまざまな情動反応が生じるわけです。

また家族問題のように変化が困難で、離れることが難しい場合に必要になるのが、適応力を高めるストレスコーピング(対処法)です。

 

ストレスコーピングには、具体的に問題を解決する方策などの問題焦点型コーピングと、不安やイライラなどの感情を軽減するための情動焦点型コーピングがある。

たとえば問題解決のために情報を収集し、具体的な計画を立て実行することは問題焦点型コーピングである。また不快な感情の原因になっている問題のことを考えないようにすることは、情動焦点型コーピングであるといえる。

(中略)

そしてコーピングを実行した結果は、認知的評価に影響を及ぼす。コーピングがうまく機能すれば、問題(ストレッサー)の影響は軽く評価され、対応可能と認識されるため、情動的反応は軽減していく。逆にコーピングがうまく機能しない場合は、情動反応は増大し、さまざまなストレス反応を引き起こし精神疾患などにつながることもある。

藤原、他『心は鍛えられるのか』遠見書房

 

不安やイライラなどの感情を軽減するための情動焦点型コーピングとして、「情緒面や行動面での症状に対するアプローチ」として、抗不安薬や抗うつ薬が投与されることがあります。

しかし「適応障害」の場合の薬物療法は症状に対する対処療法に過ぎません。

薬物療法は自分自身の情動焦点型コーピング・スキルになっていないだけでなく、コーピングの必要性やコーピングを身につける機会を失ってしまいます。

つまり、当たり前のことですが、薬物療法では苦痛に対する問題を解決することはできないのです。

 

「適応障害」に対して薬物療法を行うと、「情動反応は増大し、さまざまなストレス反応を引き起こし精神疾患などにつながる」、つまり薬物療法だけでは「適応障害」の改善がうまくいかず長引いてしまうわけです。

「適応障害」の診断で休職経験のある人が、何度も休職を繰り返してしまうのは、抗うつ薬の腰折れ現象だけでなく、抗うつ薬の処方によってストレス対処法を身につける機会を奪われてしまった医原性の問題ではないかと考えることができるのです。

 

「ストレス対処においては、常に余裕をもって自らの状態を冷静に観察する努力を重ねることが重要である」(前掲書)とあります。これが「適応障害」の治療の3つ目です。

こころの健康クリニック芝大門のリワーク(職場復帰支援プログラム)や、過食症や気分変調症の対人関係療法による治療による治療では「セルフモニタリング」を重視しています。

「セルフモニタリング」によって、自分自身との関係を改善し、行動の仕方を変えていくこと、つまり「変化に伴う一時的な苦痛を苦悩に変えない」主体性が、ストレス対処においては何よりも大切だということですよね。

 

院長

お知らせ

2021年4月から毎週土曜日に診療を行うこととなりました。診療時間についても、10時~13時半、14時半~16時半と変更になります。
土曜日の初診のご案内も行ってまいりますので、お電話やメールフォームからお申込みください。

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