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主治医はどう休職を判断するか(2020.05.20更新)

緊急事態宣言の発令後、在宅での勤務を行っていらっしゃる方も多いと思います。

お聞きすると、在宅勤務の反応は4つのタイプに別れるようです。

①在宅だと集中できないので出社した方がいい人、②在宅と出社と半々の方がいい人、③圧倒的に在宅勤務が楽でいい人、④在宅でも出社しても、気分が沈むので苦しい人。皆さんは、どのタイプでしょうか?

 

たしかに、在宅では出社するときと比べてテンションが異なるので、①と②の反応はわからなくもないです。

③の人は出社しての勤務が始まると、心のバランスを崩してしまうかもしれませんね。会社が始まる前に、会社の何に反応していたのか(事例性)を振り返っておく必要があるかもしれません。
また、④の人はすぐにでも治療が必要かもしれません(疾病性)

 

職場のストレスと休職する前に考えること』で、「事例性」として環境調整を行っても改善がみられない場合には、産業医は精神科の医師に判断を委ねることになる、ということを解説しました。

 

たとえば、産業医の選任義務のない50人未満の会社で、休職を繰り返す社員がいらっしゃるとのことで、困り果てた人事担当者から「治療とともに産業医として社員への対応の仕方を考えてほしい」と相談を受けた事があります。

 

産業医と主治医は同時にはできないため、産業医として関わる中で信頼できる通院先を紹介することになります。

こころの健康クリニック芝大門のメンタルヘルス外来が、産業医の先生方からの紹介が多いのは、こういう背景があるのです。

 

以前、産業医として関わった事例にこういうケースがありました。
(個人が特定できないように、いくつかのケースを組み合わせて書いています)

他社から転職してきた社員さんが欠勤が続き、入職後半年で休職することになりました。この社員さんは前職でも1年以上休職し、そのまま辞めて転職して来られたようでした。

私が産業医として関わったのは、この社員さんの休職期限が残り3ヶ月となった時点でした。

 

私は休職中の社員さんとは、毎月産業医面談を行っています。

社員さんからいろいろとお聞きすると、前職で休職したときから同じクリニックに通院し、3年近くもの間、2種類の抗うつ薬、3種類の抗不安薬、2種類の睡眠薬が、それぞれ最大容量で処方されていました。

 

主治医は、復職したければ診断書はいつでも書くよ、とおっしゃっていたそうで、すでに復職可能の診断書が提出されていました。診断名はうつ病(!)でした。

おまけに、復職可能の根拠は本人が希望しているから、と書いてありました!。

 

5分診療である主治医よりも産業医の方が面接時間は長いため、患者さんと面談しているとだいたいの状況は掴めるのです。

でも、産業医は診断してはならないとされているため、主治医に診療情報を依頼するのです。

 

ご本人の同意を得て、主治医に治療経過や現在の状態についての情報提供を依頼しました。

ところが、翌月の産業医面談の時に、情報提供書が届いていませんでした。

社員さんにお聞きすると、主治医は、「診断書があれば復職は可能だから情報提供書は必要ない」、とおっしゃっているとのこと。これには驚きました!!。

 

産業医ではないので、この主治医の先生が労働安全衛生法をご存じないのは、致し方ないことです。

しかし、主治医が復職可能の診断書を提出しても、産業医が復職可否を判断し、最終的には会社が復職させるかどうかを決定することをご存じないとは。。。

 

休職期限のタイムリミットまで1ヶ月半しか残っていなかったため、面談の中で、こころの健康クリニック芝大門のリワークで用いている復職準備性の評価を行いました。

結果は、残念ながら、職場復帰を可とする最低条件である、定時起床、疲労回復、集中力や注意力の持続が達成できていないだけでなく、症状が残存していて、薬の副作用と考えられる昼間の眠気が強く、夜中までインターネットをしていて10時頃まで寝ていて、昼間も昼寝をするなど、生活リズムも乱れたままでした。

 

主治医宛に復職準備性の評価の結果を伝え、早急に薬物療法の見直しをお願いしましたが、以前と同様に何のリアクションもなく、結局、この社員さんは休職期限が満了し退職となってしまいました。

 

そもそも、この患者さんには休職が必要だったのでしょうか??

 

こころの健康クリニックのメンタルヘルス外来を受診した患者さんに対して、私は主治医として、薬物療法の必要性、本人の自己理解と自己受容の支援をすすめる精神療法など、適切な治療方針に沿って治療を進めながら、職場や産業医との連携を図っていますよね。

 

こころの健康クリニックのメンタルヘルス外来では、面接の中で、まず「個人的要因(ストレス対処力、遺伝要因、性、年齢)」を考慮します。

その上で、休職することでどの程度回復が望めるか休養や休息はどのくらいの期間必要なのか休職中にどのようなスキル身につけておけばスムーズな復職が可能になるのか、などを考えるのです。

 

さまざまなことを考えたうえで、働きながら治療するよりも、休職した方が速やかな回復が見込まれると判断される場合に、休職診断書をお出ししているのです。その際に、産業医の先生宛に現在の状態についての連絡状をお送りしていますよね。

この背景には、「他者の人生にかかわらざるをえない」という覚悟があるのです。

 

精神科や心療内科のメンタルクリニックでは、患者さんが希望すれば安易に「融通を利かせて」、休職診断書や復職可能の診断書を書いてくれるところもあるとお聞きしています。

 

緊急事態宣言が発令されている最中で、ほとんどの社員さんたちが在宅勤務をされているからといって、休職期限が延長されたりしませんよね。

実際、この緊急事態宣言の間に、こころの健康クリニック芝大門のリワークを卒業された方が何人もいらっしゃいます。

復職したらすぐに在宅勤務になるか、あるいは試し出勤制度を利用して出社しての勤務になるか、復職後にどのような働き方をすればこの患者さん(社員さん)の再発を防ぐことができるのか、この緊急事態宣言の間、復職間近の患者さんのことについて、頻繁に(毎週の場合もあります)産業医の先生とのやり取りを行っているのです。

 

皆さんが通院されている医療機関ではいかがですか?

主治医の先生には、産業医や保健スタッフとの連携や、復職を見越した対応を取ってもらっていますか?

 

院長

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