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甘いささやき(2020.05.22更新)

今日は私の失敗談をお話したいと思います。

摂食障害の治療中、糖質制限をしたことがありました。カロリー計算不要でお酒も飲める、運動もしなくていい、しかも医師が推奨していて身体にも良さそう。糖質さえ摂りすぎなければ、太ることを心配せずに好きなものが食べられる。

当時の私にとっては、自分の希望を全て叶えてくれる、まさに完璧な食事法に思えました。そしてすぐさま生野先生に糖質制限をやってみたい、という話をしました。今思えばすごいことだと思うのですが、先生は反対しませんでした。ただ一言、「やりたいかどうかだよね」とおっしゃいました。

 

結果はどうなったでしょうか。

「やりたい」から始めたつもりの糖質制限は、当初は順調でした。作ることも、食べることも楽しく、何より糖質を摂らないことで体に良いことをしているという安心感や満足感がありました。

しかし、それも長くは続きませんでした。初めは主食を減らす程度だった制限が、やがては調味料に含まれる糖質まで気になるようになっていきました。いつしか、「糖質を摂ってはいけない」という思考にすり替わってしまっていたのです。また、私の場合は過食嘔吐もひどくなりました。

 

結局半年ほどで糖質制限はやめたのですが、その経験からいくつか学んだことがありました。

一つ目は、摂食障害を一度でも経験したことのある人にとっての食事制限(糖質制限だけでなくその他のあらゆる食事制限)は、何のメリットもないばかりかそれはとても危険に満ちた行為だということです。私の場合も決して例外ではありませんでした。

「摂食障害から回復するための8つの秘訣」の中の秘訣5、「意識した食べ方」にはこう書かれていますよね。

摂食障害を発症しているのでしたら、栄養に関するその手の情報を隠れ蓑にはできません。それに従っているかぎり、良い食品と悪い食品のレッテルを貼ろうとする不健康な考え方からは抜け出せませんので、摂食障害から回復するまではそうした極端な食べ方は忘れたほうがよいでしょう。摂食障害行動があるかぎり、極端な食べ方も健康のためにしているのだ、という言い訳は通用しません。摂食障害がもたらす健康上の害は、火を通したものを食べたりオーガニックでなはない食品を食べたりすることの害とは比べものになりません。たとえ回復してからだいぶ時間が経っていても、意識的な食べ方の効果を弱めるそうした極端な食行動はお勧めできません。

この時の私は、まだどこかで「痩せること」や「体重をコントロールすること」にしがみついていたのだと思います。ですから自分の健康な部分に対して、”医学的に正しい”というもっともらしい理由で言い訳をし、まんまと、いえむしろ自ら病気のいいなりになってしまったのだと思います。

重要なことですので繰り返しますが、摂食障害行動があるかぎり、極端な食べ方も健康のためという言い訳は通用しません。食べ物に「良い」「悪い」という区別をつけることそのものが、摂食障害思考の延長だからです。

まだ健康な部分が十分に育っていなかった当時の私は、「糖質制限をしたい」→「糖質は摂ってはいけない」→「糖質は悪い食べ物」というように容易に病気の思考に飲み込まれていきました。そして少しでもその「悪い」食べ物を食べると激しい後悔を感じたり、それをなかったことにしたいという思いが強くなり、結果として過食嘔吐がひどくなっていったのだと思います。今は生野先生の「やりたいかどうかだよね」という言葉の重さが身に染みています。

また、糖質を制限すること自体が糖質への欲求を強めてしまうということも身をもって経験しました。おそらく皆さんの多くもそうだと思いますが、人は何かをしてはいけないと禁止されればされるほど、逆にそのことに意識が向いてしまいますよね。糖質を食べてはいけないという制限を設けると、しばらくは我慢できたとしてもどこかで食べたい欲求が爆発して、結果私の場合は過食につながってしまいました。

これはまさに、生野先生がよくお話している「シロクマ」ですよね。やったことのない方はぜひやってみていただきたいのですが、これから1分間シロクマのことを考えないようにしてください。

そう言われて頭の中ではどんなことが起きたでしょうか。これには二つの反応が想定されます。一つは、シロクマのことを考えないようにしよう考えないようにしようと思って、結局シロクマのことを考えてしまう。二つ目は、シロクマのことを考えないようするために、別のもの(例えばリンゴ)を思い浮かべようとします。リンゴでシロクマを消そうとしても、リンゴの後ろ側にはシロクマがいませんでしたか?どちらにしても結果的にはシロクマのことを考えてしまっているという話です。私の場合もまさにこれだったんですよね。

 

糖質制限をやってみたことで、私は改めて自分の病気の部分の抵抗と、健康な部分の弱さに気づかされました。病気の甘いささやきにもぶれない健康な部分を育てていくために、「8つの秘訣」では「意識した食べ方のガイドライン」を示していますよね。私自身も実際にこのガイドラインを活用しました。それぞれの項目についてここでは取り上げませんが、「意識した食べ方」についてこのように説明しています。

意識した食べ方は、何かと制限の多い食べ物の決まりや摂食障害の混乱した振る舞いなどの代わりになる力強い考え方です。意識的に食べていると、いつ、何を、どれくらい食べるかを決めやすくなり、最終的に食べ物とも身体とも健康的な関係を築くことができるようになるのです。

皆さんも、「健康のため」という理由で変えられないマイルールがあるとしたら、その背景にはどんな思考があり、それは病気の思考なのかどうかについて考えてみてくださいね。

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