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摂食障害の娘に対応する親のパターン(2020.05.07更新)

緊急事態宣言の延長で、さすがにコロナ疲れを感じていらっしゃる方も多いと思います。

日本摂食障害協会の、外出自粛に伴う症状の悪化を防ぐためのアドバイス当事者向けの緊急アンケート(5月6日17:00終了)などがNHKのニュースで取り上げられていました。

 

さて、『母親と娘の摂食障害との関係』で、「周囲の人の感情反応」が娘さんの摂食障害の維持因子になっていることを説明しました。

家族など身近な人との関係では、自分と他者の心理状態を理解するメンタライジング能力が低下するので、つい感情的に反応してしまいやすくなるのです。

ですからサポーターとしての家族の役割は、感情反応の仕方を変え、摂食障害の娘さんの変化を支えるということになります。

 

モーズレイ・モデルでは、摂食障害の娘さんを支える人々がとりがちな反応の喩えとして、動物で表現してあります。

過保護で強迫的なカンガルー、感情表現を押さえ回避的になるダチョウ、逆に感情的になりすぎるクラゲ、理屈で思い通りにしようとするサイ、など、これらの感情反応は、ご家族がもともと持っているストレスに対処するデフォルトの反応でもあるのです。

 

さて、それぞれのタイプについて1つずつ見ていきましょう。

まず、過保護で強迫的なカンガルー・タイプの説明です。

カンガルー・タイプ ———— 感情が強すぎて、支配しすぎる

カンガルー・タイプの人は、患者を守るためなら何でもするタイプであり、患者の人生のあらゆる面を引き受けようとする。

腫れものにさわるように扱い、気が動転したりストレスを感じたりしないよう、ポケットにわが子をしまいこみ、できる限り何でも要求に応じてしまう。

このタイプのケアのマイナス面は、患者が、人生のなかで出会う困難に取り組み、それを克服する方法を学べなくなり、いつまでも幼い子どもの役割に甘んじてしまうことである。

トレジャー、他『モーズレイ摂食障害支援マニュアル』金剛出版

 

拒食症から過食嘔吐にいたった患者さんの両親に、なんでも先回りしてやってあげるこのタイプのご家族をよく見かける印象があります。

過保護になってしまうと、暗に世界は脅威であるというメッセージを発してしまい、お互いに息が詰まり感情的に消耗し、ますます悪く考えてしまいますよね。

 

こころの健康クリニックで行っている対人関係療法外来も摂食障害の一般外来も、治療を受ける「本人」からの申込みを原則としていますよね。

その理由はご家族が先回りして治療を申し込まれることによって、患者さん自身の問題解決能力や、責任感、自立心が育まれる機会が損なわれないように、との治療的配慮なのです。

 

しかし中には、「まだ学生(高校生あるいは大学生)なのに、自分で申し込ませるんですか?!」と怒りを顕わにされるご家族もいらっしゃいますし、「電話を替わります」と傍にいる娘さんを強引に電話で話させるご家族もいらっしゃいます。

 

摂食障害の治療は精神療法が主体になります。本人が治療する気がなければ治療が難しいだけでなく、自分と向き合う心の準備が出来ていないと、苦痛や辛さなどの精神療法の副作用がでてしまったり、治療が続けられなくなる場合も多いのです。

 

カンガルー・タイプへのアドバイスとして、「変わることは難しい。それを試みた後には必ず、自分自身に「よくできた」と言ってあげること」が重要であるとされています。

 

次は、感情をほとんど表さず回避的なダチョウ・タイプです。

ダチョウ・タイプ ———— 感情をほとんど見せず、管理しなさすぎる

ダチョウ・タイプの人は、難しい行動に立ち向かわず、エディの行動に正面から取り組むサイのストレスに対処するのが難しいと思っている。それゆえ、問題について話したり、考えたりすることを避ける。

そうすることのマイナス面は、患者がこのような対応を、ケアしてくれないとか、愛されていないと解釈してしまう可能性があることである。そうなると自己評価をさらに下げてしまうことになる。

トレジャー、他『モーズレイ摂食障害支援マニュアル』金剛出版

 

摂食障害の娘のことを考えると混乱してしまうので、病院に何とかしてもらうのが一番だと治療者に丸投げしてしまいます。また症状が悪化すると腫れ物にさわるように一喜一憂して、摂食障害のことを一切話さないようにしたりで、ますます悪く考えてしまいます。

重要なこととして、「変わることは難しく、心地良いものではないかもしれない。必要であれば、協力的な家族や友人のサポートを得ることは、やってみる価値のあることだろう」とアドバイスされています。

たとえば、家族会に参加することはなかなかハードルが高いかもしれませんが、摂食障害のお子さんが変化するためのリスクを負わないようにするための助けになるかもしれません。

 

次は、責任感過剰で指示的すぎるサイ・タイプです。

サイ・タイプ ———— 非常に理屈っぽく、温かみが少なすぎる

ストレスや疲労、フラストレーションにあおられて、あるいは単にその人自身の気質によって、サイ・タイプのケアでは、議論と対立によって、説得し、納得させようとする。

そのマイナス面は、もし患者がそれに従ったとしても、援助なしでできるという自信は育たないということである。さらに、エディ(摂食障害のお子さん)の理屈に議論で返すことは、単に患者を頑なにさせるだけだろう。

トレジャー、他『モーズレイ摂食障害支援マニュアル』金剛出版

 

理屈でコントロールしようとして、怒鳴りつけたりすることで、摂食障害のお子さんは拒絶されたように感じ、怒りや混乱を引き起こしてしまいます。それによって、ますます悪く考えてしまい、何とかお子さんを説き伏せたいという悪循環が生じてしまいますよね。

重要なこととして、「自分自身をケアする手本を見せることは、患者が変わることを学ぶ手助けとなるだろう」とアドバイスされています。

 

最後に、感情的になりすぎるクラゲ・タイプです。

クラゲ・タイプ ———— 感情的になりすぎ、管理しなさすぎる

強烈な感情反応に巻き込まれてしまう家族もいる。

彼らは、この病気についての間違った見解や強い自己非難の感情、親としてのスキルに関する完全主義的な傾向をもっているかもしれない。

そういったことのマイナス面は、このような悲しく無分別なアプローチは、涙や怒り、不眠を生じさせ、不安が強まり、皆の気分を害してしまうということである。

トレジャー、他『モーズレイ摂食障害支援マニュアル』金剛出版

 

このタイプのご家族も、すごく多いようです。

摂食障害の娘のことを考え、自責感で涙を流したり、逆に怒鳴りつけたり、子どもの話題に触れられるのが嫌でママ友を避けたりするようになります。そうなると、摂食障害のお子さんは、自分が大切な家族を傷つけていると感じ、本当のことを話さなくなってしまいます。

 

重要なこととして、「穏やかで共感的な態度の見本を示すことは、患者が変化に向けた最初のステップとして、自分自身のセルフ・ケアについて考えることを手助けする」とアドバイスされています。

このタイプのお母さんと家族面談するときには、カンガルー、ダチョウ、サイの全ての要素について、お母さん自身を手当てしていくことが必要になるのです。

 

院長

お知らせ

こころの健康クリニック副院長の風間先生ブログ『星とたんぽぽ』が4月30日から始まりましたね。

 

風間先生がたどってこられた回復の道はどのような心の旅路だったのか、体験にもとづく珠玉の言葉がきっと、回復へ向かって進んでいく皆さんの心の支えになるはずです。

今まさに苦しんでいる人にとって、摂食障害を経験してそこから実際に回復してきた人の話は、よい刺激となってくれます。また彼らは、とても大切な点について率直に発言できるという特別な立場にいるのです。

たとえば、「ともかく食べなさい」という発言は、摂食障害に苦しんだ経験のない人から言われると威圧的で理解されていない感じがするかもしれません。

でも、『さよならエド、こんにちは私』にも書きましたが、苦しみを乗り越えてきた人の口からこの短い言葉を聞くと、前に進み続けようと思わせる力となって背中を押してくれるかもしれないのです。

(中略)

摂食障害に苦しんでいる人たちは、そうした形で回復のための言葉を実質的に丸ごとポケットに入れておくと、つらい状況になったときにいつでもすぐにアクセスできてとても役に立つと教えてくれました。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

副院長の風間先生ブログ『星とたんぽぽ』は、毎週金曜日に更新予定です。お楽しみに〜♬

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