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丸太を手放す(2020.05.15更新)

皆さんこんにちは。

今日は、摂食障害行動(症状)を手放すために何をしたらよいのかについてお話したいと思います。

これまでいろいろな患者さんから、「過食は人生最大の楽しみで、それをやめるなんて考えられない。」という言葉をお聴きました。

確かに私自身も治療を受け始めたばかりの頃、“過食を手放したら好きなものが食べられなくなるのではないか”と不安に感じたことがありました。しかし、治ったからこそ言えることは、病気の真っただ中にいるときの何倍もおいしく、楽しく、ありがたく、どんなものも、色々な人といただけるようになりました。

今は食べることの我慢や苦痛、不安なく、食べたいものをちょうどよい満腹感まで食べることができます。このような食事をいただく楽しみや幸せは、病気の時には味わったことのない感覚です。体重を測るのは健康診断のときくらいですが、だからといって体重がどんどん増えるということもありません。ありのままの自分を受け容れ、体の声を聴き、自分の心に素直に過ごせるようになると、体重や体型をコントロールしようとしなくても、ありのままのそれに安定するのだと思います。

 

では、昔の私も患者さんも、なぜ「過食をやめられない」と感じたのでしょうか。

おそらくそれは、「人生最大の楽しみ」だからではなく、「過食に代わる対処法を身につけていなかった」からではないでしょうか。

 

「摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語」では、摂食障害行動(症状)を、川で溺れそうになっている人が必死で掴まっている“丸太”に例えて説明していますよね。一度は命を救ってくれた丸太も、そのまましがみついて下流まで行きつくと、今度はその丸太が邪魔になって、行きたい場所へ行きつくことができない、という話です。

 

私自身も今振り返ると、ある時期までは拒食や過食などの摂食障害行動を使うことによって、何とか命を救われてきたと思える部分もあったと思います。しかし、長い間その方法を使って対処していった結果、「楽になりたい」で書いたように、気づいた時にはもう一歩も前に進めない状況にまで陥ってしまっていたのです。

だからといって、溺れそうな川の真ん中で、いきなり丸太を手放せと言われても、恐ろしくてできるはずがありませんよね。必要なことは、なぜ自分には丸太が必要なのか、自分の摂食障害行動(症状)の意味に気づくこと、そして丸太にしがみつく以外の方法を身につけることなんですね。

 

私は、最初のうちはなぜ自分が過食してしまうのか、あまりピンときていませんでした。というより、「思い当たることはあるけれど、こんな些細なことで過食嘔吐しているなんて言っていいのだろうか…。」と、「こんなことを言ったら先生にどう思われるか」ということが先に立ってしまい、なかなか言い出すことができませんでした。

何度目かの面接のとき、勇気を出して「実はこんなことがあって…」と切り出せたことをきっかけに、少しずつ「こんなことが症状のスイッチになっていたんだ」と自分の気持ちと症状のつながりについて理解できるようになっていきました。そして自分の症状が、傷ついたこころを慰めるためだったり、寂しさを埋めるためだったり、時には怒りをなだめるためだったりと、様々な役割を肩代わりしていたことに気づいていきました。しかしあくまで症状は誤った一時しのぎの方法で、現実は何も変わっていないんですよね。むしろ、症状を使い続けることによって自分のこころは置き去りにされてしまい、症状に逃げ込めば逃げ込むほど自分の気持ちが分からなくなっていきます。

 

自分の気持ちはよく分からないけれど“何かもやもやする”、“何か嫌な感じがする”。するとそれを自分の中に抱えておくことができなくて、例えば過食をする。けれど過食をしても状況は何一つ変わっていない。楽になるどころか、過食をしてしまった罪悪感で自分を責める。するとまたつらくなって、その苦しさをどうにかしたいために過食する。こんな風に症状の無限ループが形成されていくのです。それを止めるには、まずは「自分自身の気持ちに気づく」ことが大切だと思います。

 

振り返ってみると、私が数年間に及ぶ治療の中で絶えずやってきたこと、それはやはり「自分が今何を感じているのか」に意識を向けることだったと思います。特に、出来事が起きた直後はスルーしてしまったけれどなぜかモヤモヤが続いている。分かったつもりになっていたけれど、朝起きるとその出来事がまだ心に引っかかっている。そんな感覚が私にとっては「分かっていない」のサインで、それをキャッチしたときには必ず振り返りをしました。出来事や会話を思い出しその時の自分の気持ちを辿っていくのです。それをノートに記録し、話したいことの優先順位をつけて次の面接に臨むようにしていました。

 

摂食障害行動(症状)を“やめようやめよう、今日こそは絶対にやめなければ”と自分を追い込む前に、あなたにとってその症状はどんな意味があるのか、あなたが何を感じているのか、一度立ち止まってみませんか?

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