摂食症の鑑別診断について(Ver1.0)
「十分に食べている」のに痩せてしまう場合、まず、内科を受診して内科的疾患の検査が必要です。
痩せすぎてしまうと、普通の検査でもどんどんリスクが高くなってしまいますので早めに受診する必要があります。
一般的によく行われる診察・検査としては
◯上部消化管内視鏡(胃カメラ検査):胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、胃がんなどを除外
◯下部消化管内視鏡(大腸カメラ検査):炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などを除外
◯ CT検査:感染症、悪性腫瘍、膠原病などを除外
〇採血検査:糖尿病、甲状腺機能異常、感染症、膠原病などを除外
〇神経内科的診察:認知症、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症(ALS)などを除外
これらで異常がない場合、やはり精神疾患、特に摂食障害が疑われることになるでしょう。
以下は「何か他に病気があるのではないか」と心配している患者さん、ご家族へ伝えたい内容です。
体重減少を起こす疾患はたくさんあるのも事実ですが、問診だけで可能性が低いと診断できるものも多く、すべての検査を行わなければいけないという意味ではありません。
「精神的な原因である」とすぐに決めつけるのもよくありませんが、
「摂食障害ではないと決めつける」、「摂食障害だと信じたくない」ということもまた同じようにリスクがあることだと思います。
精神科・心療内科を避けて、内科(消化器内科、内分泌内科、脳神経内科など)をドクターショッピングして治療が遅れる方がいらっしゃいます。
そして、致命的な状態になってしまい、結果として疾患教育だけで改善するはずの方も、入院して強制栄養するしか選択肢がなくなってしまうことがあります。
それだけ摂食障害、精神疾患に偏見があるということだと思います。しかし、周囲の方が本人にそのようなメッセージを感じさせてしまうと、本人は自分の本当の気持ちや症状をどんどん言えなくなってしまいます。
ある程度の検査が終わって、精神科、心療内科の受診したらどうか、と言われた場合には、是非早めに受診をすることをお勧め致します。