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思春期・青年期の摂食障害治療のサポーターとしての家族の役割(2020.04.09更新)

新型コロナウイルス感染症の影響で、緊急事態宣言が発出され、テレワークや在宅勤務、あるいは休校となり、家族メンバーが家にずっと居ることでストレスがたまっている人も多いかも知れません。

 

家族といえど、適度な心的距離を保つことができて、役割分担が明確であれば、ストレスを感じることも少ないのかもしれませんが、状況が急に変わったときには変化に心がついていけずに、ストレスを感じやすくなってしまいます。

さらに、身近な人がかかわると、メンタライジング能力(自分と他者の行動の背景にある心理状態wp理解すること)は低下することも知られています。

 

このような時には、『相手は変えられない ならば自分が変わればいい』のスタンスを持ってもらうことが大切なのです。

 

思春期・青年期までの過食症・過食嘔吐の治療では、ご家族にサポーター役をお願いしますよね。サポーターであるご家族には、サッカーや野球のチームの応援と同じように、治療に取り組んでいる患者さんを「勝っても負けても応援する」ことををお願いしています。

 

こころの健康クリニックでお勧めしている支援は、サポーターであるご家族自身が、自分の対応の仕方、コミュニケーションのパターンに気づき、摂食障害のお子さんの「情動知能(エモーショナル・インテリジェンス)」と問題解決能力を高め感情処理のお手本になってもらうということです。

支援の仕方については『モーズレイ・モデルによる家族のための摂食障害こころのケア』をお読みくださいね。

 

家族など対人関係療法でいう「重要な他者」は、どのようにして「情動知能(エモーショナル・インテリジェンス)」のお手本になればいいのでしょうか?

 

「情動知能(エモーショナル・インテリジェンス)」のお手本になるには、3つの要素があります。

① 共鳴(ニューラル・レゾナンス:身体的共感・情動的共感)、② 相手の心を省みる(リフレクト)、③ 相手に示す(ミラーリング)、です。

 

「共鳴(ニューラル・レゾナンス)」とは、相手の表情、身振り、声の抑揚を観察することで、相手の脳に同調し、相手の思考、感情、信念についてさらによく知ることです。

これがメンタライジングの基本になります。

 

言葉は特定のジェスチャーを介して伝達可能で、言葉とジェスチャーは脳内の同じ領域、特に言語理解に関する領域を活性化します。

摂食障害のお子さんの視点に立ち、まるで自分のことのように相手の経験や感情を想像すると、(その人の脳内で)共感を制御する神経メカニズムが作動します。

これを「エモーショナル・サリエンス(情緒的顕著性)」と呼びます。

 

このことが「相手の心を省みる(リフレクト)」につながり、相手の中で何が起きているのか、その情動は何であるのかを、自らの心の中でジオラマを作り上げるのです。

そしてそのジオラマを見わたして探索する(メンタライズする)ことを、「主観的共感」とも呼びます。

 

思春期から青年期の摂食障害のお子さんをお持ちのご両親に、サポーターとして「情動知能(エモーショナル・インテリジェンス)」のお手本になってもらうために、ご家族との面接の中でこのようなことを指導しているのです。

 

ご家族の役割として、「どんな気持ちも受け止める」ことが大切だと書いてある本もあります。

「気持ちを受け止める」ということは、先に解説したように、ご家族自身と摂食障害のお子さんの「エモーショナル・インテリジェンス(情動知能)」を高めることが目的なのです。

 

もちろんご家族が、摂食障害のお子さんの発言や感情の機微を読み違えることも、当然あります。

神経回路は認識の誤りを認識する処理能力を持ち合わせていないため、実際は理解していないにもかかわらず、お子さんの言葉や考えを把握していると思い込んでしまう危険も潜んでいます。

 

思いこみを回避する最善策は、コミュニケーションを介して、相手に質問を投げかけることです。

その時に、ご両親自身の中で内省(リフレクト)して消化された情動を、お子さんに示してあげるのが「ミラーリング」のプロセスになります。

 

この時に重要なポイントが2つあります。

1つは随伴性、もう1つは標識性です。
(崔『メンタライゼーションでガイドする外傷育ちの克服』星和書店・参照)

ちょっと難しいですよね。

 

随伴性とは、摂食障害のお子さんの情動の実情に合っている、ということです。

このときに、あまりに的外れだと相手はわかってもらえた気がしません。逆に、一致しすぎると、誰の情動なのか境界線があいまいになってしまいます。

 

そして、「これはあなたの情動だよ」と、標識(マーク)を付けて示すのです。

崔先生はこのときに、感情移入をしすぎないように「遊び心」が大切であるとされています。

 

「実情によく伴って、でも完全じゃない」「マーク付きの」ミラーリングは、ご家族自身と摂食障害のお子さんのメンタライズ力を育て、思考との付き合い方と感情を抱えることで摂食障害から回復していく治療の土台になるのです。

 

院長

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