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摂食障害症状と摂食障害思考はいつ改善するのか(2020.04.06更新)

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首都圏の方は、週末の外出自粛要請で身体活動が減り、その代わりに、あれやこれやの不安が暴走している人も、いらっしゃるのではないでしょうか。

 

摂食障害から回復するための8つの秘訣』の「摂食障害から回復する10の段階」に「7. 摂食障害行動はやめられるけど、摂食障害思考が頭から離れない」「8. 行動からも思考からも解放されているときが多いが、常にというわけではない」という項目があります。

 

これら回復過程の「実行期」では、摂食障害特有の思考パターンとのつきあい方と取り組んでいく必要があります。

 

こう書くと、「えっ?!摂食障害思考がなくなってから、摂食障害行動が改善するんじゃないの?」という声が聞こえてきそうですね。

 

ジェニーさんも摂食障害思考(エド)がなかなか改善しないことにヤキモキしていたようです。

 

いつになったらエドは私を支配しようとしなくなるのでしょうか。
いつになったら私のそばからいなくなって、放っておいてくれるようになるのでしょう。

これは、私がサポートチームの専門家たちに投げかけていた質問です。

みんな、「ひょっとしたら、エドはいなくならないかもしれない」と答えました。
実際に私の目を見て、エドは私の人生を支配しようとするのを絶対にやめないかもしれない、と言うのです。 

そう言われても、納得できるはずがありませんでした。

「エドが一生つきまとい続けるのなら、私は何のために、これだけ回復への努力をしているのかしら」と私は問いかけました。
「どのみち最後にエドが勝つのなら、どうして戦わないといけないの?」と尋ねました。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

たしかにジェニーさんの苦悩は理解できますよね。みなさんはどう思いますか?

 

摂食障害思考に限らず、摂食障害から回復していく段階で症状が減っていくときには、さまざまな不安を感じやすくなるようです。

 

摂食症の人にとっては、症状を手放すことは非常に怖い。手放したときに何が起こるのかとても不安だ。

回復するということは、その不安に打ち克って、症状を一つひとつ捨て去ることを意味する。そのためには、ものすごいエネルギーが必要だ。

回復の過程で、「どうしてこんな不安な気持ちを我慢しなければいけないの?」と摂食症の人が怯むたびに、なんとか前を向き続けるよう応援していくのが、治療者の役目なのである。

野間俊一. 摂食症(ディソレクシア)という病——“うまく食べられない”生き方. こころの科学209: 15-30, 2020

 

ジェニーさんは臨床心理士のトムさんの力を借りて、摂食障害思考とのつきあい方を変えました。

 

ここ、まさにこの点において、私は間違っていたのです。

エドがしつこくまとわり続けたからといって、それがエドの勝利を保証するおのではない、と気づくのに少し時間がかかりました。

エドがどれだけ長くつきまとって私を支配しようとしたところで、エドの言葉に逆らって、言いなりにさえならなければ、私は勝つのです。

エドが絶えず批判して私を支配しようとし続けても、それでも自分を守ると決めれば、私は勝つことになるのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

摂食障害思考があっても、「触れつつ巻き込まれない」ことを身につけることによって、「7. 常に摂食障害思考がある」段階から、「8. 解放されているときが多い」に移行したのです。

 

ここで、「摂食障害思考がなくなってから、摂食障害行動が改善するのか?」の疑問にもどってみましょう。

 

ガンダーソンの『境界性パーソナリティ障害治療ハンドブック』には、こんな1節があります。

  

主観的な苦悩の改善は約1―3週間で、行動上の改善は2―6カ月で、対人関係の改善は6—12カ月で、社会的適応の改善(すなわち「きちんと生きること(getting a life)」は6―18ヵ月で生じることが予想される。

ガンダーソン『境界性パーソナリティ障害治療ハンドブック』岩崎学術出版社

 

摂食障害からの回復は、段階を上がったり下りたりの繰り返しですから、境界性パーソナリティ障害の回復過程と直接に比較するわけにはいきません。

しかし実際の治療の進み具合で考えると、苦悩の改善、行動の改善、対人関係の改善、社会的適応の改善の順で治っていくことが多いようです。つまり、生物—心理—社会モデルの段階に沿って改善していくということですね。

 

「本当は治りたい」という気持ちが高まり、対人関係療法の面接の中で治療的信頼関係が確立し、環境の変化を感じるのが1〜3週間くらいです。この時期が「自分自身との関係を改善する時期」に相当します。 

この過程で、自分自身の本当の考えと、摂食障害思考(エド)を区別することに取り組み、自己内対話も出来るようになってきます。

また『摂食障害と気分変調症のセルフモニタリング』でも触れたインナーマザーを育むことにも取り組みますから、メンタライジングが進んで自己認識が改善してきます。

 

さらに、治療当初から取り組んでいる自分自身との関係や、二者関係(対人関係)、集団との関係で引き起こされるさまざまな感情に対する認識が生まれ、問題解決技法を試してみるようになり、摂食障害症状が改善してくるのが2〜6カ月くらいなのです。

この時期は「行動の仕方を変えていく時期」と言えます。

 

つまり対人関係療法による20回の治療は、「症状を手放しても大丈夫かもしれない」と安心して感じられるようになるくらいの期間で行うということですよね。

  

本には「対人関係のストレスが軽くなり、自分のコミュニケーションにどうにか自信がついてきて、まず精神的に楽になります。その後、だんだんと食行動が正常化してきます。「症状はストレスの表れ」ですから、食行動の方がストレスよりも先によくなるということは考えられないのです(水島『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店)」と書かれています。

 

一般にストレスと認識されている「ストレス因(ストレッサー)」は 、『「物理的ストレッサー」(暑さや寒さ、騒音や混雑など)、「化学的ストレッサー」(公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など)、「心理・社会的ストレッサー」(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)があります。普段私たちが「ストレス」と言っているものの多くは、この「心理・社会的ストレッサー」のことを指していますこころの耳と説明されています。

 

人間が生きていくうえで誰しも感じる苦痛(ストレス反応)があるから、摂食障害症状が治らないとするのは、体験の回避を支える理由づけのであるばかりでなく、外的な出来事のせいで摂食障害症状が治らない、と他責的にもなってしまうのです。

 

しかし、こころの健康クリニックで行っている対人関係療法による治療では、治療初期から過食や過食嘔吐の減少が実感されます。

その後、だんだんと摂食障害思考とのつきあい方がわかってきますから、本に書いてあることと実際の治療にはギャップがあるということですよね。

 

さらに、こころの健康クリニックでは治療終結後も完全に回復したと感じられるまで、定期的に毎月フォローしています。この間、メンタライズ能力が成長し、アタッチメントの安定性を感じられるのが6〜12ヵ月くらいです。

 

そして、やせれば全て解決する考えや失敗恐怖など、慣れ親しんだ摂食障害思考が改善して、社会機能が改善してくるのが6〜18ヵ月で、人との関係が改善する時期」とみなしているんですよ。

 

院長

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