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職場のストレスと休職する前に考えること(2020.04.01更新)

新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響で、会社から在宅勤務やテレワークを指示された方もいらっしゃるかもしれませんね。

在宅勤務の方がストレスを感じなくて済むと感じる方も多いかも知れません。

一方、新型コロナウイルス感染症のが心配なあまり、逆にストレスが高まっている人もいらっしゃるかもしれません。

 

2015年12月からすべての労働者に毎年1回、ストレスチェックが義務づけられました。
皆さんの中でも、ストレスチェックを受けたことのある方もいらっしゃると思います。

 

ストレスチェックの結果には、ストレスの原因、ストレスによる心身の自覚症状、周囲のサポートなどを評価し、セルフケアに対するアドバイスが記載されています。

ストレスチェックの結果、高ストレスで医師による面談が必要と判断された社員の申し出があれば、産業医が面談を行い、本人への指導と就業上の措置の必要性の有無とその内容について、会社に意見を伝えます。

 

ストレス要因(ストレッサー)として以下の5つが該当することが多いようです。

○ 要求される仕事の量が過大であること、長時間労働

○ 業務の内容と適性が合っておらず、働きがいが感じられない

○ 裁量権やコントロール感に乏しい

○ 仕事へ費やす努力と報酬や評価が釣り合っていない

○ 上司からの支援が受けられない、合わない同僚がいるなどの人間関係

 

このような視点は「事例性」といって、職場で問題になっている具体的事実を明確にし、どのように環境を調整すれば回復が可能かを考えていくのです。

 

たとえば、遅刻や欠勤、ミスが多い、すぐカッとなってトラブルを起こす、など、業務に支障をきたす状態に対して、産業医は「個人的要因(ストレス対処力、遺伝要因、性、年齢)」「職場外の要因(プライベート、家族からの要求など)」「緩衝要因(上司や同僚、家族や友人からのサポート)」を考慮します。

 

そして、産業保健スタッフによるケアの一環として、会社に対して、業務マニュアルの整備、ルールの明文化、根拠を明確にした改善の指導をしたり、あるいは、社員さんに「セルフケア(ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解、ストレスへの気づきと対処)」を指導したりします。

加えて、「ラインによるケア(職場環境等の把握と改善、労働者からの相談対応など)」を整えていきます。(ラインによるケアについては、いつかアタッチメントの観点から説明しますね)

 

なぜならば、事業主は過度の疲労や心的負荷をかけて社員の心身の健康を損なうことがないように注意する安全配慮義務を負うからです。

 

しかし、環境調整とセルフケアの指導でも社員さんの心身の状態が改善しないときには、職場情報を提供し、医療機関の受診を勧めます。これを「疾病性」といいます。

 

たとえば、朝起きられない、仕事に行こうとすると体が動かない、仕事中にわけもなく涙がでる、などがあるから、仕事を休みたいと、産業医の先生から紹介されて、こころの健康クリニックを受診した患者さんも多くいらっしゃいます。

 

こころの健康クリニックのメンタルヘルス外来では、そのような人たちに対して、産業医面談を勧めることがあります。

産業医面談を勧めるのは、環境調整により「事例性」を解消することは可能か?を考える必要があるからなのです。

 

産業医として関わったこういうケースがありました。
(個人が特定されないように、いくつかのケースを合わせて書いています)

 

Aさん(女性)は、ストレスチェックの結果、高ストレス者と判断されたため産業医の面接指導を希望されました。

仕事の質、やりがい、上司からの評価がストレス要因(ストレッサー)になっており、上司からの十分な支援も受けられていないと自覚されているようでした。

 

話をお聞きすると、5年前に通勤時に息苦しくなり、自律神経失調症の診断で1年半休職したことがあり、エチゾラムという抗不安薬を継続して服用しているそうでした。

ところが、今でも電車にのると気分が悪くなることがあるため、薬の量を増やしてもらい、4〜5時間の時間短縮勤務とフレックス出社を認めてもらっていました。

それでも欠勤してしまうことが増え、また有給休暇も使い切ってしまい給与が下がる一方で、このままだと経済的に不安だと話されていました。

 

ストレッサーについてお聞きすると、会社では簡単な資料整理しかさせてもらえないので面白くないし、やりがいもないので、会社に来る意欲が湧かない、頑張って出勤しているのにそのことが評価されていないので悔しい、と話されました。

 

この社員さんに対して、会社としては雇用契約と就業規則を柔軟に適用し、上司もこのままの勤務状況では仕事が任せられないので簡単な業務にしていて、ちゃんとした治療を受けて定時勤務ができるようになって欲しい、と毎月の面談で話しているとのことでした。

 

このケースの「事例性」を考えた場合、社内の環境調整は十分に行われていました。

社員さん自身のセルフケアの問題と、「事業所外資源によるケア(精神科や心療内科、メンタルクリニックなど)」の問題があるようでした。

 

ご本人の同意を得て、通院されている医療機関宛に勤務状況をお知らせし、常用量依存の可能性があり、薬が増えたことで不安閾値が下がり悪循環に陥っていることを伝え、抗うつ薬等による治療をお願いしました。

しかし翌月の面談時にお聞きすると、薬は変わっていないとのことでした。

 

別の医療機関の受診を勧めましたが、結局、この社員さんは自宅近くでパート勤務をはじめるということで、会社を辞めてしまわれました。

 

ガンダーソンの『境界性パーソナリティ障害治療ハンドブック』に、『主観的な苦悩の改善は約1〜3週間で、行動上の改善は2〜6カ月、対人関係の改善は6〜12カ月で、社会的適応の改善(すなわち「きちんと生きること(getting a life)」は6〜18ヵ月で生じることが予想される』と記載してあります。

 

皆さんの診断は境界性パーソナリティ障害とは違うかもしれませんが、現在、通院されている医療機関で、苦悩の改善、行動の改善、対人関係の改善、社会的適応の改善が、通院期間と比例して、達成できているかどうかについての参考にはなるかもしれませんね。

 

院長

 

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