メニュー

虐待と愛着(アタッチメント)1〜愛着(アタッチメント)の傷つき

[2012.10.09]

杉山登志郎先生が『子ども虐待という第四の発達障害』で被虐待児の臨床像が推移することを書かれています。

考えると当然のことですが、自閉症スペクトラム障害を中心とする発達障害でも愛着障害でも、発育にともなって、達成課題は遅れるにしても、発達するということですよね。

ということで、被虐待児の発達過程は

・幼児期:反応性愛着障害(5歳以下の76%)
・学童期前後:多動性行動障害(ADHDに似る)
・思春期:PTSDの症状の出現と解離性症状の明確化
 5歳以下:25%、6〜11歳:62%、12歳以上:78%(性的虐待のうち93%が解離性障害を併発)
 思春期からの行為障害(非行):75%が12歳以上(年齢が上がるにつれて多くなる傾向)
・青年期:解離性障害   →成人期:DESNOS、解離性同一性障害
 行為障害(非行)→成人期:境界型パーソナリティ障害
 反社会性パーソナリティ障害

上記のように変遷していくとされています。

 

DESNOSとはDisorder of Extreme Stress・not otherwise specified、つまり、「極度のストレス障害・他に特定されない」という意味でヴァン・デア・コークが提唱した概念ですが、ヴァン・デア・コークは近年、「発達性トラウマ障害(Developmental trauma disorder)」という概念を提唱しています。

似たような概念にジュディス・ハーマンの「複雑性PTSD」がありますが、PTSDと虐待云々の話になると、どうしても加害者/被害者というジャッジメントが入りますので、「(極度のストレス)であると体験された障害」というアセスメントでDESNOSを使わせていただこうと思います。

また、アタッチメント関連性トラウマについてはいつかまとめて書いてみようと思っていますので、お楽しみに。

 

そもそも。
ボゥルビィらに続く愛着(アタッチメント)の研究はアタッチメントを行動制御システムの1つと捉え、アタッチメント・システムは、痛み、恐怖、親との分離、見知らぬ場面など「アタッチメントの活性化因子」により活性化するとされています。

活性化されたアタッチメント・システムは、アタッチメント対象(親などの養育者)に接近すること(たとえば、泣いて母親に駆け寄り抱きつく)と安全感・安心感を得る(母親に抱きつきホッとする)、という2つの目標に向かいます。

アタッチメント対象(親や養育者)に感受性があれば、接近してくる子どもに慰めを与えます。
(しっかりと抱きかかえ、「大丈夫よ」と声をかける)
こうして目標が達成されると、愛着システムは脱活性化され、子どもは再び、外界を探索できるようになります。

 

この時期は、分離意識が目覚め、同時に相互の関係を求めて近づく「再接近期(reapproaching subphase:ラプローチメント)」と呼ばれ、他者に対する基本的な信頼感や自己肯定感にとってすごく重要な時期なんですよ。

この「ラプローチメント(再接近期)」は、母親に対する分離不安・しがみつき・飲み込まれる不安の葛藤、共生的・依存的で万能感を伴う自己愛の傷つき、自己価値の傷つき、距離感(関係調節)が困難になる時期で、母親側の情緒的応答性にもよりますが、マーラーはこのラプローチメントの危機が「見捨てられ不安」につながるといいます。(虐待のケースは白雪姫コンプレックスにつながりますよね)

そう考えると、上記の表で青年期から成人期にかけて、行為障害がパーソナリティ障害に移行していくことも納得出来ると思います。

 

しかし一方で、男性の愛着障害は、自閉症スペクトラム障害(発達障害)に間違えられやすく、女性の自閉症スペクトラム障害は、境界性パーソナリティ障害や愛着障害に見誤られることが多い、また、男性の愛着障害と女性の自閉症スペクトラム障害は症状的に類似するということも言われており、発達の問題なのか、アタッチメントの傷つきなのか判然としないケースもかなりあるということでしょうね。

院長

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME