メニュー

うつ病・うつ状態の神経内分泌学的特徴

[2013.04.15]

ストレスに対する生体反応である『視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)系』は、うつ病の神経内分泌学的研究として半世紀前から、もっとも良く知られています。

そもそも。
副腎皮質から分泌されるホルモンは、コルチゾール、アルドステロン、アンドロゲンなどがあり、副腎髄質からは、カテコラミン(アドレナリン)が分泌されます。

とくにコルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれ、カテコラミン補助作用としての心拍出量や心収縮力の増大による血圧上昇作用、あるいは血糖上昇作用、抗炎症作用、免疫抑制作用などがあります。
通常は、ストレスをうけても恒常性が保たれますが、うつ病やうつ状態ではフィードバック機構が障害され、HPA系が異常亢進する結果、コルチゾールが増えることが知られています。

 

たとえば。
時間に追われ、多少の体調の悪さをおして仕事をして、やっと終わったとホッとした途端に風邪をひいたり、体調を崩した経験のある方も多いのではないでしょうか?

コルチゾールが増えている間は、免疫抑制作用によりウイルスが増殖しやすくなりますが、上気道炎などの多少の炎症があったとしても炎症や痛みが抑えられ、症状は出にくいのです。

しかしストレスから解放されるとコルチゾールの分泌が減り、免疫抑制作用や抗炎症作用がなくなると生体は、ウイルスを排除するための炎症を起こします。

それで「気持ちが緩むと風邪をひく」あるいは、「風邪をひくのは、気持ちがたるんでいるせい」
と誤解されるのですが、そもそも、コルチゾールの分泌が増えたこと自体、つまりストレス下で風邪を引かないこと自体がHPA系の恒常性維持が破綻している状態なのですでに異常な状況になっているわけですよね。

 

そのようなHPA系に関するエビデンスを昭和大学藤が丘病院の尾鷲先生がまとめておられました。

 

双極性うつ病では、単極性うつ病に比べHPA系の異常亢進の程度が大きかったと報告されています。
これは双極性障害ではうつ病相のエピソード数が多いからではないか、と推測されています。

またメランコリー型(古典的)うつ病や精神病性のうつ病では、HPAの異常亢進の度合いが高く、
初回うつ病エピソードより、反復性うつ病においてHPA系の異常亢進が認められますが、エピソード性が明瞭でない慢性うつ病や気分変調性障害ではHPA系の異常亢進がみとめられません。

双極性障害でもみられる非定型うつ病では、メランコリー型とは逆のストレス応答の可能性が指摘されています。

 

日常生活や仕事を著しく妨げる原因不明の倦怠感(休養を取っても改善されない)が、6カ月を超えて持続する「慢性疲労症候群」でも、コルチゾール値が低いことが多く、HPA系の機能障害が「慢性疲労症候群」の発症に関与しているのではないかと言われています。

また幼児期にトラウマを経験した者では、「慢性疲労症候群」の発症リスクが高いという結果も得られているそうです。

表には新型うつ病(現代型うつ病)はありませんが、おそらくHPA系の異常亢進はみられないと推測されます。(新型うつ病と非定型うつ病と混同しているサイトもあります)

 

しかしながら、うつ病やうつ状態の概念がすごく混乱しているので、このブログでも少しずつ解説していこうと思います。

院長

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME