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リワークプログラムでの精神心理療法の実際〜復職可能になるまで(2021.08.04更新)

独立行政法人高齢・障害・求職支援機構により各県に1カ所以上設置されている、地域障害者職業センターが実施する職リハ・リワークは、職場への適応に向けた本人と雇用主への支援であり、12~16週の職業リハビリテーションです。

 

一方、医療機関で行われる医療リワークは、復職に向けての精神疾患の「治療」プログラムであり、症状自己理解、コミュニケーション、自己洞察、集中力、モチベーション、リラクゼーション、基礎体力、感情表現、の8つが医療リワーク・プログラムが備えるべき目的として挙げられています。

 

 

医療リワークが病状を回復させるための治療であることを考えると、『精神心理療法に特化したリワークプログラム』で解説したように、治療モデルとしての「生物・心理・社会・職業モデル」と、その実践方法としての自己-関係観察」が、こころの健康クリニック芝大門で行っているリワーク・プログラムの大きな特徴であり、他のリワークでは真似できないプログラムになっているのです。

 

こころの健康クリニック芝大門のリワークで行っているプログラムの一部を説明してみますね。

 

生活記録や行動記録、睡眠覚醒リズム表の記録は、他の多くのリワークでも行われていますし、休職者の産業医面談でも使うことがありますよね。

しかし、ほとんどの場合、生活状態の確認のための記録以上の役割にはないようです。

 

こころの健康クリニック芝大門のリワークで行っている「社会リズム療法」は、光・身体活動・食事などサーカディアン・リズムと、ホメオスターシス・リズムの同調因子を、主体的・自律的に調整して安定させることを目的にしています。

また、多くのリワーク・プログラムでは、在宅勤務・テレワークに特化した指導は行われていないようです。

こころの健康クリニック芝大門では、復職直後に在宅勤務・テレワークが始まる場合も想定して、産業医の視点を活かした「社会リズム療法」を応用した取り組みを指導しています。

 

このように「社会リズム療法」は、セルフマネジメント機能を高め、同調因子の安定性をコントロールすることにより、睡眠覚醒リズム・生活リズムを安定させ、心理学的な変化を起こしやすい土台を作っていくのが目標です。

それによって、出社していたときと同じ時間帯に起きることができて、時間の余裕を持って安全な通勤ができ、仕事中の眠気がないなど、「定時起床(社会リズム)」「疲労回復(体力)」「集中力の持続(集中力)」の安定により、職場復帰後の「勤怠」「安全」「パフォーマンス」を安定させていくのです。

 

たとえば、厚生労働省の『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』での職場復帰可否の判断基準の例としてあげられている項目を見てみると、[適切な睡眠覚醒リズムが整っている][決まった勤務日・時間に就労が継続して可能である][昼間に眠気がない]、が「定時起床(勤怠)」の要素になります。

 

また、[作業による疲労が翌日までに十分回復する][通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる]、が「疲労回復(安全)」に相当します。

 

その上で、[業務に必要な作業ができる][業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している]、が「集中力の持続(パフォーマンス)」に相当します。

 

また私が産業医として参考にしている『健康管理の法律実務』では、職場復帰の許容水準の例として、以下が挙げられています。

 

1)  始業・終業時刻を守って所定労働時間働けること(通常8時間)

2) 独力で安全に通勤ができること(配偶者などによる車での送迎で代替することは可能)

3) 通常の業務遂行にあたって必要となる機器(OA機器など)を支障なく操作できること、また工場であれば、安全に機械装置を操作できること

4) 他の従業員とコミュニケーションをとって強調して仕事ができること

5) 時間外労働・休日労働ができること(月20時間程度)

6) 国内出張できること

石嵜『健康管理の法律実務』中央経済社

 

上記の1)が「定時起床(勤怠)」、2)と3)が「疲労回復(安全)」、3)〜6)が「集中力の持続(パフォーマンス)」に相当しますよね。

 

このような職場復帰に必要な回復水準を目指して、こころの健康クリニック芝大門のリワークでは、毎月、復職準備性の評価を行い、回復度合いをみているのです。

ちなみにこころの健康クリニック芝大門のリワークでは、1日8時間の勤務が週5日可能、つまりフルタイムで復帰しても問題のない健康状態となった時点で、復職可能の診断書を提出しています。

 

その土台になるのが、今回説明したセルフマネジメント機能を高める「社会リズム療法」なのです。

このセルフマネジメント機能が安定した上に、心理学的機能を高める課題が加わってきます。

摂食障害の治療でも患者さんにお伝えすることですが、身体の状態が安定していないと心の状態の安定は得られないですよね。

 

こころの健康クリニック芝大門のリワークで指導しているのは、考え・感情・情動のコントロールについての気づきを高める「セルフモニタリング」が中心になります。

 

セルフマネジメント機能を高める「社会リズム療法」も外側の行動の「セルフモニタリング」ですが、内側で起きていることの「セルフモニタリング」が心理的課題の中心になります。

 

こころの健康クリニック芝大門のリワークで指導する精神心理療法は、感情コントロールスキルや、「メタ認知療法」「認知・行動療法」など、思考と感情・情動に焦点を当てること、つまり、「考え・感情・情動のコントロールについての気づき;考え方の質を共通課題の土台にしています。

 

さらに、「行動活性化」や「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)」あるいは「マインドフルネス認知療法」などを使って、感情を抱えておくことと、感情に関わらず行動できるようになることを、「心の状態の変化についての気づき;行動変容を共通課題にしたのです。

 

「セルフモニタリング」「考え方の質」「行動変容」の3つの共通課題への取り組みの中で、他院で処方されていた抗うつ薬や抗不安薬を少しずつ減らし、ゼロの状態にしていきます。

なぜなら、抗うつ薬や抗不安薬は、認知機能やワーキングメモリの機能を低下させることが知られているため、リワーク・プログラムで行動変容を起こそうとするときに、それを阻害してしまうからなのです。

 

多くのリワークで集団療法(グループ療法)や共同作業が行われています。

精神心理療法に特化したリワークプログラム』でも説明したように、集団療法(グループ療法)や共同作業では、グループメンバーの均一性(同一疾患)が保持されているのが条件であり、メンバーの変動があると凝集性が変化してしまうというデメリットもあり、なによりも、グループおよびグループメンバー各自の成熟までに時間がかかるのが難点なのです。

 

この集団療法(グループ療法)や共同作業での欠点をおぎなうために、こころの健康クリニック芝大門のリワークでは、対人コミュニケーション機能を高める目的で、自分と他者の心の状態を理解する「メンタライジング・アプローチ」「対人関係療法」を設定しました。

 

「メンタライジング・アプローチ」「対人関係療法」を導入したことで、人間関係がきっかけとなった「心因反応」や「重度ストレス反応(重度ストレスへの反応)」に対して、「相手の言動に自分はどう対応したのか、その反応に相手はどのように反応したのか」など、対人相互作用性と対人相互反応性の「関係性」を診ていくことができるようになりました。

 

これらが、こころの健康クリニック芝大門独自の、精神心理療法に特化した「自己- 関係観察」にもとづくリワークのすすめ方なのです。

 

院長

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