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職場のストレス要因とメンタルヘルス不調

[2023.07.03]

労働安全衛生法が改定され、2015年12月より従業員50人以上の事業所では、年に1回ストレスチェックを実施することが義務化されました。

みなさんの中にも、ストレスチェックを受けた事のある人も多いと思います。

 

しかしいまだに、「査定に響くのではないか?」とか、「職場や上司に知られるのが嫌だ!」との理由で、正直に回答することを拒む方もいらっしゃるようです。

 

そもそもストレスチェック制度は、労働者自らがストレス要因とストレス反応に気づき、早めにケアをすることで、メンタルヘルス不調を未然に防止すること、さらに、集団分析結果をふまえて、会社側が職場のストレス状況を把握し、職場環境改善を行うことも努力義務とされています。

 

高ストレス者の中で、面接指導が必要であると産業医が判断し、面接指導の受診勧奨に受診の申出のあった人に対して、産業医が高ストレス者面談を行い、セルフケアやラインによるケアを推奨し、場合によっては事業所外専門家によるケア(受診勧奨)を行っているのです。

 

職場のストレス要因

ストレスチェックでは以下の9項目がストレス要因として挙げられていますよね。

 

ストレス要因

内容

心理的な仕事の負担(量)

業務時間内に仕事を処理しきれないほど仕事の量が多いことによる業務負担のこと

心理的な仕事の負担(質)

仕事で求められる注意集中の程度、知識、技術の高さなど質的な業務負担のこと

自覚的な身体的負担度

動作の必要性に対する身体的な業務負担のこと

職場での対人関係によるストレス

部署内での意見の相違や対人関係に関する負担のこと

職場環境によるストレス

騒音、照明、温度、換気などの物理的な職場環境のから受ける負担のこと

仕事のコントロール度

仕事の内容や予定や手順などを自分で決められる裁量権のこと

技能の活用度

自身が持っている技術、知識、技能、資格などが仕事に活用されている度合のこと

働きがい

働く意味が認識でき、達成感や充実感を感じていること

 

アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が1988年に提唱した「職業性ストレスモデル」では、「仕事の量」や「人間関係」、「仕事のコントロール感(裁量権)」、「能力を十分に活用できていない状況」、の他にも、「役割上の葛藤、不明確さ」、「仕事の将来的不安」、などがストレス要因としてあげられています。

 

厚生労働省から発表されている「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)」では、労働者の半数がストレスを感じており、「仕事の量」「裁量権」「仕事の質」がトップ3のストレス要因だったと報告されています。

 

現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレス(以下「ストレス」という。)となっていると感じる事柄がある労働者の割合は53.3%[令和2年調査54.2%]となっている。

ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者について、その内容(主なもの3つ以内)をみると、「仕事の量」が43.2%[同42.5%]と最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が33.7%[同35.0%]、「仕事の質」が33.6%[同30.9%]となっている。

令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)

 

「労働安全衛生調査」では、ストレスを感じる状況の4番目に「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」が25.5%[同27.0%]がランクインしていました。

 

令和2年度と比べ令和3年度はコロナ禍に伴う在宅勤務(テレワーク)が増えたことが関連しているのかもしれませんが、仕事の量と質をストレス因と感じる人が増え、逆に対人関係の問題は減ったように見えます。

 

職場のストレス要因とメンタルヘルス不調

精神科専門の産業医として、あるいはメンタルクリニックの院長として、働く人のメンタルヘルス不調をみていると、ストレス要因のトップの「仕事の量」の問題は、「過重労働(長時間労働)」として現れてきます。

 

「過重労働(長時間労働)」では、十分な睡眠時間を確保することが難しくなります。

1日24時間のうち、拘束時間(昼休み)1時間、通勤に1時間、食事・入浴・団らん・余暇などが4時間と考えると、基本的労働時間(8時間)以外の生活時間が6時間ですから、残り10時間から睡眠時間を捻出することになります。

 

45時間/月の残業では、1日2時間程度の残業で睡眠時間は8時間、60時間/月の残業では1日3時間の残業で睡眠時間は7時間、80時間/月の残業では1日4時間の残業で睡眠時間は6時間と低下してきます。

 

1ヶ月当たりの時間外労働時間が80〜100時間、すなわち1日当たりの時間外労働時間が4〜5時間を超えると、睡眠を確保できる時間が5〜6時間に減少します。

さらに睡眠時間の減少は食事時間の不規則さにもつながり、メンタルヘルス疾患だけでなく、脳血管疾患や心欠陥疾患などの「いわゆる過労死」の頻度が増加することが報告されています。

 

一方、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」の問題は、職場ではなかなか相談しにくいようです。

そのせいか、対人関係問題に伴う心的苦痛や気分の落ち込み、あるいは睡眠障害や集中困難を主訴にメンタルクリニックを受診される方が多いようです。

しかしメンタルクリニックを受診したからといって、当然のことながら職場の対人関係の問題が解決するわけではなく、逆に、状況が悪くなったケースも散見されるのです。

 

対人関係の問題で医療機関を受診する時には、いくつか注意しておくポイントがあります。いつか対人関係問題にともなうメンタルヘルス不調についても説明しますので、楽しみにしていてくださいね。

 

院長

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