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月経周期と過食の関係

[2017.07.31]

素敵な物語』の「ムーンタイム〜体の英知の再発見」で、女性としての体のリズム(月のリズム)との関係の築き方が説明されています。

素敵な物語』の「〜心の旅」も、そして「セクシュアリティ〜女性らしさを大切にする」「下降〜影と直面するということ」などは『8つの秘訣』では触れられていませんでした。

この4つの章は、摂食障害から回復するために必要な「自分との関係を改善する」ための方法であり、『8つの秘訣』の「自己内対話」「ノートに書き出す練習」「マインドフルネス」「イメージトレーニング」に取り組む際に、大切なポイントになりますよね。

 

生理が来た頃に乱れた食行動が始まるのはよくあることです。初経の頃に、太ることや体重のことで頭がいっぱいになる女の子はたくさんいます。その頃、体が変わり始め、自分ではコントロールできない、より奥深い原始的な導きに従い始めるからです。
初経の一年前頃から一気に体重が増える子がほとんどですが、このことを知らないのかもしれません。この頃の体重増加は、プロゲステロンという、生理に不可欠なホルモンを分泌するのに必要な脂肪を蓄えるために起こるのです。
しかし、少女たちがすでに無力さやコントロール力のなさを感じながら生きていれば、この体重増加を食い止めてコントロールできている気分を味わおうとして、ダイエットを始めてしまうかもしれません。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

月経の発来は何ら異常なことではなく自然なことなのですが、そのメカニズムやプロセスを受け入れることなく、プロゲステロンの作用である水分や脂肪の貯留という結果のみを見て、それを好ましくないもの、不快なことと解釈してしまうのが、摂食障害の人の特徴のようです。

 

初経を迎えること、女性になることに対して抱いている気持ちや、女性というセクシュアリティに関する問題が表面に浮かび上がってきます。
女性であることに対して最初に抱いた印象が悪かったり、自分のセクシュアリティを恐れていたりしたら、無茶食いをすることで恐怖心を押さえ込んだり、ダイエットをすることで心配事から気をそらしたりするかもしれません。
大人になるという潮の流れをどうにか止めようとするのは、自分の体との闘いや、人格上の欠点としか思えない、見たところ終わりのない体重の増減との闘い、そして「意思力」の欠如との闘いの始まりともなりかねません。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

摂食障害の要因の一つとして、成熟拒否という考えがありました。

性的な成熟というコントロールできない自然なことを受容することができないだけでなく、「やせると自信が取り戻せるかもしれない」と自分の価値観を現実に合わせて修正するプロセスがうまくいかなかった結果として、成熟拒否が起きていますよね。

ですから、摂食障害から回復するためには「自分との関係を改善する」こと、つまり自分の心と体とつながり、自分自身への信頼感を回復することが何よりも必要になりますよね。

 

乱れた食行動で苦しむ女性の多くが、生理前が一番無茶食いをしてしまう、と言います。生理前になると「悪い」食べものがどうしても食べたくなったりして、コントロールできなくなると嘆くのです。
そして、彼女たちはこんなに気分がコロコロ変わる生理なんて来なければいいのに、と嘆きます。何らかの状況から引きこもってしまったり、過度に反応してしまったりします。発作的に激怒したり、イライラして泣き出してしまったりするのです。
そして、こんなふうに感情をコントロールできないなんて、自分はどこかおかしいんだ、と思ってしまうのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

月経直前の黄体期に気分の浮き沈みや過食が起きやすいことは、皆さんも体験済みだと思います。

またトラウマを抱えた人や気分変調症の人も、月経前には摂食障害症状が出やすくなりますし、双極性障害と診断されることの多い「非定型うつ病(体重/食欲増加、過眠、鉛様の麻痺、拒絶過敏性)」も月経前に増悪することが多いですよね。

 

「感情をコントロールする(感じないようにする)」という考えも要注意ですよね。『8つの秘訣』にはこうあります。

大切なことは、気持ちをありのままに受け容れて評価しないことです。気持ちは自然に沸き上がってくるもので、怒りは怒り、悲しみは悲しみ以外の何ものでもありません。気持ちによい悪いはありませんし、正しいか誤っているということもありません。感じているものを感じているというだけです。たとえ何かの気持ちを感じてしまうことは間違っていると感じても、その気持ちはやはりそこにあるのです。誰かにののしられて心の中で怒りが生じているにもかかわらず、「怒りは悪い」から感じてはいけないと自分に言い聞かせると、健全ではない方法で気持ちに対処することになってしまいます。

(中略)

できるかぎりありのままを表現してみることが最終目標となります。湧いてくる気持ちそのものに、あなたに責任はありませんが、それに対して何をするかに対しては、あなたに責任があるのです。

コスティン他『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

 

「気持ちをありのままに受け入れて評価しない」ために、自分が今おかれている現状を正確に理解する必要があります。

月経前に自分の体の中で何が起きているのか、そしてそれにどう向き合えばいいのか、をわかっていくことが「自分との関係を改善する」ことにつながります。

 

女性たちがきちんと、自分の体は自然を基盤とした周期を反映している、と理解したらどうでしょう?
体内にある水分は、季節の移り変わりや潮の満ち干、そして月の満ち欠けと同じくらい正確なリズムに従っていることに気づくことでしょう。
体が生まれ持つ英知を大切にできるようになると、体の声を聞き、批判するのではなく尊重し、体が必要としているものや心の奥底にある感情、そして私たち個人の内的なリズムに関する情報を運んできてくれる大切な使者として体を見られるようになります。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

このような向き合い方は、ニーバーの祈りにもある「識別する知恵(分別智)」を身につけることですよね。

変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを識別する知恵を与えたまえ。

 

暑さの真っ盛りとなるこの時期、食欲が湧かないことと関連して、拒食症の人は身体の状態が悪化しやすくなりますし、過食症の人は夜だけ過食が増えてきます。

そのような時期だからこそ、自分は自分の身体とどのように向き合っているのか、自分自身を一度ふり返ってみることが摂食障害から回復する機会になりますよね。

 

7月30日の「摂食障害の疑問に答える」にも登場してくださったジェニー・シェーファーさんのインタビュー記事が「【克服者インタビュー】ジェニー・シェーファーさんにインタビュー」で読めます。

摂食障害から回復したいと思っていらっしゃる方は、ジェニーさんの体験を参考にしてみてくださいね。

 

院長

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