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摂食障害症状の根底にあるもの

[2020.06.22]

『毒親』の本の影響なのか、「親との関係がよくないから自分は愛着障害ではないか?」「愛着障害だから人間関係がうまく築けないのではないか?」とおっしゃる方が多いようです。

 

愛着(アタッチメント)とは、何らかの苦痛(不安や恐怖,悲しみや身体的苦痛など)を体験しているときに、自分よりも優れていて力のある特定の人物(愛着対象)への接近によって安心と慰めを得ようとする行動です。

 

成人期のアタッチメント・スタイルの評価では、幼年期に愛着関係がどうであったかという「事実」よりも、自分の愛着体験をどのように語るか、つまり「現在のナラティブ(語り)」が重要とされます。

幼年期に不安定な愛着を体験していたとしても、首尾一貫した形で語ることができれば現在の愛着は安定型であると判定されます。逆に、安定な愛着を体験していても、首尾一貫して語ることができなければ、不安定型の愛着と判断されるのです。

 

愛着の判断には、自分自身のことを客観的に首尾一貫して語ることができるかどうかによるため、対人関係構築困難や対人過敏などの生きづらさを抱え、自分自身を客観視することが苦手な「自閉症スペクトラム」の要素を持った人たちが、自分はもしかしたら「いわゆる愛着障害」ではないか?と思うのも無理もないことのように考えられます。

 

さて、このところ「摂食障害症状の再燃」について、再燃が起きたときこそ「いつもの基本に立ち戻ること」がとても大切だということを説明していますよね。

 

このような症状の再燃に関連する何らかのパターンが自分でわかっていれば、実際に行動に移してしまう前に、エドの侵入をよりうまく阻止することができるでしょう。

以下の質問への答えを書き出してみて、あなたの症状再燃のパターンに上手に介入するための力を身につけましょう。

○摂食障害行動へと駆り立てられるきっかけは、どのようなものですか。

○こうしたきっかけがあると、必ず摂食障害行動はぶりかえしますか。

 毎回ではないとしたら、きっかけがあっても上手に摂食障害行動を避けられたときには、何をしましたか。

○摂食障害行動はどのようにぶり返しますか。

 何らかの自分の中の考えと関連がありますか。何らかの感情に関連していますか。

 それとも、身体の中にわき起こる何らかの感覚からはじまりますか。

○1から10までの数値で評価するとしたら、症状の再燃を上手に予防するための方法を、どれほど強く身につけたいと思っていますか。

○次に再燃が起きそうになったときに真剣に試してみようと思っているのは、どんな方法ですか。

○症状の再燃が起きてしまったとき、心の中ではどのように感じていますか。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

この取り組み方は、「衝動の波に乗る」やり方と基本的には同じものですよね。

「衝動の波に乗る」では、「何を感じているのだろう」「何が起きていたのだろう」「何を避けようとしているのだろう」「本当に必要としているのは何だろう」について、自分の心の中を探るという方法を使います。(『何が過食衝動・嘔吐衝動の引き金になるのか』を参照してください)

 

または摂食障害症状の再燃が起きたときには、『8つの秘訣』の「実行期」「維持期」の質問に答えてみることも役に立ちそうです。

8つの秘訣』の著者の一人であるグエンさんはこの方法で摂食障害症状の再燃に取り組みました。

 

自分の振る舞いをよく観察しながら「回復への動機の段階」の維持期の質問に答えてみると、こうした健康的な行動の他に、実は誰にも明かさずに秘かに続けている行動があることに自分で気づくことができました。

たとえば、私の運動は何かに駆り立てられているようで強迫的でしたし、物事の決め方も完璧主義に根づいたものでした。
また、もともとあった、何事も自分の内に秘めておくという性格は、摂食障害の行動が再燃したり、ぶり返したりしたときには、それをごまかそうとする不誠実さとして機能していました。

(中略)

何かの出来事がきっかけになって、心の中に自分には価値がないという考えや気持ち、他の人から何と評価されるかについての恐れ、期待に十分応えられないのではないかとの恐れなどが浮かんできます。

そうした考えから、次にはとても強い恐怖や自信のなさ、自分自身への猜疑心などが生まれてきて、あっという間に摂食障害の考え方が舞い戻り、体重が減るのは問題だという点をわすれて逆に「体重さえ減らせれば問題は解決する」と信じ込んでしまうのです。

コスティン&グラブ『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

 

グエンさんの場合は「評価への過敏性」が摂食障害症状の再燃の引き金になっていたようです。

「評価への過敏性」によって引き起こされた恐れや不安が、どのようにして摂食障害思考に置き換えられるかについて、ジェニーさんが書いていることが参考になりそうです。

 

心の中に苦しい思いがあったとき、すぐに過食すれば何も感じなくなるのに、それをあきらめなければいけないことは、私にとってはなかなか大変なことでした。過食をすることによって、私はそれまで感じてきたストレスから解放され、現実から離れて、すべてが何も問題ないような気分になれたからです。

代償行為についても同じで、嘔吐にしても、過剰な運動のような間接的な形にしても、あきらめるにはそれなりの努力が必要でした。私にとって嘔吐は、過食を帳消しにしてくれて、体重が増えるのを防いでくれる魔法の解決策のようなものでした。嘔吐をすると、ほっとするのです。

もちろん、拒食したときの飢えから生じる気分の高揚や、一見すべてをコントロールできているように思えるニセの感覚も、失うには惜しいものでした。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

「いつ治るのだろうか?」「どうすればいいのかわからない」などの考えが出てきた時には、「熟考期」と「準備期」の質問を自分に問いかけてみることも、「いつものやり方に戻る」方法として役に立ちそうですよね。

そして、過食で麻痺させず、嘔吐でなかったことにせず、拒食の疑似高揚を使わずに、直視しなければならない現実や自分自身の心から目を逸らさないようにすること、つまり、自分の心に正直になることが何よりも大切だということですね。

 

院長

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