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摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語

[2017.01.23]

先日ある患者さんから「『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』ってどうですか?」と聞かれました。

「すごくいい本ですよ♪」と答えたもののブログであまり紹介していないことを指摘されて焦りました。

そういえば、『8つの秘訣』の解説は書いたのですが、患者さんの心の動きを詳細に解き明かしてくれる『素敵な物語』の紹介はしても説明はしていませんでしたね。

素敵な物語』の帯にもあるように

摂食障害は「一生治らない、一生抜け出せない暗闇。まさに終身刑」と信じていませんか。
摂食障害は克服できます!!

というのがこの本のテーマです。

治療者である私にとって『8つの秘訣』は、摂食障害のすべての患者さんが回復に向けて取り組む課題集で『素敵な物語』は、その都度の患者さんの心の地図ですから、患者さんにとっては自分の説明書なのかもしれません。

実際、治療に取り組まれる時に『素敵な物語』で自分自身の心の中にある考えや感じ方をふり返ってみると、まさに自分の心の中を言い表してくれているみたい、と表現される患者さんもいらっしゃるのですよ。

より多くの患者は、「何を伝えられれば最もよいのか」を知っているが、感情的な抑制のためにそれができていない。
水島広子「うつの対人関係療法の正しい理解」こころの科学177, 41-44, 2014

と考えられていますが、ほとんどの摂食障害の患者さんは、自分が何を考えてどんな気持ちになっているのかを理解するのがすごく苦手になってしまうのです。

素敵な物語』を翻訳された井口さんが自身が摂食障害を克服していくプロセスで

そのような過程を経て、私はこの本を何度も何度も、深く読み込むことになりました。
最初に読んだときは、自分の言葉で自身の苦しさや葛藤を表現することができず、ジョンストン博士の言葉を借りてニッキに伝えるということも多々ありました。
ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

と訳者後書きに書かれていることからもわかりますよね。

 

しかし、こんなふうに自分の大切な部分を否定することは、大きな痛手となります。
月日が経つにつれ、もやもやとした、何とも言えない空虚感に苛まれるようになるのです。
そして何とかそれを埋めようとします。
自分の感覚を否定し続けてきた結果、もう自分が本当は何を欲しているのかわからず、何かに飢えているこの感覚を体の空腹感だと思ってしまいます。
こうして、狂ったように食べまくるようになるか、食べても食べても満たされない食欲を恐れて、食べることそのものを止めるようになってしまうのです。
(中略)
乱れた食行動を克服する第一歩としてやらなければならないのが、自分自身を見つめ直し、正しく理解することです。
ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

「自分自身を見つめ直し、正しく理解すること」は、三田こころの健康クリニックで行っている対人関係療法でも

摂食障害の人も健康な人もライフイベントの数には違いがないものの、摂食障害の人は日常的な出来事をストレスだと感じやすいこともわかっています。
つまり、出来事に対する解釈(思考)に反応した不安やネガティブな感情などの感情に気づくことができず、心の中で抱えられないため、現実は何も変わらないのに摂食障害症状を使って解消しようとすることと、解消行動に対する自責感が食行動異常の維持因子になっているのです。

と説明して、「自分の気持ちをよくふり返る」ことの大切さについて

自分の反応や気持ちをはっきりつかみ、コントロールし、表現することを学べば、自分を落ち着かせたり、慰めたりするために、食べ物に走らないですむようになります。
ウィルフリィ『グループ対人関係療法』創元社

と「感情・考え・情動のコントロールについての気づき」の重要性を強調していますよね。

この「自分自身との関係を改善すること」が摂食障害を克服し回復していくための必要不可欠な要素であり、三田こころの健康クリニックでは「自分自身との対人関係療法」と呼んでいるんですよ。

院長

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