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摂食障害の治療〜神経性食欲不振症(拒食症)4

[2012.07.02]

三田こころの健康クリニックでの対人関係療法での摂食障害の治療を開始できる目安は、身体管理を終え、外来での精神療法が可能なレベルまで回復した方で、標準体重の-30%未満(70%標準体重以上)(15歳未満の方は、標準体重の-20%未満)に設定しています。


入院治療を含む身体治療を検討する目安
としては、

①極端なるいそう(やせのこと):以下のいずれか
・BMIが14kg/m3以下
・標準体重の65%以下(例えば160cmで36kg以下)
・身長にかかわらず体重が30kg以下
②最近の低血糖発作
③歩行障害
④重度の低血圧・徐脈
収縮期血圧が80mmHg以下、脈拍が50/分以下

となっています。

 

水島先生のクリニックでは、30kgが目安ですが、三田こころの健康クリニックでは日本摂食障害学会のガイドラインを参照し、標準体重の70%(−30%)を対人関係療法という外来での通院精神療法に取り組める目安とし、「身体管理が終わった方」という条件にしているのです。

 

摂食障害、とくに拒食症の患者さんの治療は、身体的治療を中心とした非特異的な支持的臨床管理が最優先され、精神療法は体重がある程度回復してからなのです。

 

というのも、やせや低栄養により、思考力や体力が明らかに低下しており、飢餓に伴う異常な心理や行動に振り回され、落ち着いて自分の心理的な問題を考えたり、行動を洞察したりする余裕が無くなっているからなのです。

心身の体力が不足していると、精神療法そのものがつらい作業になり、よい展開も望めず、さらにこの事が挫折体験にもつながり、さらに回復を遅らせる可能性もあるからなんですよ。

 

飢餓(低栄養状態)による認知の障害によって患者さんは疲れを感じにくく、低体重になればなるほど、過活動になります。
身体的な危機や事故を回避するためにも、体重に合わせた行動制限が必要になるのです。

 

一般に摂食障害・拒食症の重症度は、小児(15歳未満)と15歳以上ではちょっと違っていて、以下の表のように考えられています。

 

三田こころの健康クリニックでの対人関係療法を開始できる目安である標準体重の-30%(標準体重の70%)(15歳未満の方は、標準体重の-20%未満)は、これ以上体力を落とさないためのギリギリのところですよね。

 

体重と拒食症の経過の関係が鈴木眞理教授の「摂食障害」(日本医事新報社)に掲載されていました。

拒食症を発症しても、医療機関を受診せず、家族の対応や自らの気づきで回復する患者さんは多いと思われると書いてありました。

拒食症の回復期には、約50%に過食衝動が起きます。
体重は標準体重以上まで回復し、過食衝動がおさまると、標準体重の範囲に減少しますが、体重の回復よりも心理面の回復は遅れるため、やせているときには感じられなかった不安が大きくなり、引きこもりや社会活動が制限されたり、過食症に移行する場合もあります。

 

次回は、拒食症の治療で目指していくことを書いてみますね。

院長

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