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摂食障害の回復プロセス

[2017.04.03]

摂食障害からの回復に一番重要なことは、自己肯定感や自尊心を高めるのではなく、「モヤモヤ」としか感じられなかった自分の心の状態の変化に気づいていく「自分との関係を改善する」ことと、考えや感情、情動とどのように向き合っているかに気づく「行動の仕方を改善する」ことが最初の課題になります。

 

「自分との関係を改善」し「行動の仕方を改善」することで、クロニンジャーの七因子モデル(『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』P.51〜57参照)の「自己志向」を高めることと、高すぎる「協調性」を「自己志向」とバランスのとれた状態に戻していく「他人との関係を改善する」ことも課題になります。

 

摂食障害から回復するための8つの秘訣』の「摂食障害から回復する10の段階」(P.19〜20)には

7. 摂食障害行動はやめられるけど、摂食障害思考が頭から離れない
○ 食べ物と過食することが頭から離れない。
○ 頭の中でカロリー計算ばかりしていて、今でも体重を減らしたいと思っている。

8. 行動からも思考からも解放されているときが多いが、常にというわけではない
○ 普段はずっと調子が良いけれど、ストレスがかかると不健康な行動が戻ってきてしまう。
○ 調子はよかったけれど、水着を着たのがきっかけで摂食障害思考が戻ってきて、症状も少し再燃してしまった。

摂食障害行動(拒食や過食、過食嘔吐)はやめることができても摂食障害思考が残り、これが摂食障害行動の再燃につながる様子が書かれています。

 

もしかすると読者の中には、「あれっ?摂食障害行動は少しずつ正常化して、知らないうちになくなるんじゃないの?」と疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれませんね。

三田こころの健康クリニック新宿で行っている過食症・むちゃ食い症の対人関係療法による治療では、「気がつくと治っていた」や「時間がもったいない」というプロセスで回復された患者さんはいらっしゃらないので、本に書かれている治り方と実際の患者さんの治り方が違うことを前々から疑問に感じていました。

 

私の経験から、物質依存とは異なり、摂食障害は完璧に克服することができると言えます。
アルコール依存症の人は、何年も禁酒できていたとしても、アルコールを一杯飲んだだけで再発のリスクにさらされることがあります。
しかしこれは摂食障害には当てはまりません。一度きちんと克服すれば、残りの人生を食べ物や体型、そしてダイエットに関する葛藤なしで生きることができます。
身体的な空腹感がないときの食べたいという衝動が、本当の飢えに気づくためのサインなのだとわかるようになれば、真の切望を満たす方法を発見することができるのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

実際、摂食障害から回復された患者さんたちは、対人関係の期待や失望などストレスと感じていた状況や、何もすることがなく自分自身への不全感を感じるときなど、以前なら過食や過食嘔吐をしてしまいそうな状況で感情を抱えておくことができて、衝動が過ぎ去るのを見守ることができるようになっていらっしゃっいました。

さらにそれだけでなく、摂食障害特有の思考や感情と同一化することなく、自分は思考や感情そのものではない、感情は感情に過ぎない、という視点を獲得されていたのです。

 

この治り方の違いは、対人関係療法を実際の他者とのやり取りを中心に進めていくか、冒頭に書いたように自分自身との関係(「自己志向」を高める)と「体験された他者」を現実の他者に近づけていく(高すぎる「協調性」をバランスのとれた状態に戻す)を中心に治療するかの違いだろうと考えています。

三田こころの健康クリニック新宿では、まず「自分自身との関係を改善する」ところから対人関係療法による治療を行っています。

 

自分自身との関係を改善し、行動の仕方を改善することに取り組んでいくことで、『8つの秘訣』の「10の回復段階」のうち

9. 行動や思考から解放されている
○ だいたい快適に過ごしていて、好きなものを食べてもあとから罪の意識や不安を感じたりしない。
○ 摂食障害の行動をやめてからしばらく経っていて、気がついてみると食べ物に関連した思考や衝動もなくなっていた。

「摂食障害が引き起こす行動や思考から解放されている」、つまり過食や過食嘔吐が消失した状態に到達することが可能になるんですよ。

 

院長

 

4月7日(金)から、毎週金曜日に精神科全般外来での診療を開始します。

気分が沈む、意欲が湧かない、漠然とした不安を感じる、人の目が気になる、PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)でイライラする、などの症状の方や、うつ病、うつ状態、不安障害、双極性障害などの診断を受けていらっしゃる方の治療を受け付けています。

予約なしの受診もお受けしますが、待ち時間が長くなる可能性がありますので、予約された上で来院ください。

なお、摂食障害(過食症/むちゃ食い症)や愛着障害(不安定型愛着スタイル)の診療を希望される方は、精神科全般外来ではお受けできませんので、専門外来にお申し込みください。

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