メニュー

拒食を伴う摂食障害と発達障害の関係

[2015.01.26]

食事量を制限したりや過食がコントロールできないなど、食行動の異常があれば、摂食障害と診断されることが多いのですが、タイプや患者背景によって対応や治療方針が異なってきますよね。

 

たとえば、近年増えている(?)とされる「軽度の発達障害(Broad Autism Phenotype;発達凸凹)」は、幼少期にはとくに問題なく過ごしていたのに、自他の区別が出来てくる学童期中期や
自我同一性(アイデンティティ)が確立する思春期頃、あるいは、主体性が求められる大学入学後や就職後に不適応という形で顕在化し、4〜5%で食行動障害または摂食障害を呈するとされています。

逆に、摂食障害の約30%程度に発達障害が認められると報告されており、発達障害の診断閾値に満たない「軽度の発達障害(発達凸凹)」を含めるとかなりの数に上ると思われます。

とくに「神経性やせ症/拒食症」や「過食嘔吐を伴うタイプの拒食症」では、食事以外にもこだわりや常同性などの強迫性が認められることが多く、

・思いこみの強さ
・ステレオタイプな行動パターン
・対人関係の乏しさ
・柔軟性に乏しく自己中心的

など、「発達障害/自閉症スペクトラム」と類似した背景をもつことも多く、低体重が進むとこれらの問題が強まり、栄養状態の回復とともに軽減することが知られている一方で、完全主義傾向は体重回復後も修正されないことから、生物学的脆弱性に基盤を持つ生来的な素因と考えられていること、「拒食症(制限型 & むちゃ食い/排出型)」と「発達障害」や「発達凸凹」が併存することで標準的治療プログラムへの反応が乏しいこともいわれています。

 

「軽度の発達障害(Broad Autism Phenotype;発達凸凹)」を背景にした「神経性やせ症/拒食症」に類似した状態では、摂食障害の中核精神病理である「肥満恐怖」や「やせ願望」がはっきりせず、「回避・制限性食物摂取障害」や「他の特定される食行動障害または摂食障害」のうち

・非定型神経性やせ症:体重が標準範囲の拒食症
・(頻度が低い、および/または、期間が短い)神経性過食症
・(頻度が低い、および/または、期間が短い)過食性障害
排出性障害:チューイング

などと診断されるケースも多いのです。

「非定型の神経性やせ症/拒食症」の場合、DSMやICDの診断分類よりも、「グレート・オーモンド・ストリート・クライテリア(GOSC)」による『摂食障害と摂食困難のタイプ分類の暫定基準』を用いた方が患者背景および病態を反映しやすいことが言われています。

 

また、「発達障害」や「発達凸凹」は、拒食症の発症や症状に直接関連するのではなく、「思考の固さ(思考柔軟性の弱さ)」「抑うつ気分や不安」「ソーシャルスキルの欠如(アンヘドニアや低い共感性)」など摂食障害の症状の維持因子に関連するのではないかと考えられています。

「軽度の発達障害(発達凸凹)」を背景にした「拒食症」に似た病態の患者さんに対して、強迫症状やコミュニケーションの問題がクリアーできて、対人関係療法による治療を導入できる場合は、「役割の変化」という問題領域ではなく

・社会的孤立
・傷つきやすい自尊心
・受動性/自己主張のなさ
・対立の回避
・リスクの回避
・社交やパフォーマンスのポジティブな側面を楽しむことができない

という社会不安障害で用いることのある「役割不安」を適用し、他者との交流での緊張・情動状態の安定化を重視し、コミュニケーションを介しての情動調節(安心感と信頼感)を通して現実世界の問題を解決し、継続的な対人関係をこなし、常に変化する生活を切りぬけるためにスキルを身につけていく、ということを治療目標にすることが多いんですよ。

 

このような治療観点(鑑別治療学)からすると、「発達凸凹」を含む発達障害などの背景因子の把握と食行動異常のきっかけと分類診断を明確にすることが、いかに大切なことかがわかりますよね。

院長

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME