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対人関係療法の取り組み方〜自分の選択に自覚と責任を持つ

[2014.07.07]

対人関係療法のこころの姿勢〜ジャッジメントに気づき手放す』で、自己愛が未熟だったり、パーソナリティが充分成熟していないときには、「理想化された自己」はつねに「本来の自分」に対して批判を下す監視者として働くため、自己理解をどれだけ繰り返しても行動に反映されず、状況は変わらない、ということを書きました。

このような状況は、思春期に発症する気分変調性障害や過食症など自尊心が低下した場合に起きやすいのです。

 

対人関係療法での自己モニタリングと自己評価は

・何が起きたのか
・その時どう感じたのか
・本当はどうなって欲しかったのか

というプロセスをたどりますよね。

この時に必要な「こころの姿勢」がアティテューディナル・ヒーリングでいう

自分の選択に自覚と責任を持つ。
出来事をどう体験するから選択できるので、その責任は私たちのそれぞれにある。
アティテューディナル・ヒーリングは、ものごとのとらえ方や、出来事や状況に対して抱く気持ちに責任を持てるよう助けるものである。

ということですよね。

 

「責任」という言葉が出て来ましたが、日本語では「結果について責めを負うこと」というちょっと責められているようなネガティブでニュアンスがありますよね。

しかし「責任」の語源は「応答・対処することができること」という意味でなので、プロセスや結果をありのままに認め引き受けるということなのです。

自分はたしかに選べるのだけれども、自分がつらくなるような選び方しか今はできないというのも自分のプロセスなんです。ですから、それは自分の責任でしょうと言われたら、たしかにそのとおりですが、それをつらいと思う必要はない。
なぜかというと、今こんな選び方しかできていないという自分を責めてしまったら、自分に評価(ジャッジメント)を下しているということにほかならないからです。ただそれが自分のプロセスですねと思えばいいだけのことです。
水島広子・著『怖れを手放す』星和書店

 

ジャッジメントを下すことを手放すと、「なぜ」という原因追及でなく、「何をなすべきか」に変化してきます。これが現実を変化させることができる段階なのです。

ジャッジメントを手放すことによって、内なる批判者に対しても「症状は仕方ないので、それはさておき」と認めることになり過去の出来事や、環境の影響など受動的なものからの束縛から解き放たれ、周囲の状況や対人関係に積極的に関わる「能動性(主体性・自発性)」が生まれてくるのです。

 

この「能動性(主体性・自発性)」の基盤は、自覚(アウェアネス:気づき)と自尊心であり、この段階にきて、「するか/しないか」という葛藤は消滅し、その行為をただ「する」という行動への一体化が生まれてきます。

変化のエネルギーを「能動性(主体性・自発性)」に結びつけるには、「ありのままの自分をただみとめる」というジャッジメントを手放す「こころの姿勢」が重要であり、これこそが、自尊心の土台ということができますよね。

 

さらに対人関係療法の治療中は治療を最優先に考え、いろんな試行錯誤を行ってみることで少しずつ自信がついてきます。
つまり、変化の可能性ということを考えた場合、その行為をただ「する」という行動への一体化が可能になると、「上手くいかなければ別のやり方を試してみる」ことができるようになります。

 

ここで「別のやり方」を考えられるようになることが重要で、入力する情報量が多いほど、つまりいろんなことを試せば試すほど出力の質(対人関係スキル)が上がってくるのは当然ですよね。

これが

対人関係のストレスが軽くなり、自分のコミュニケーションにどうにか自信がついてきて、まず精神的に楽になります。
その後、だんだんと食行動が正常化してきます。
「症状はストレスの表れ」ですから、食行動の方がストレスよりも先によくなるということは考えられないのです。
水島広子・著『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

という「自信」につながるプロセスなのですよね。

ここまでの3回のシリーズを踏まえて、来週から「摂食障害を対人関係療法で治す」シリーズを連載します。
お楽しみに音符

院長

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