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休職とリワーク、復職をめぐるあれこれ

[2019.09.19]

主治医の先生から復職までのプロセスを説明された休職中の方は、ほとんどいらっしゃらないのではないかと思います。


主治医の先生が復職OKの診断書を提出したら復職できる、と考えていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。

 

左の図が復職までのステップです。(図はクリックすると拡大されます)

第2ステップ>主治医による職場復帰可能の判断が提出されると、<第3ステップ>として産業医が職場復帰の可否の判断を行い、産業保健スタッフや人事、所属部署の上司と相談し、職場復帰支援プランを作成します。

復職までに何度か産業医面談を行い、また通勤訓練やリハビリ出社(行っていない会社もあります)を経た上で、<第4ステップ>として最終的な職場復帰の決定を行います。

 

知り合いの産業医の先生から聞いた話ですが、精神科以外の産業医が主治医の診断書を鵜呑みし復職させたところ、立て続けに4人が1ヶ月以内に再休職を余儀なくされたそうです!。
さらに驚くべき事は、うち3人は4ヶ月程度のリワークを実施された方だった!!ということで、耳を疑いました。

 

いろいろ聞くと、その医療機関はうつ病リワーク協会のリワーク施設には登録されているものの、脳細胞のネットワークを活性化すると称してリズム運動やけん玉をやったり、協調性を高めるとの理由でボードゲームをやったりしていたそうです。

 

リワークというよりも、まるで統合失調症のデイケアの感覚ですね。これでは復職に必要なスキルを身につけることとはほど遠いなぁ・・・とため息がでました。

精神科医がしっかりとリワークの指導をしているところは少ないようで、知り合いの産業医の先生は、「先生の所みたいに、エビデンスのある心理療法の応用編を指導してくれる施設が増えたらいいのに」とおっしゃっていました。

 

また、産業医として休職中の社員さんの面接を行っていると、主治医の先生から提出された復職可能の診断書に驚くことがよくあります。

患者である社員さんが職場復帰したいとおっしゃったのでしょう。まだ症状が残存し、生活リズムも安定していなくて、復職レベルからほど遠いにもかかわらず、復職に対しての意欲があるとの理由で、主治医の先生は復職可能の診断の診断書をだされるのです。

 

こころの健康クリニックでは、休職中でリワークを利用される患者さんには必ず読んでおくようにと、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を勧めています。

その中に、職場復帰可否の基準として、左の項目が挙げられています。

 

この項目を読むと、「生活リズムの安定(定時起床)」「一晩での疲労回復(基礎体力)」「集中力の持続」など、生物学的な安定が復職にあたっての必要最低限の要件であることが理解できると思います。

生物学的な安定に加えて、「復職前と同じ事が起きたらどう対処するか」という心理学的柔軟性(新たなスキルの獲得)と、職場の「人間関係への向き合い方」の2つが、復職の際に求められる必要なスキルです。

 

こころの健康クリニックのリワークプログラムでは、『リワーク(職場復帰)プログラムと自分の考えとの向き合い方』で紹介したように、復職までに身につけておく汎用性のあるスキルとして、以下の3つを指導しています。

  • 主語に注目する方法(非暴力コミュニケーション)
  • 他者の立場で感じてみる方法(メンタライジング・スキル)
  • 考えの有効性を吟味する方法(ザ・ワーク:人生を変える4つの質問)

 

以前、こういうことがありました。

リワークのスタッフに利用者さんの復職準備性を評価してもらっていたとき、「リワークの6時間では、就業時間8時間の会社でどれだけできるかの評価はできません」と言われた事があります。

この発言にも驚きましたが、このスタッフの発言をきっかけに、「リワークプログラムの時間を長くすれば、復職率が上がり再休職率が減るのか?」を考えるようになったのです。

 

所属部署の異動と業務内容が変わったことをきっかけに不適応を起こした社員さんであれば、リワークを使わずに職場復帰が可能な場合もあるのです。

もちろん、専属産業医の先生の面接や従業員支援プログラム(EAP)のカウンセラーさんのサポートを受けた上ですが、休職中、毎週クリニックに通院していただき、30分の面談で振り返りと価値の明確化を勧め、図書館での集中力回復作業だけで復職が可能になったのです。 

 

生物学的な安定と心理学的柔軟性を復職後の社会生活で活かすためには、「自分の選択に自覚と責任を持つ」という「自分を知ること」が必要不可欠で、「自分の人生は自分が主人公」という主体性が何よりも必要になります。

いつか説明するつもりですが、振り返りノートや日記を書いて「自分のことを考える行為」は、「自分を知ること」とはまったく関係がないばかりか、「自分を知ること」に逆効果のこともあるのです。 

これらの理由から、こころの健康クリニックのリワークプログラムでは、うつ病・うつ状態のリワークに限定せず、「疾患別等専門プログラム」を組み込んで、あえて短時間のプログラムを組んでいるのですよ。

院長

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