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「リワーク終了証明」って?!

[2021.06.30]

リワーク(復職支援プログラム)は、診断と治療を中心とする「医療リワーク」から始まりました。

しかし、リワークは独占名称ではないため、医療リワーク以外にもさまざまなリワークが乱立していますよね。

 

有名なところでは、産業保健支援センターや障害者職業センターなどが中心になって支援プランに基づく支援を行う「職リハ・リワーク」があります。あるいは、就労移行支援事業所(福祉系)もリワークという名称を使っています。

 

産業医として休職した社員さんの面接をしているときに聴いた話では、社員さんが通院中のある医療機関では、1ヵ月14万で3ヵ月のリワークを勧められたそうです!

リワークの内容は臨床心理士のカウンセリングだけで、それをリワークと呼ぶのか…?!と驚いたことがあります。

ちなみにこの医療機関は、うつ病リワーク協会会員のリワーク施設として登録されていませんでした。

 

2021年のうつ病リワーク協会の年次大会で、以下のようなことが述べられていました。

 

「精神科医の復職の判断ほどあてにならないものはない」と、かつては企業側からみた精神医療の評価は非常に低かった。

ワーク開設当初は、主治医の勧めで利用する者がほとんどであった。現在は、その多くは自らリワークを希望するのではなく、企業側から命ぜられてリワークを利用している。

企業が重んじるのは信頼と実績であり、リワークの質を落としてはいけない。一方、質の劣る一部のリワークが企業側からのリワークへの失望を招いた。

 

「質の劣る一部のリワーク」は、上記のようなカウンセリングをリワークと称している施設の他にも、信じられないことですが、本人が復職したいと言えば「復職可能」の診断書を書いてしまうリワーク担当医もいらっしゃることを指されているようです。

 

多くのリワーク施設では、初回休職者は3ヵ月〜4ヵ月程度、2回目以降の休職者に対しては6ヵ月程度と、リワーク期間を定めてられています。

たしかに、リワークは治療そのものですから、思春期青年期をやり直し、心理的成長をサポートしていく、長期にわたる集団精神療法であると考えると、3ヵ月以上のリワーク期間が必要になることも容易にうなづけます。

 

よく寄せられる質問の1つに「リワーク終了証明書を発行してもらえますか?」というものがあります。

産業保健支援センターや障害者職業センター、あるいは就労移行支援事業所では「リワーク終了証明書」なるものを発行しているということもあるのでしょうが、治療である医療リワークはプログラムを受ければ復職できるというものではないのです。

 

これは期間を定めた医療リワークの問題点であると考えられます。

利用者もスタッフもいつの間にかプログラムを行うことに終始し、職リハ・リワークと同じように支援プランに基づく支援となってしまいます。

そうなると、人によって異なる休職にいたった課題への取り組みや、「職場復帰準備性」の回復への視点が忘れ去られてしまい、「質の劣る一部のリワーク」となる要因にもなっているようです。

 

一方、こころの健康クリニック芝大門で行っているリワークは、期間を限定していませんし、リワークの時間も半日としています。

 

午前午後をまたいで行われる長時間のリワーク(リワーク・デイケア)と、こころの健康クリニック芝大門で行っている半日のリワーク(リワーク・ショートケア)の違いは何でしょうか。

 

リワーク・デイケアが居場所感と治療グループメンバーとの関わりの中での成長を重視するのに対し、こころの健康クリニック芝大門で行っているリワーク・ショートケアでは、病状の理解と改善などの心理教育と主体性の回復(セルフコントロール)に焦点を当てるという違いがあります。

 

また、リワークを利用される方は、職業も職種もさまざまですから、パソコン入力や資料作りなどの画一的なオフィスワークを行うことは、全員に必要なスキルであるとは考えられません。

むしろ、リワーク以外の半日を使って、各自が主体的に自らの職務に必要なスキルを高めるほうが、集中力や業務への関心など、復職準備として必要不可欠な業務遂行能力や作業能力を高めやすいからなのです。

 

また、こころの健康クリニック芝大門では、「初回休職者は3ヵ月〜4ヵ月程度、2回目以降の休職者に対しては6ヵ月程度」とあらかじめ決められたリワークと異なり、リワークの期間を限定していません。

その理由は「職場復帰準備性」の回復が人によって異なるからなのです。

「職場復帰準備性」の違いは、たとえば、初めて休職した人がリワーク期間4ヵ月で復職、2回目の休職の人がリワーク期間1ヵ月で復職できたということもありました。

 

こころの健康クリニック芝大門ではリワーク導入してすぐ「職場復帰準備性」を評価し、その結果から個別にリワークでの治療期間の予想を立て、何ヶ月で復職可能になりそうかを休職者と話し合っています。

 

そして毎月「職場復帰準備性」を評価し、その結果を本人に説明してリワークで取り組む課題を明確にすると同時に、職場の産業医にも情報提供を行って回復状況を伝えています。

職場との密な連携によって、休職期間の短縮と職場復帰後の再休職率が減少することが知られています。

 

このような理由から、こころの健康クリニック芝大門のリワークでは、リワーク期間を定めていないのです。

 

また、こころの健康クリニック芝大門で行っているような半日のリワーク・ショートケア1〜4ヵ月の短期集中型プログラムでも、3〜6ヵ月の長時間のリワーク・デイケアに匹敵するだけの復職率と再休職防止を実現できているのです。

 

何ヶ月リワークに通えば復職できますか?」というよく寄せられる質問には、「それは人それぞれです。あなたの場合は、どのくらいの期間で復職準備性を高められそうですか?」としかお答えできないのです。

 

院長

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