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『反応性愛着障害と脱抑制型対人交流障害』の最新情報

[2014.08.11]

DSM-5では、『反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害』と『脱抑制型対人交流障害/反応性愛着障害・脱抑制型』はともに「心的外傷およびストレス因関連症候群」に分類されました。

「反応性アタッチメント障害」と「脱抑制型対人交流障害」は、「社会的ネグレクト(乳幼児期の適切な養育の欠如)」が診断の必須要件になっています。
(2歳以降にネグレクトを受けた子どもは診断されない)

しかしながら、院長の個人的ブログ『如実知自心』では、相変わらず「反応性愛着障害」の検索数が多いので、DSM-5でアタッチメント障害がどう扱われているか、わかりやすく書いてみますね。

 

「反応性アタッチメント障害」は、乳児(9ヶ月)または小児期早期(6〜7歳まで)の診断で、臨床場面ではまれにしか診断されないとされ、また重度のネグレクトを受けた子どものうち、10%未満にしか生じないとされています。

一方、「脱抑制型対人交流障害」は、重度のネグレクトを受け養護施設で育った子どもでさえ、20%にしかみられないなど、まれな状態なのです。

 

基本的な特徴は、「子どもと養育者の間のアタッチメントの欠如」、もしくは「いちじるしく未発達なアタッチメント」と特徴づけられ、つまり、子ども側の要因が強調された印象です。

「反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害」は、発達の遅れ、特に認知および言語の遅れや常同症なども併発するとされています。
そのため、症状からだけでは、「自閉症スペクトラム症(発達障害)」や「知的能力障害(知的発達症)」と区別がつかないといわれています。

また「脱抑制型対人交流障害」は、「注意欠如・多動症(ADHD)」との鑑別を要し、「脱抑制型対人交流障害」は多動を示さないとされますが、不注意と衝動はありますので、思春期以降は、表面的な情動表出や馴れ馴れしさと見境のない行動などで仲間同士での諍いも多いとされ、「不注意優勢型のADHD」とは鑑別がつかないのではないかと考えられます。

このように『反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害』と『脱抑制型対人交流障害/反応性愛着障害・脱抑制型』は、それぞれ「自閉症スペクトラム症(発達障害)」や「注意欠如・多動症(ADHD)」との鑑別が必要なのです。

 

近年の行動遺伝学の見解では、子どものうちは親の育て方の影響(家庭環境要因)を大きく受けますが、思春期以降は、生まれつきの気質(もともとの状態:遺伝的要因)の影響によって行動パターンが決定されるということがわかっています。
そのため「反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害」も「脱抑制型対人交流障害」も、成長段階で病態が変化します。

ところが、「愛着障害かもしれない」と思っていらっしゃる方のほとんどが、幼稚園児の頃からひとり遊びを好み、小学生の頃は集団になじめず、早ければ小学校高学年から不登校などの不適応を起こしやすく、思春期・青年期には慢性的な抑うつ状態や不安が目立つようになり、成人期まで対人交流の乏しさと社会への不適応が続くなど、状態が変化しないのです。そのため『気分変調症』かもしれないと感じられている方もいらっしゃいます。

このような行動遺伝学の見地と有病率から考えると「(反応性)愛着障害」ではないかと感じられている方のほとんどは、「自閉症スペクトラム症(発達障害)」や「注意欠如・多動症(ADHD)」の可能性が高い、ということになりますよね。

院長

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