うつ病/気分障害と摂食障害
うつ病とは?
うつ病は、脳の機能のバランスが乱れ、「病的な心エネルギーの低下」が生じてしまう病気です。
気分の落ち込み(抑うつ気分)や意欲の低下、疲れやすいなどの症状が認められ、思考力や集中力が低下して決断ができなくなり、過度に悲観的に考えてしまったりします。
絶望感から「生きていても仕方ない」「死にたい」という感情が強まってしまうこともあり、自殺を選択してしまう方もいらっしゃいます。
気分障害よりも先に、食欲不振や不眠などの身体症状が現れる場合があります。
うつ病と摂食障害
摂食障害においては抑うつ症状をしばしば生じることや、うつ病などの気分障害(双極性障害を含む)の併存が高率であることが知られています。
大きく分けると3つの組み合わせになるのではないかと考えています。
「摂食障害が原因のうつ状態」:体重や体型のこと、もしくは過食をしてしまったことで自分を責めて気分が落ち込む。もしくは、低栄養状態のせいで脳に栄養が足りず、うつ状態になる。
「うつ病が原因となっている摂食障害」:そもそものうつ病による食欲低下、過食傾向が引き金となり、そこに体重・体型へのこだわりが重なってしまう。
「うつ病と摂食障害の両方に共通する原因がある場合」:例えば心的外傷後ストレス障害(PTSD)が気分の落ち込みと摂食障害の両方の原因となってしまう。
過食や嘔吐に疲れてしまったり、体重・体型で一喜一憂するなど摂食障害の症状が原因となって気分がネガティブになってしまう場合は、過食や嘔吐が減ることで結果的に抑うつが改善します。
また、先に抗うつ薬などでうつ病の治療をすることで食欲も安定して摂食障害が良くなる可能性もあります。
うつ病、もしくはPTSDなどの他の疾患が原因である場合に、無理に過食嘔吐などをゼロにしようとすると、「辛い気分を調節してくれているもの」がなくなってしまい、気分の問題も摂食の問題もいずれも悪くなることが多いのです。
そのような病態が想定される場合には、まず気分を安定させてから、過食や嘔吐などの症状にアプローチすることが必要です。
当院摂食障害外来では、定期的に気分が落ち込んでいないか、うつ状態のチェックを行っていくことにしています。
摂食障害が他の疾患の結果なのか、原因なのか。ニワトリと卵の関係にも似ていますし、悪循環とも言えます。
患者さんごとに、どのような形で病気が進んでいるのかを見極めることは大事なのですが、難しいこともしばしばです。
確実に言えることは、低体重・低栄養の状態が長く続くと、脳の栄養が足りず、気分が落ちてうつ状態になるということです。
したがって、著明な低体重の方(特にBMI13未満)はできるだけ早く専門的な医療機関の栄養療法を受ける必要があります。
「体重を増やす前に心を癒して欲しい」というご希望を頂くのですが、残念ながら心を癒すために脳が栄養を必要としているのです
(そこがこの疾患の治療の一番難しいところだと感じています)。
また、過食嘔吐で吸収のバランスが悪い方は、鉄分・亜鉛などを測定すると低く、補充することで少し体調や気分が改善することもあります。
治療
うつ病の治療としては、「薬物療法」をまず考えていくべきです。とくにストレス原因がはっきりしないうつ状態(内因性のうつ病や双極性障害)は脳の機能のバランスの乱れが原因ですから、お薬による治療が望まれます。
その治療を行なった上で、摂食障害に対する精神療法(ガイデットセルフヘルプ、認知行動療法)を行うことが良いと考えられます。
逆に摂食障害がうつ状態の原因となっている場合には、規則正しく栄養をとることによって空腹による気分の変動が改善したり、体重・体型へのこだわりを減らすことによって自分への否定的な気持ちが改善し、結果としてうつ状態の改善が望まれます。
今はまだ過食嘔吐を本格的に治療する気持ちにはなれないけど、つらい気持ちをまずみてもらいたい、という方もいらっしゃると思います。
一人一人のペースを大事にしながら診察させていただきますので、是非ご相談ください。