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過食症症状のぶり返し

[2019.05.07]
インターネットで目にするのは過食や過食嘔吐真っ只中の人たちが書いたブログが多いので、「どうすれば過食や過食嘔吐から回復できるのか、回復していくときにはどんなプロセスをたどるのか、などの情報が少ないよねぇ」と摂食障害の治療を専門にしている心療内科の先生とお話ししたことがあるのです。   そういう背景もあって、『過食症から回復するプロセス』で、三田こころの健康クリニックで対人関係療法にとり組み、過食症から回復された人たちのブログを紹介したんですよ。 ある患者さんも、ネットで目にするいろんな情報から「自分は病気とまでは言えないんじゃないか」「そんなにひどくないので、いつか治るんじゃないか」と考えていたと書いていらっしゃいます。(『【治療記録2】過食症と診断された!』『成人してから過食嘔吐を発症すること』参照)   『過食や過食嘔吐から回復するプロセス』では、過食がひどくなる「落とし穴(卒業試験)」についても解説しましたよね。 リンジーさんも、過食が起きたとき、過食がひどくなったときの自分の心との向き合い方について書いていらっしゃいます。  
回復の最初の数カ月間、私は何度も過食をしましたが、このような失敗は徐々に回数が減り、とうとう1年後には、2,3ヵ月に1度まで減りました。 ときどき過食をしてしまうと、リーと私は長時間話をし、またいつ話をするのかの予定も立てました。 私はこのような失敗を学習の道のりであると考えるようにしました。 次第に、一度の過食で振り出しに戻ることなどないということがわかりました。 それは失敗ではなくて、ぶり返しの理由と、次回は何をすればよいのかを考えさせてくれる危険信号だったのです。 このようにありのままの事実を受け容れることは、確固たる真剣な取り組みとあいまって、まさに私が必要としていたアプローチでした。 ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店
  今の状態を変えたいと認識しており、実際に行動して、計画を立て、異なるやり方を試している「実行期」のリンジーさんは、過食(過食嘔吐)のぶり返しを失敗ではなく「学習の道のり」ととらえました。 三田こころの健康クリニックでも、過食がひどくなったとき、良くなってきた過食嘔吐がぶり返したときには、とり組むべき課題を教えてくれているんですよ、と説明しますよね。 ですから、ぶり返し(症状の再燃)は「次は何をすればよいのかを考えさせてくれる」卒業試験でもあるのです。(Tamikoさんの「回復とは過食嘔吐を手放すことではない」を参照してみてくださいね)  
過食症は私の友人であり、ストレスから守ってくれるクッション、安全装置であり、他のやり方がわからなかったときの表現方法だったのです。 圧倒的な感情に麻酔をかける一つの方法であり、家族の中での自分の立場を主張する手段であり、実生活に関わりたくないときの隠れ家でした。 とはいえ、依存としての過食症はそれ以外の行動を許さず私を完全に消耗させました。 そして、私は自分を取り戻すために懸命に闘いました! ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店
  安全装置としての「過食(過食嘔吐)」は、感情を調節するための愛着(アタッチメント)関係の結果であると同時に、感情調節困難に対する唯一の解決策でもあるのです。 そのため、「過食(過食嘔吐)」は行動嗜癖(アディクション)としての一面をもち、習慣(クセ)になっていくのです。   『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』の「第3章 始まり」には、「過食(過食嘔吐)」を沈みそうになったときにしがみついている「丸太」にたとえてありますよね。(「過食嘔吐を手放すのが怖かった」を参照してみてくださいね) リンジーさんが必死にとり組んだ「自分を取り戻す」プロセスについて、『素敵な物語』では、いくつものステップに分けて説明してあります。 そして、そのゴールは「充実した人生を送ること」という、過食症の対人関係療法でとり組む「ライフ・ゴール(人生の目的)」なのです。  
克服は、乱れた食行動が生き抜くために必死だった時には役立っていたんだと理解することから始まります。 それから、単に生き抜くだけでなく、やりたいことをして人生を楽しむことを可能にしてくれる、新たなスキルを学ぶのです。 もう、一日一日を必死に生き抜くことだけが唯一の目標ではありません。 新しい目標は充実した人生を送ることなのです。 克服は、(自分はおかしいんだという)自己批判をやめること、必要なライフスキルを学ぶこと、次のステップに進む準備ができているよと教えてくれる自らの内なる声を信用すること、というプロセスを、ゆっくりと一歩一歩進んでいくことなのです。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  自分に対する「良い/悪いという評価(全か無か思考)」を手放し、摂食障害がそそのかす自分への虐待をやめて、自分自身との関係を改善することから回復のプロセスが始まります。 その途中で、食べ物、あるいは食べる行動との原初的で破壊的な関係性を解消していく必要があります。 過食や過食嘔吐がぶり返したときには、「自らの内なる声を信用」して、次のステップに進んでいくのです。   「あれっ?対人関係療法って自分との関係をあつかうの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。  
すべての対人関係における相互作用は次のような2つのレベルで同時に起こっている、と考えることは治療上有用である。 一つは観察可能な、外界において2人の間に生じている相互作用であり、もう一つは一人ひとりの内的作業モデルの内部で生じており、自己表象と対象表象との間で交わされる内的な相互作用である。 外的と内的双方のレベルの中で起きている相互作用は、レベル同士でも影響を与え合う。 そしてある人の外的な行動が、他者との相互作用によって変容される時には、それに対応して内的な自己表象と他者表象にも適応的な変化が起きている。 強制的手段で一時的に従わせるのではなく、継続的な外的行動変容を起こさせるためには、まずは内的な構造変化を生み出さなければならない、という原理のうえに、愛着志向療法は基づいているのである。 フローレス『愛着障害としてのアディクション』日本評論社
  「内的作業モデル」とはボウルビィが提唱した概念で、養育者との愛着関係から生みだされる自己や他者に対するイメージ(表象)のことです。ある意味「内的作業モデル」は、対人関係パターンの再演を生み出す原動力のようなものですね。   ストレス反応という心的イベントによって引き起こされた自己構造の不安定化は不安を引き起します。この不安は愛着システム(内的作業モデル)を活性化すると同時に、メンタライジング(自分や他者の心の状態に想いを馳せること、自分や他者の言動を心の状態と関連づけて考えること)を低下させます。 メンタライジングが低下すると、耐えられないと感じられた心的体験は激烈に感じられ、「あぁじゃないか?、こぅじゃないか?」とあれこれ過剰に思い悩んだり、対人関係パターンの再演を生み出してしまいます。 そして感情的な危機状態を解消し不安定化した自己構造を再構築しようと、過食または過食嘔吐という外的な解決手段へ向かってしまうのです。   愛着システムが活性化され対人希求行動が増えるときに、「強制的手段で一時的に相手を従わせる」対人関係パターンの再演から抜け出すには、まず治療関係を安全基地(セキュア・ベース)として出来事をメンタライズするプロセスをたどることができる心の状態をつくること、つまり「自分自身との関係」という構造変化を生み出すことが必要不可欠なのですよ。   このことを三田こころの健康クリニックでは、『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』を使って、「インナーマザーを育てる」と表現しているんですよ。(『インナーチャイルドとインナーマザーの和解と統合』『インナーマザーと愛着(アタッチメント)の対人関係療法』『アタッチメント(愛着)の泉の封印を解く』やTamikoさんの「自分が自分の母親になる」を参照してみてくださいね)   院長
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