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過食症状の「衝動の波に乗る」

[2016.02.22]

8つの秘訣』では「なぜ過食してしまうのか」で

1. 食品を一切摂らない、または制限することから起きる過食
2. 感情や、強い感覚から引き起こされる過食
3. 心の通わない、無意識的な、回避のための、習慣化した過食

の3つがリストアップされています。

1.は飢餓過食、2.は気持ちを麻痺させるストレス過食、
3.は感情不耐による過食(むちゃ食い)やダラダラ食いと
三田こころの健康クリニックでは呼んでいますよね。

ちなみに、ダラダラ食いは厳密には過食(むちゃ食い)の定義に合致しないので
摂食障害とは呼ばず、食行動障害に分類します。

これらの過食衝動に対して『8つの秘訣』では

過食したい衝動に抵抗するために、4つ目の秘訣で紹介した困難な思考と気持ちに対処するための練習と、これから7つ目の秘訣で紹介する周囲に助けを求める方法を試してみるとよいでしょう。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

を勧めています。

「過食したい衝動に抵抗する」を「過食をガマンする」と読むと
対人関係療法と矛盾してしまうことが書いてある!と
混乱してしまうことになってしまいそうです。

過食嘔吐を無理やり抑えつけると、かろうじて保っているバランスが崩れてしまいます。
むりやりガマンすればそれ自体が大きなストレスになりますし、ガマンできずに過食すれば自分を責めてしまいます。
結局、ストレスはさらに高まり、過食に走る気持ちがますます強くなるのです。
このような悪循環は、患者さんが本来抱えているものであり、注意が過食に向けば向くほど、自分のストレスは何か、どうすればそれを解決できるのか、という本質的な問題から目を背ける結果になってしまうのです。
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

8つの秘訣』が勧めているのは
「過食そのもの」に注意を向けるのではなく
「過食する前に、どんな感覚があるのかを探ってみる」
ということで「内面に向かう」ことなのです。

このちがいは、『クセになった過食や過食嘔吐とどう取り組むか
でちょっとだけ触れていますよね。

次に過食したい衝動に駆られたら、「衝動の波に乗った」ままで5分から10分ほど内面を探り、気がついたことを書き出してみましょう。
衝動の波に乗りながら、次のように自分に問いかけてみてください。
「私は何を感じているだろう」、「衝動を感じる直前には、なにが起きていただろう」、「何を避けようとしているのだろう」。
(中略)
また、「私が本当に必要としているのは何だろう」と問いかけてもよいでしょう。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

この取り組み方は過食衝動を抑えることではなく
過食衝動の裏にある本当の問題を明らかにする取り組みですよね。
三田こころの健康クリニックでは対人関係療法がある程度すすんで
「過食がゼロになることを目指す」患者さんには指導していますから、
「あぁ、あれね!」と過食衝動に向き合うことができるようになってきますよね。

8つの秘訣』では嘔吐、下剤や利尿剤、浣腸の乱用は
身体に害を与える行動として
断固としてやめることを決意することを勧めます。

まず、過食から一連の行動をやめようとすると、過食してしまったときに、「過食したのだから嘔吐しなければならない」という言い訳ができてしまいます。
もちろん過食をしなくてすめばよいのですが、仮にしてしまっても、「だからといって嘔吐しないようにしましょう」とクライエントさんたちには伝えています。
こうした理由からも、まずやめるべき行動は、嘔吐ということになります。
どんな理由であろうと、嘔吐することをやめる努力をしてみましょう。
(中略)
また、吐く行動が必ずしも過食の結果として起きるとは限らない点も挙げられます。
普通の量の食事をしても、またはデザートのように「禁止された」食品を食べても、吐く人がいます。なかには、「気持ちを消し去るために」吐く人もいます。
こうした理由のすべてから、私たちの治療では、クライエントさんたちにはまず吐く回数を減らす、またはやめる取り組みから始めるようにと伝える場合が多いのです。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

過食を伴わない嘔吐だけ、あるいは嘔吐目的で大食をするのは
「排出性障害(チューイングも含む)」と診断されます。
「排出性障害」は「神経性過食症」と誤診されている場合が非常に多く
病態に見合わない治療を行われていることがほとんどなのです。

「排出性障害」は心の中で動いた情動をなかったことにするための嘔吐が主で
神経性過食症よりもアレキシサイミア、アレキシソミアの状態が顕著です。
「排出性障害」の治療方針としては、

回避傾向を自覚すること
休眠状態だった右脳の感覚を取り戻すこと
身体感覚や感情をしっかり感じ、言葉で表現出来るようになること

など、「拒絶・回避型/愛着軽視型」と同じような治療方針になりますので
「拒絶・回避型/愛着軽視型」を対人関係療法で癒す』を参照してくださいね。

院長

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