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過食症の対人関係療法に「自覚の力」を応用する

[2015.08.10]

対人関係療法での感情とのつきあい方』でマーク・エプスタインの本から引用し、「なじみのあるひどく不快な感覚」とともにいても同一化することなく、過ぎ去るのを見守るだけの「自覚の強さ(アウェアネス)」が「精神的に楽になる」と「食行動が正常化」する間にあるギャップを埋めるプロセスであることを書きました。

 

エプスタインは前回の引用に続いて

瞑想は、二つの面で彼女を助けてくれました。
第一に、彼女を強迫的なまでに食べることに追い込む原因であった期待、正義感、激怒、失望、不全感が、滝のように押し寄せてきて悩まされていることを認めて、耐えることができるようになりました。

第二に、自分はふさわしくないという感覚に膠着している状態から解放されました。
強引に解放されるのではなく、自分はそうした感情の集合体以上の何かであることを理解して、解放されたのです。
エプスタイン『ブッダのサイコセラピー』春秋社

上記の「期待、正義感、激怒、失望、不全感」や「自分はふさわしくないという感覚への膠着」などは出来事や状況への直接的な反応である一次感情に対して、思考に対する反応である二次感情と呼ばれます。

 

グリーンバーグは『エモーション・フォーカスト・セラピー入門』で摂食障害の治療プロセスでは、

  • 一次感情を覆い隠す絶望や落胆のような二次感情を乗り越えること
  • 恐怖、見捨てられる悲しみ、恥といった中核的な不適応感情に接近すること

を挙げており、それによって

  • 埋もれた健康的な感情に接近すること(修正感情体験)が可能になる

と述べています。

 

このことを水島先生は「真の「自己コントロール」を身につける」とおっしゃっていますし、『対人関係療法での感情とのつきあい方』で「マインドフルネス瞑想などを通して自分と向き合うことに取り組んでみる必要があるかもしれません」と書きましたよね。

 

当然のことながらこころには影も形も無いものです。
その中にわき起こる思考や感情も状況に対する反応にしかすぎず、何の実体もないのです。
それでも、感情により苦痛を感じるという現象が起きるのです。
この「実体はないが、現象がある」のが「感情」なのですが、二次感情に接近することによって修正感情体験が可能になる以上に、マインドフルネス瞑想には先の到達地点があるのです。

 

ブッダの視点から見れば、自分自身の直接的体験に触れたり、それを自分のものとして再確認する行為そのものが、その経験が人格レベルを超えたものであることを理解する可能性を開きます。
マーク・エプスタイン『ブッダのサイコセラピー』春秋社

 

長年の瞑想により、「自分はそうした感情の集合体以上の何かであることを理解して」、摂食障害の陥穽から「解放された」女性に対しエプスタインはこう書いています。

 

この成長を仏教的視点からより正確に解釈するならば、自分はそうした感情そのものだと思い込んでしまっていたことを悟ったのです。
そうした感情を本来現実だと思い込んで突き動かされているのではなく、それらを“空なるもの”として体験することができるようになったのです。

いずれにせよ、彼女は家族劇場での囚人状態から解放されて、状況をよりよくコントロールすることができるようになったと感じました。
マーク・エプスタイン『ブッダのサイコセラピー』春秋社

 

エプスタインが記載しているように、マインドフルネス瞑想の心理学的な効果(自覚の力)によって感情との同一化傾向が打破される、ということですよね。

 

そのために水島先生が書かれているように「自分の身体と対話する」「身体の声を聴く」プロセスで「自分自身の身体にリラックスする」という身体の自覚にしっかりと気づきを根づかせ、気持ち、思考、感情あるいは心にうまく気づきを向けられるようになる練習が必要ですよね。

このプロセスについては、いつか機会をみつけて詳しく解説するつもりですので、お楽しみに♪

院長

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