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治療準備性とモチベーション

[2014.03.03]
三田こころの健康クリニックでは対人関係療法による治療を希望される方に、初診の前に「診療申し込み票(問診票)」を記入していただいています。 問診票には2種類あって、一つは病気の経過やこれまでの生活歴、あるいは周囲の人たちとの関係について書いてもらうものが3頁、もう一つは、発育や発達の様子について養育者(多くの場合は母親)に○をつけてもらうものと、普段のご自分をふり返って○をつけるもの合わせて4頁です。 どうしてこんなに分量があるのかというと、三田こころの健康クリニックでは精神疾患の診断基準(DSM)に準拠した診断を行っていますが、対人関係療法では「文脈に沿った診立て」を重視するため、その人の発育・発達の過程からみた生活歴、周囲の人たちとの関係パターン(愛着スタイル)、あるいはコミュニケーションスタイルなど、「その人の歴史」がわからないことには診断どころか対人関係療法による治療もままならないわけです。   症候診断であると悪評高いDSMですが、DSMの本来の目的は、臨床家の診立ての一部としての「疾患分類診断」をアシストしその診立てが個々の患者の治療プランにつながることと明記してあります。 ということで、診断(および診立て)は単なるレッテル貼りではなく、治療に直結する営為なのですが、多くの精神科では薬物療法による対症療法はメインとなっているため、診断や精神病理的な診立てに重きが置かれていないようです。   そもそも、当然のことですが、診断や病態水準の評価の誤り、あるいは生活環境を知らずに治療導入を見誤ることは治療の方向性を誤ってしまうことにつながりますよね。 (『治療者選びのコツ』参照) そういう観点で、対人関係療法による治療を申し込まれた方には、初診の診断面接の前に問診票を先に書いて送っていただいているのです。 というのも、治療はクリニックを受診したときからのスタートではなく、「対人関係療法による治療を受けたい」と思った時から第一歩を踏み出されているわけで、三田こころの健康クリニックに申し込みの電話をかけて、そこで簡単な病歴を訊かれることがとりもなおさずコミュニケーションを通した治療である精神療法がスタートしているわけです。   電話での申し込みの際にお話をお伺いして、この人は対人関係療法のいい適応になりそうだと感じられても「診療申し込み票(問診票)」を送ってこられない場合があります。 こういう場合は、「変化への準備」ができていないのかもしれませんね。 しかしながら、中には精神療法が不向きのケースもありますよね。 対人関係療法も「うつ病」や「気分変調性障害(慢性うつ病)」、「双極性障害」などの気分障害や、「摂食障害(主に過食症)」、などで治療効果が実証されている治療法ですが、そうは言っても、誰にでも合う治療法というわけではありません。 よく知られているところでは「本人のモチベーションが乏しいときに精神療法を開始してしまうと、だいたい症状は悪くなる」ことがわかっています。 (『精神療法を開始するタイミング』参照) そのため、三田こころの健康クリニックでの対人関係療法による治療申し込み票では、「本を読んで取り組み始めたこと」を記入していただく事で、熟考期・準備期・実行期のどの時期なのかという「治療準備性」についてアセスメントしているんですよ。 『対人関係療法による治療のすすめかた〜「治療の土台作り」〜予備面接1』や『治療の土台作り』を参照してくださいね。 院長
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