メニュー

気分変調性障害(慢性うつ病性障害)の精神療法1

[2013.05.20]

マカロゥが提唱する「認知行動分析システム精神療法(CBASP)」では、治療で扱う問題領域として「対人-社会面での機能」が設定されています。

 

対人関係療法とオーバーラップする考え方なので、少し専門的になりますが見ていきますね。

具体的には、患者は自分の行動が対人関係の帰結を招いていることを教えられ、どうすればこれらの帰結を認知できるかの術を教えられる。その後同じパターンを続ける事を望むかどうかを決めるのは、患者の責任である。
(中略)
患者は自分がどのような人生を作り上げてきたかに気づくようになって初めて、前とは違う方法で生きるという選択をすることができるようになる。
(中略)
慢性うつ病の患者が自分のうつに責任があると私が想定するのは、自分の人生の生き方は選ぶことが可能なのだと信じる見方に由来する。選択ができなければ、患者は責任を持ちえない。経験の奴隷にとどまる。
(中略)
精神療法家が使用できる最も効果的な動機付け方法は、次のような単純だが意味深い自明の理、つまり行動を変えると気分も良くなるということを実例で示すことである。
(中略)
上手に対処してストレス状況を解決すること(あるいは、少なくとも、目の前の問題に上手に対処できると結論すること)は、抑うつ体験の引きこもり段階に長期間とどまること—慢性うつ病——を避けるための必須条件である。
『慢性うつ病の精神療法』ジェームズ・マカロゥ

 

認知行動分析システム精神療法(CBASP)のすすめ方は、具体的には「状況分析」と「対人弁別訓練」があり、「対人弁別訓練」についてマカロゥは

この本は「ミスター対人関係療法」ドナルド・J・キースラー博士(故人・元バージニアコモンウェルス大学)との長年にわたる関係なしに書くことはできなかった。
(中略)
ドン(ドナルド・J・キースラー博士)との関係は特に私にとって支えになってくれた。当時、彼との議論を通じて私は、治療者—患者関係が患者の行動を変容させる道具として使えることを見出すことができた。
(中略)
私はまたジョン・C・マーコヴィッツ博士、私の精神療法の同僚にしてジェラルド・クラーマン(故人)の「対人関係療法」の大家、に感謝したい。彼(ジョン・C・マーコヴィッツ博士)は現在、コーネル大学の精神科准教授(現在はコロンビア大学精神科教授)である。ジョン(ジョン・C・マーコヴィッツ博士)は私の仕事を援助し、支持してくれ、慢性うつ病患者に対する精神療法の有効性を研究している数少ない精神療法研究家の1人である。
『慢性うつ病の精神療法』ジェームズ・マカロゥ

と謝辞に書いているように、対人関係療法での「対人関係の欠如(対人過敏性)」の扱い方と転移解釈を交えた対応の仕方を「治療者—患者関係の利用」と言っているようです。

マカロゥが最大の謝辞を述べているドナルド・J・キースラー博士は、まさにこのパーソナリティと精神病理の理解を通じて、文脈と焦点とする問題領域の同定を研究し、対人関係療法による「慢性うつ病性障害」の精神療法を研究してきた人です。

 

対人関係療法では、転移や逆転移は解釈されず、対人関係パターンを同定するためのツールとして用いる点がマカロゥの認知行動分析システム精神療法(CBASP)と異なる点ですね。

もう一つ、マカロゥは「動議づけ」について大切なことを述べています。

しかしながら、慢性うつ病患者が家庭環境に問題がある生育歴を持っている場合、個人的な責任があるという想定を支持することは難しいように思われるかもしれない。つまるところ、虐待や敵意、および/またネグレクトが横行する過程で成長し成人となった患者に、その対処方法が不適切であることに責任があるといえるだろうか。これらの患者は、効果的な対処や生産的な生活をする方法を学ぶ機会がまったくなかった、と簡単に結論づける人もいるだろう。このように別な生き方を学ぶ機会がなかった場合、患者はどうして自分のうつ病に責任があるといえるのだろうか。

この疑問に対する答えは、精神療法家が治療の中で、患者が生き方のコントロールを修得することを手助けする中で与えられる。もちろん、子どもが家庭環境を選択したり演出したりできるわけではないのだが、賢明な治療者は、患者に——その生育歴の如何に関係なく——自分の生活の質を改善し、うつ病を終焉させる唯一の望みは、現在の生き方に対してしっかりと責任を引き受けることであると気づくのを手助けする。
『慢性うつ病の精神療法』ジェームズ・マカロゥ

ジョン・C・マーコヴィッツ博士がマニュアルに書かれているように、「慢性うつ病性障害(気分変調性障害)」に対する「対人関係療法(IPT-D)」では、何十年も続いてきたであろうパーソナリティの一部と感じられている慢性の気分障害に対して、あえて16回の治療を行うことは治療上の楽観性を伝え、「いま・ここで」のことに焦点を当てていくことで、抑うつ的な対人関係を続けるのではなく、健康な対人関係の「新記録」を作る事が治療目標になる、ということですよね。

 

つまり、「自分の人生は自分が主人公」であるという主体性「自分の選択に自覚(アウェアネス)と責任(対処能力・アクセプタンス)を持つ」ということで、三田こころの健康クリニックで予備面接で行っていくようなことですよね。

院長

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME