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摂食障害思考を信じるか信じないかはあなた次第

[2020.08.17]

摂食障害症状のぶり返しと前に進み続けること』で、症状のぶり返しのときには、自己批判と回避を支える理由づけなどの摂食障害思考が大きくなり、それに呑み込まれてしまいやすいことを、実例を交えて説明しました。

 

「できない」と「しない」:行動主体の取り戻し方』で「できない」と「しない」の主体の体験の違いについて説明しました。

「回復を邪魔しているもの(障害あるいは障壁)」の1つは、行動を回避する「何らかの理由」であり、まことしやかなその理由を信じることが、言い訳として作用していることを解説しましたよね。
(『アレキシサイミアと回避を支える理由づけの文脈』も参照)

 

脳の中の視床という部位では、思考や空想が五感からの感覚刺激と同じように処理され、情動の中枢である扁桃体の反応を引き起こします。

視床は自己内と外界との現実を区別しないので、私たちが安全だと信じていれば脳も安全だとみなし、恐怖心や自己不信を募らせると脳も現実に危険が迫っていると思い込んでしまうのです。

 

たとえば、否定的な言葉や考えに囚われてしまうほど、記憶、感情、情緒をコントロールする脳領域に負担がかかり、神経認知機能が障害されます。

さらに、他者の意図や性質を理解する対人関係の基礎となる社会認知機能も障害されるのです。

この極端な例がジェニーさんが書いてくださっている「前熟考期」に特有な思考です。

 

私もそうでしたが、あなたもひょっとして、「そんなに頻繁に過食や拒食をしているわけではない」、「私は大丈夫」、「もう何年もこうした食事で生きてきたんだから、いまさらどうってことない」などと考えていませんか。

ある日インターネットでウェブページを眺めていて気がついたのですが、これは、摂食障害に苦しむ若い人たちに共通した考え方のようです。

(中略)

エドとの離婚は、単に虐待的な関係を終わらせるだけではなく、自分自身の人生を、あなた自身の足で歩み出すのだという決意でもあるのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

ガルブレイスは、「今までのやり方を変えることと、今までのやり方を変える必要がない理由を証明すること、どちらかを自分で選びなさいと言われると、ほとんどの人は証明の方を選ぶ」と、回避について見事に言い表しています。

つまり「前熟考期」の思考では、「私よりもずっと症状がひどい人たちがいる(だから私には問題がない)」「ごくたまにしか吐かない(問題なのかもしれないけど、たいしたことはない)」「吐くのは良くないのはわかってるけど、今のところ問題ないので気にしていない」など、現状を肯定(正当化)する理由づけをしてしまいます。

さらに多くの人は、「変わろうと思えば変われるけど、変わろうと思っていないだけ」と、変化することを回避する理由づけを付け加えてしまうのです。

 

ジェニーさんは、摂食障害のために命を落とした人たちのことを書いています。

エドはたくさんの命を奪いましたが、決してエドが勝ったのではありません。

クリスティンやメリッサや、その他にも大勢いるエドの犠牲者たちの死を無駄にしないように、彼女らの体験から、私たちは学ぶ必要があると思っています。

エドがどんな考えを持ち出してくるにせよ、こちらが少しでも油断したら、破滅させられるのだという事実を学ばなければいけません。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

エド(摂食障害思考)に支配されたまま「虐待的な関係」を続けながら生きていくのか、「自分自身の人生を、あなた自身の足で歩み出す」生き方を選ぶのか、私たちは選択することができます。

 

トムは、回復への道はその気になればどの瞬間からでもすぐに歩き始められるんだよ、といつも力説しています。

ボールを落としてしまったら、すぐに拾って、また動き続ければいいのです。

トムは、私とエドがよりを戻すのを「症状のぶり返し」と呼んでいましたが、それはいつでも終えることができる、私には選ぶことができるんだ、と話していました。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

思考の本質は、言葉(内語)やイメージにすぎません。

思考の文字どおりの意味(内容)ではなく、慣れ親しんだ摂食障害思考を信じることの有効性を考えて、摂食障害思考とのつきあい方に対応できるようになっていくことが、過食や過食嘔吐からの回復への道の第一歩となるのです。

 

回復への道を歩み続けるためには、前進していきたいと思わせてくれる何かを自分で見つけていくことが必要となります。

初めは大変かもしれないということを覚えておいてください。

回復の道をたどり続けようと主張しているのは、あなたの中のとても小さな弱々しい部分かもしれません。弱々しくても、その声に気づいたら、舵取りを任せてみましょう。

か細い声に委ねてみると、今まで想像もしていなかったような人生が広がってくるかもしれません。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

対人関係療法による摂食障害の治療では、「人生の価値や目的(ライフ・ゴール)」、つまりどのような生き方をしたいかを課題として、回復への道を踏み出していきますよね。

 

過食・むちゃ食い、あるいは過食嘔吐の治療を希望してこころの健康クリニックを受診した患者さんのうち、あるクリニックを受診した既往をお持ちの方が何割かいらっしゃいます。そこでは先生から「回復したら何をしたいと思いますか?」と聞かれたそうです。

この質問はすごく大切な質問なのですが、この質問の前に回復までの道のりを実例を含めてイメージできるように示してあげないと、回復したときのことをイメージするのが難しいのではないかな、と思います。

 

回復の第一歩では、摂食障害思考に慣れ親しんでいて、大きくなっている摂食障害思考を信じ込んでいる状態の中で、「回復したい」という内なる声に気づくために、まず自分の心の中で起きていることを観察できるようになる必要があります。

 

このセルフ・モニタリングと自己客観視を根気よく続けていくことによって、か細い声が次第に希望への方向として自覚できるようになっていきます。

 

その上で「回復したある日」をイメージして、そこに向かって回復への道を歩いていくのです。(風間副院長の[星とたんぽぽ]の『摂食障害から回復した時の私の1日』を参照してみてくださいね)

 

院長

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