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摂食障害はクセや依存症なのか

[2017.04.17]

一般に「過食はストレスの表れ」と理解されていますが、過食症やむちゃ食い症の方は、「過食や過食嘔吐がクセになった」「クセになった過食や過食嘔吐をやめたい」と感じられている方も多いと思います。

過食には、一般にも知られている、拒食症からの『回復期の過食』、生活リズムや食生活の乱れに起因する『飢餓過食』、出来事に反応した『ネガティブな気持ちをなだめ麻痺させるための過食(ストレス解消としての過食)』と、これまでほとんど注目されなかった『心や魂の飢えとしての過食(嗜癖(クセ)になった過食)』などが区別されます。

そして、過食衝動のほとんどが「ストレス解消としての過食」ではなく、することがないとき、退屈なときにスイッチが入る「心や魂の飢えとしての過食(嗜癖(クセ)になった過食)」ですよね。
そして多くの場合、過食の後は食事を控えますから「飢餓過食」が合併することが多いですよね。

 

「ストレス解消としての過食」「飢餓過食」は、対人関係療法や社会リズム療法などの治療で対処しやすいのですが、多くの人が感じている「嗜癖(クセ)になった過食あるいは過食嘔吐」つまり「心や魂の飢えを満たすための過食」を治していくためには、過食をストレスの表れと見るのではなく、食べ物に象徴されたメタファーを読み解き、心のさらなる深い部分にうごめく「渇望」と向き合う必要があります。

 

「嗜癖(しへき) 」とか「依存」など、ちょっとネガティブな印象を受けるコトバについて、『素敵な物語』でジョンストン先生はきちんと説明されています。

 

さて、この章では依存という言葉を何度も使っていますが、摂食障害はアルコール依存や麻薬依存のような物質依存ではなく、行動依存だということを覚えておいてください。

つまり、乱れた食行動に苦しむ女性は、食べるという行動に依存しているのであって、食べ物に依存しているわけではないのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

摂食障害はよい子がなりやすいといわれる理由』でも触れたように、摂食障害行動(乱れた食行動)は、心の痛みや傷つきやすさを「正しいあり方、より良いあり方、そしてより完璧なあり方」である「行動」によって必死で隠そうとする努力によって引き起こされることをしっかりと理解する必要がありそうです。

 

残念ながら、摂食障害をアルコール依存や麻薬依存と同じように、物質依存として治療しようとする医療従事者がいるのは事実です。そうした医療従事者は、「禁欲」や食事プランを勧めます。しかし、このようなアプローチが成功することは、ほぼありません。なぜなら、依存対象となっている乱れた食行動ではなく、食べ物自体を重視しすぎているからです。

減量目的のダイエットにも同じことが言えます。食べる物や量を制限したり、カロリー計算をしたり、ハーブやサプリメントを使ったり、食事プランを立てたりと、まるで食べ物に問題があるかのように食べ物を重視しすぎているからなのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

ジョンストン先生が注意を喚起しているのは、過食を我慢する、抗うつ効果や食欲増進効果を期待して抗うつ薬を投与する、あるいは乱れた食行動の結果である機能性低血糖を原因であるかのようにサプリを処方するなどの対症療法であり、食べ物自体が重視されすぎていて「本当の問題が見えなくなっている」ということです。

 

このブログを読んでいらっしゃる方の中にも、医療機関で「過食を我慢しなさい」と言われたり、抗うつ薬やサプリメントを処方されているけれども、過食がなかなか良くならないと感じられている方も多いのではないでしょうか?

またある医療機関では、「過食嘔吐は体によくないから」と即入院を勧めるところもあるとききます。
入院中は過食嘔吐はしなかったけど、退院した途端に過食嘔吐がまた始まり、前よりもひどくなったという話もよく聞きます。

 

食べるという行動への依存は、何度も繰り返しますが、「食べ物が目くらましとなり、本当の原因が見えなく」なった状態です。
「過食を我慢する」ことは、ますます摂食障害症状を強化することにつながるだけでなく、摂食障害からの回復に必要な「今この瞬間に存在する」ことから切り離されてしまうのです。

 

そして、心の痛みや傷つきやすさから目を逸らすための乱れた食行動(摂食障害症状)は、本当の問題を見えなくしてしまうだけでなく、空虚感を生みだし、ますます乱れた食行動(摂食障害症状)に没入してしまう悪循環を作り出してしまいます。

 

依存は、自分自身や自分の感情、友達や愛する人、そして依存がなければ気づけたであろう人や物事と共に今この瞬間に存在する、ということを不可能にしてしまいます。
今を生きる代わりに、さっき食べたもののカロリーに苦しめられるのです。人生と向き合うのではなく、過食やダイエットに関する強迫的な思考の中に撤退してしまいます。

次の過食の計画をし、次のダイエットの準備をすることにエネルギーを使うことで、自分自身を今現在から切り離し、心を将来へと押しやり、目の前で展開している人生を見逃してしまうのです。

(中略)

もし今、この本を読んでいるあなたが昨日のことや明日の計画を立てることにとらわれているなら、子どもの笑顔や友達からのほめ言葉、薔薇の香りや大好きな曲、そして美しい夕焼けなど、今目の前で起こっていて、心の糧になり得ることを見逃してしまいます。

だから延々と飽くなき飢えが続き、空虚感も増すばかりなのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

「本当の原因」には「心や魂の飢え」があり、それが「嗜癖(クセ)になった過食」と感じられます。
「嗜癖(クセ)になった過食」を治していくためには、「心や魂の飢え」を満たす「心の糧(滋養)」が必要で、それを生み出すひとつのすぐれた方法がマインドフルネスです。

 

8つの秘訣』の「秘訣8 人生の意味と目的を見つける」では、心の深い部分と向き合う「魂のレッスン」として「今ここを生きる」マインドフルネスを勧めています。

マインドフルネスは過食症の治療に何をもたらすか』で、『リラプス・プリベンション』や『マインドフルネスに基づく嗜癖行動の再発予防』など、「嗜癖(しへき)」や「依存」に対するマインドフルネスの応用を紹介したことがありますよね。

 

三田こころの健康クリニック新宿では、摂食障害からの回復の段階で「秘訣7 摂食障害にではなく人々に助けを求めよう」「秘訣8 人生の意味と目的を見つける」に関連する【対人関係のマインドフルネス】を指導することもあるんですよ。

このやり方は「嗜癖(クセ)になった過食や過食嘔吐」だけでなく、「不安障害」や「気分変調症」の治療や、「不安定型愛着スタイル(愛着障害かもしれないと思っている人ではありません)」を修正し、獲得安定型に変化させるときにも必要なプロセスです。
治療を希望される方は三田こころの健康クリニック新宿の【専門外来】に申し込んでくださいね。

 

院長

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