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摂食障害の治療〜神経性食欲不振症(拒食症)3

[2012.06.25]

もう一つのブログ(如実知自心〜対人関係療法セラピスト@三田こころの健康クリニック)や『対人関係療法による治療のすすめかた〜「治療の土台作り」〜予備面接1』で触れたように、患者さんへの接し方は、患者さんの治療準備性(動機づけ)と一致させる必要があります。

 

拒食症の場合は、「否認〜病識の欠如」がありますから

1. 自分の状態を病気と認識していない段階(前熟考期)
2. 問題意識は芽生えているが、食行動を変えようとしていない段階(熟考期)
3. 自分の状態を変えなければならないと考えている段階(前準備期)

というプロセスになります。

 

例えば、あばら骨が見えるほどにやせていても、無月経になっても、本人はやせを心配していないどころか、睡眠時間も短く、通学、通勤、外出や運動をしており、「病気だとは思わない」「私より細い人がいる」「運動をしないとストレスがたまる」などと言い張り、医療機関への受診をしぶることがあります。

やせを維持する行動と、それと矛盾する食へのこだわり、あるいは、集中力や判断力の低下、抑うつや不安、過敏性や怒りなどの気分の不安定などは、飢餓にともなう精神症状で「飢餓症候群」といいます。

 

家族はこれらの行動を制御しようとやっきになり、三田こころの健康クリニックへご家族から「治療を受けさせたいけどどうしたらいいか?」という問い合わせが多いのもこの時期です。
でも、この「飢餓症候群」は、低栄養状態を改善しない限り、軽快しません。

 

対処しきれないような大きなストレスに直面したり、コーピングスキル(ストレスを適切に処理する能力)が未熟な場合、ささいなストレスも、深刻な衝撃として体験されます。

発症時のストレスの多くは、

・家族内葛藤(家庭内でのしわよせ)
・勉学やスポーツ、習い事の過重や負担
・学校・職場の人間関係の悩みやイジメ
・進路の失敗

などのストレス要因がいくつか重なって発症します。
これを対人関係療法では「役割の変化」といいますよね。

 

とはいえ、これらのストレスは思春期にありがちなストレスで、通常は周囲の援助を得ながら、自力で対処していくものですが、それを乗り越える前に、ふとしたきっかけでダイエットを始めたり、過労や体調不良からやせ始めたりして、やせから抜けられなくなります。

さらに対処困難な状況に陥ると、わけもなくやせたくなります。
やせることに没頭していると、現実に立ち向かうのが怖いと感じるようになってきて、現実に直面することを回避したいと感じるのが肥満恐怖ということですよね(やせの疑似安心感)。

 

この時期の対応としては、やせや体重、食事についてはくどくど言わず、家族関係、学校関係や友人関係、さらに近い将来(たとえば受験)をどうしたいかについてじっくり語り合ったりして、子どもさんの気持ちを理解するようにしてあげてください。

拒食症・過食症を対人関係療法でなおす』に、①とにかく話を聞く、②どんな気持ちも受け入れると書いてあるのは、「家庭を安心出来る療養の場にする」ということなのですよね。

 

それとなく身体危機状態への配慮を行いつつ、たとえば、「髪がよく抜ける」「うぶ毛が濃くなった」「肌が荒れる」「生理(月経)が止まった」「頬部が腫れる(耳下腺や顎下腺など唾液腺の腫脹)」などをそれとなく指摘して、受診をすすめることもできます。
(身体への対応が優先されます)

無月経を気にしている場合は受診の契機になりやすいのですが、数度すすめても受診に応じない場合でも
強要せず、辛抱強く、焦らず、患者さんの心が落ち着いているときを見計らって受診をすすめてください。

 

万が一、やせが進行して身体的治療が必要と思われる場合(前)には、患者の医師に反してでも断固とした態度で親の覚悟のほどを患者に明確に示してあげて下さい。

 

政策研究大学院大学保健管理センター教授の鈴木(堀田)眞理先生が「摂食障害の理解と治療のために」というサイトを立ち上げておられます。

家族の対応の仕方や、家族会のDVDも購入可能ですので、ぜひ、ご覧になってくださいね。

 

大阪市立大学の切池信夫教授が「家族がしなければならないこと・してはならないこと」と題して、患者さんの病気に家族が巻き込まれるのを防ぎ、家族が疲弊してしまわないためのアドバイスを書いておられます。
参考までに挙げておきますね。

次回は、対人関係療法などの精神療法を開始するタイミングについて書いてみますね。

院長

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