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摂食障害と気分変調症

[2019.09.09]

不安や抑うつ、身体症状化などは内在化症状と呼ばれます。
自責感、罪悪感など、自分に向かう怒りによって絶望感や無力感が引き起こされます。

そのような状態になると、自分の考え(思考)があたかも現実のように感じられてしまいます。

それだけでなく、「自分はダメだと思われていると感じたから、周りの人は自分をダメだと思っているに違いない」という確信を抱きがちになります。

この状態は「色めがね」と表現されているように、思考のフィルターを通して現実を見ているどころか、思考のフィルターしか見ていない状態です。

これが性格と間違われやすい慢性のうつ病である「気分変調症」の特徴です。

 

過食症やむちゃ食い障害の摂食障害思考は、気分変調症の思考の特徴とすごく似ています。

そのことをジェニーさんは「エドには仲間がたくさんいる」と表現していますよね。

 

トムが「べきモンスター」と呼ぶのは、私が人生で何をする「べきだった」か、する「べきではなかった」かをしゃべり続ける人。
それから、タイムキーパーの声もよく聞きます。私に人生を分刻みで見張って、一分たりとも無駄に過ごさないように、抜かりなく管理してくれています。
私を完璧にしてあげると約束しながら、完璧主義女史とタイムキーパーが折り合いをつけているのが聞こえてきます。

完璧主義女史にとっては、これで十分という状態はありえません。
大学のときには常に最高得点のAとA+の成績をとるようにと私に求めたのも彼女でした。
私は誰にでも好かれなければいけないし、決して間違いを犯してもいけない。

でも、完璧主義女史がどれほど完璧を求めて私を頑張り続けさせたとしても、結局、私は人として、一人の人間として、何も良くなるわけではないと気がつきました。ただぼろぼろになるだけ。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

自分の中に自分を責める思考があって、その考えをあたかも自分の本当の考えのように感じてしまうわけですから、気分変調症も過食症も抑うつ状態のようにみえるのです。

 

ジェニーさんは摂食障害特有の考え方にエド(ED)と名前を付け、エドの言いなりになるのではなく、エドの言い分を真に受けないことを通して、エドから離れることに取り組まれました。

 

最終ゴールは、エドに向かって違うと言い続け、エドの言いなりにならないことです。
エドから離れる練習を続けていくと、あなた自身の本当の声に耳を傾ける余裕ができてきます。

(中略)

でも、エドとあなたは別の存在なのだと考え続けていくと、彼が言っていることと、あなた自身が本当に思っていることの違いをだんだん区別できるようになってくるでしょう。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

ジェニーさんが取り組んだ「エドとあなたは別の存在なのだ」という考えは、『8つの秘訣』では、「健康な部分」と「病気の部分」を区別することと説明されています。

 

「病気の部分(エドや完璧主義女史、タイムキーパーたち)」の考えを間に受けると、その考えは次から次にストーリーを作り出します。この状態をある患者さんが「脳内劇場」と表現してくださいました。

自分の中にある「病気の部分」の考えを真に受けることは、病気の部分に栄養を与えて、勢力を伸ばさせて、「脳内劇場」のストーリーを創ってもらっているような状態です。

 

このような状態から抜け出すには、「時間と忍耐が必要になる」とジェニーさんもおっしゃっています。

 

そして、過食と嘔吐を繰り返さなければいけないと考えているのは、実はエドであって、本当のあなた自身の思いではないと気がつくことができるでしょう。
あなたの中のどこかには、そんな行動をやめて健康になりたいと思っている部分があるのに気がつくと思います。

エドは、あなたに過食と嘔吐を繰り返させようとして必死です。でも、あなた自身は、自分の人生を自分の足で歩み出していきたいんですよね。

すぐにエドに逆らうことができないとしても、大丈夫です。心配しないでください。
私も、エドに違うと抗議できるようになるまでには、何ヵ月もかかりました。

自分が、自分の人生に何を求めているのかをよく考えて、エドの出してくる計画と比較し始めて、やっと、どうやらエドの考え、やり方には、私は本当は従いたくないのだと気づくことができたのです。

(中略)

時間と忍耐が必要になるけれど、あなたもきっと、昼も夜もつきまとってくる頭の中にこびりついた否定的な考え方に「違う」と言えるようになります。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

自分の中にわき起こってくる考えをモニターし続けることで、次第に、病気特有の思考はその他の数多くの考えのうちの1つに過ぎない、考えは現実ではない、ということが理解できるようになってきます。

対人関係療法でも用いるこのようなセルフ・モニタリングに取り組むことも、行動の仕方を変える方法の1つになります。

 

行動を変えることは、本当に難しく、なかなかできませんでした。

でも、とにかくエドの言うことは間違っていると思い続けているうちに、私自身の思いについて、もっとよくわかるようになり、私自身の意志もだんだん強くなっていきました。

摂食障害から自由になっていける、自由になれるかもしれない、という感覚も強くなり、一歩ずつ、エドの命令に従わなくて済むようになっていきました。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

倦まず弛まずセルフ・モニタリングに取り組むことで、ジェニーさんは「ほんの一瞬だけ、長いこと隠れていた健康な部分のジェニーを体験することができたのです」と書いていらっしゃいます。

 

摂食障害の行動を変えることは、専門的な治療で行わないと難しいですけれども、自分自身との向き合い方を変えていくのは、一人でもできますよね。

一人でやってみるときには『8つの秘訣ワークブック』の「秘訣1 回復への動機、忍耐、そして希望」にじっくりと取り組んで見てくださいね。 

 

院長

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