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摂食障害から回復するための「自分」という土台

[2016.03.07]
拒食症や過食症などの摂食障害と気分変調性障害は 心の機能発達や愛着(アタッチメント)と密接な関係があります。 愛着の回復には、重要な他者との間の対人関係の中で 情緒的サポートを受けることが「安定性の島」として作用し、 後の獲得安定型の確立に重要な役割を果たします。 ところが、情緒的なサポートを受けていたとしても 摂食障害や気分変調性障害の患者さんでは 外的現実と心的現実の区別が困難な人が多いのです。 この心的現実(脳内劇場)のことを心理の用語で 「表象」と呼びます。
私たちの気分を悪くするのは他人や出来事そのものではない。 それに対する自分のとらえ方である。 とらえ方を決めるのは自分の心の姿勢である。 『怖れを手放す』星和書店
自分が体験している現実や感情は、 自分の心の中の表象(とらえ方)にすぎないという感覚が欠如すると 出来事や感情を内省することができないのです。
強迫的で、破壊的で、回復の妨げとなる行動を変えて手放していこうとするときには、自分への思いやりが必要になります。 (中略) 自分を思いやるなんて甘やかすのと同じ、あるいは、自分を思いやったり他の人が気遣ってくれたりするのは変わらなくてもよいと言われているのと同じ、と思うかもしれません。 自分には思いやってもらう資格などない、または、自分を思いやるということは自分が弱くて甘えていて憐れだということだ、と思いこんでいる人が沢山います。 そうした考えは少し厳しすぎるのではないかと指摘すると、ほとんどのクライエントさんは、そんなことはない、「本当」だと思う、と答えます。 『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
このような一つの凝り固まった見方しかできない状態を 「心的等価(心の中で思ったことを現実と思いこむ)モード」と呼びますが 気分変調性障害の人の感じ方とそっくりですよね。 脳内劇場としてのとらえ方が絶対であり 他のとらえ方があるとはとても思えないのです。 「思いやってもらう資格がない」は思考表象ですが 「「思いやってもらう資格がない」という思い込みについて考えること」は そう感じている自分という表象に対する観察です。 このような認知に対して認知すること、 考えについて考えることをメタ認知と呼びますし このプロセスが内省(リフレクティブ・ファンクション)です。 このような心の動きを通して、対人関係療法では その思い込み(脳内劇場)が現実の行動にどう影響しているか を見ていきますよね。 そこで「本当はどうなって欲しかったか」と感情を指標に 「そのためにどうしたらいいか」と解決志向を目指すのですが 摂食障害の患者さんも気分変調性障害の患者さんも 心的現実を出来事(外的現実)と錯覚している状態ですから 感情に対する内省は最初は難しいようです。 対人関係療法では、過食のきっかけとなった出来事と その時感じた感情に焦点を当てて詳しくみていきますよね。 最初は、体験の中で感じた気持ちを意味づけられなくても、 「モヤモヤした感じ」と意味づけることで 「モヤモヤした感じ」を感じる状況を統合していけるようになり 特定の感情を結びつけられるようになります。 このような内省が可能になることで体験と折り合いがつき、 一貫したナラティブを生み出せるようになります。 このプロセスは愛着の安定を獲得する方法の1つでもあるのです。
そこからわかるのは、思いやりの本質が理解されていないということです。 また、クライエントさんたちの考え方がいかに批判的で否定的かということも伺えます。 自分への思いやりとは、今この瞬間のあなた自身をありのままに受け入れて、これまでの人生でどのようにしてここまでたどりついたのかを理解することです。 『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
「思いやりの本質」を理解するために『8つの秘訣』では、 「マインドフルネスは、この世界を生きるときの姿勢とも言えるでしょう」と マインドフルネスを勧めています。
もしもあなたが本当に、何を経験したとしてもありのままの姿勢で、ありのままを受け容れ、批判せずに気を配ることができるとしたら、そんな人生になるでしょう。 (中略) マインドフルネスの実践とは、状況をありのままに受け容れるように脳を訓練する方法ですので、それを身につけると、状況にとらわれずに自由になって、物事はひとまずそのままにして、あなた自身は次の段階へと進めるようになるのです。 『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
でもマインドフルネスは難しい、やったことないという人は AHの考え方を参考にするのも良さそうですよね。
つまり、これができるできないということも含めてご自分のプロセスなので、その時々のご自分をただ認めてあげればいいだけです。 できないんだったら、今日はできない、あしたはちょっとできるかもしれないというだけのことなのですね。 『怖れを手放す』星和書店
院長
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