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成人のアタッチメント・スタイル

[2012.10.01]

そもそも。
成人のアタッチメント・スタイルについては、『対人関係療法のアセスメント〜愛着(アタッチメント)スタイル』でもちょっとだけ触れたことがありますよね。

もともとアタッチメント・スタイルの研究で、エインズワース(Ainsworth)らは、子どもと養育者の一時的な分離と再開というストレンジ・シチュエーション法による観察により、乳児のアタッチメント・パターンを「安定型」「不安(アンビバレント)型」「回避型」の3つに分類し、これに「無秩序・無方向型」が加わりました。

乳幼児のアタッチメント・パターンは、

タイプA「回避型」:分離に混乱を示さず、養育者と距離を置きがち
タイプB「安定型」:分離に混乱を示すが、再会時に静穏化する
タイプC「アンビバレント型」:分離で激しく混乱し、再会時にも陰性感情を引きずる
タイプD「無秩序・無方向型」:近接と回避、不自然でタイミングのずれた行動

に分類されています。

不安定な愛着パターンを示す子どもの中には、親や重要な他者を脅したり喜ばせたりしてコントロールすることで、関係の安定を図ろうとするケースがあり、「統制型」と呼ばれます。
統制型から安定型になる場合も、不安定型になる場合もあると言われています。

成人のアタッチメント・インタビュー(AAI)を用いた研究で、成人のアタッチメント・スタイルはアタッチメント関係の「不安」と「回避」という2つの次元で特徴づけられ、乳幼児期のアタッチメント・タイプと20歳時のアタッチメント・スタイルは、2/3ほどの一致が見られることが明らかにされています。

 

アタッチメント不安」は、「親密差への強い欲求」「関係性の不安」「過剰化した方略への依存」によって特徴づけられ、「重要な他者から拒絶されこと」「見捨てられること」「愛されないこと」に対する心配の程度を反映します。

一方、「アタッチメント回避」は、「強迫的な自恃(自分自身をたのみとすること)」「他者との間に情緒的な距離をおくことを好む」「脱活性化した方略への依存」により特徴づけられ、他者との親密さや依存を制限する程度を表しています。

 

この「不安」と「回避」の2つの次元により

自律・安定型(autonomous-secure)
とらわれ型(preoccupied/不安・アンビバレント型とも)
拒絶・回避型(dismissing-avoidant/愛着軽視型とも)
恐れ・回避型(fearful-avoidant/未解決型とも)

の4つのタイプに分けられます。

自律・安定型以外は不安定型と呼ばれ、成人の約1/3が不安定型愛着スタイルをもつと考えられています。

 

4つのアタッチメント・スタイルについて簡単に説明しておきますね。

自律・安定型」は、不安も回避も低く、他者から尊敬され、愛される価値があると感じており、アタッチメント対象は概して応答的で、用語的手、信頼出来ると感じています。
このタイプのアタッチメント・スタイルの人は、親密な関係を発展させることや、必要であれば、他者に依存することに快適さを感じます。

とらわれ型(不安・アンビバレント型)」は、不安が強く、回避が低いとされます。
親密さへの過剰な要求はあるものの、他者の利用可能性(アヴェイラビリティ)や要求に対する応答性への信頼が欠けているとされます。
自身の個人的幸福感は他者からの評価に強く依存し、拒絶されることや見捨てられることに対する心配が強いです。

拒絶・回避型(愛着軽視型)」は、不安が低く、逆に回避が高いパターンで、アタッチメント対象は信頼出来ず、応答的でないと認知していますが、自分に自信があり、ネガティブな感情に対して傷つきにくいと感じています。
このタイプの人は、アタッチメント要求を最小化し、他者から距離を取り、情動表出を抑制することで潜在的な拒絶に対抗し、ポジティブな自己イメージを維持しようと試みます。
この回避型のアタッチメント・スタイルの人は、共感的な体験に対して、かえって反発を感じる場合があります。

恐れ・回避型(未解決型)」は不安も回避も高く、他者に対して、拒絶されるという予測と結びついた対人不信感(喪失や虐待などのアタッチメント関連性トラウマ)を経験しており、それが親密さに対する不快感や親密な関係の回避につながっているとされます。
このタイプは、上記の3つのタイプのいずれかと併記することになっています。

 

先に触れた統制型の愛着パターンが成長したときに典型的に表れやすいのが、「自己愛性パーソナリティ」と言われています。
自己愛性パーソナリティの人は自分に過剰な自信を持ち、自分を特別な存在とみなして自分を中心に世界が廻ること(自尊感情)を期待します。

成人の愛着スタイルを理解するうえで、前述の「不安」と「回避」の要素とともに、自己愛性という「コントロール方略」という要素も重要と言われています。

アタッチメント・スタイルを含む心理行動システムは、相互に関連しあって全般的な適応性を支えているのであり、「自律・安定型」のみがすべての心理社会的適応性をみたし、それ以外は非適応的ということではない、ということ、さらに、成人の愛着スタイルを獲得安定型に修正していくためには、自分自身と他者の精神状態に注意を向ける「メンタライジング(心に対するマインドフルネス)」によって「自己志向」と「協調性」のバランスを取りながら高めていくこと、をしっかりと理解しておいて下さいね。

院長

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