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愛着(アタッチメント)の思春期への影響1

[2012.09.18]

思春期にさしかかると、子どもは認知的な発達により、無意識に身につけてきた自分自身の価値観や感じ方、行動様式などを意識化し、相対化するようになります。

その中で、「自分とは何者であるのか?」という問いに、意識的・無意識的に直面することになります。

世の中の「男性」「女性」と自分との関係の葛藤が鮮明化し、大人と対等に張り合うことで、これが自分であるという確証を獲得しようとする方向でさまざまな行動をとるようになり、養育者からの心理的な自立を図ろうとすると言われています。(いわゆる親離れのプロセス)

 

とは言っても、その際、子ども側の自立のプロセスは、養育者をはじめとする周囲の人たちとの相互関係の中で生じますよね。

心理的自立の要因としては、
・考える力
・知識や情報を処理する力
・情動を統制する力
・他者と関係する力

など、子ども自身の対人関係や認知などの要因だけでなく
・子どもを支える周囲の精神的な支え
・子どもが現実と直接ぶつかる体験が出来る空間

など、子どもが属する集団や環境要因が関与すると言われています。

 

ところが、思春期の身体的変化の始まりの時期と、心理的な変化・自立の始まりの時期がずれることもあります。

養育者に心理的に依存する一方で、空想世界へ引きこもり、心理的な自立への足掻きを続ける子どもや、自立の試みの入口で養育者の強固な価値観の押しつけに遭い、なかば戦線離脱したかのような無気力(アパシー)に落ち込んだり、養育者が心理的自立を停滞させてしまう場合もあります。

また、親が親として機能していなかったため、親の世話をする立場をとらざるを得なかったという早熟な心理的自立を余儀なくされる場合もあります。
この場合は、一様に自分ではわけがわからない自信のなさの感覚を抱えていることが多いようです。

 

子どもの心理的自立に際して、養育者は自分の価値観や存在意義を否定されたように感じ、イライラしたり失望してしまうことが多いのですが、多くは、子どもと衝突したり落ち込んだりしながら、やがて付かず離れずの程よい距離を無意識にみつけ、それによって子どもは心理的自立を模索する空間を得ると言われています(子離れのプロセス)。

これに対し、養育者が子どもの心理的自立を停滞させる場合には、養育者の不安定な愛着(アタッチメント)・スタイルが背景にある場合が多い、と言われています。

 

不安定なアタッチメント・スタイルの養育者は、その基底が「不安」、「怖れ(恐れ)」、「不信」という違いはあっても、いざという時に他人を頼ることが出来ず、他人と親密で安心できる関係を維持することが苦手である点が共通しています。
不安定なアタッチメント・スタイルについては次々回

このような養育者と子どもとの関係の中で

(1)子どもが養育者のアタッチメント・スタイルの不安定さを取り入れている
(2)養育者のパートナーとの関係が不安定になっている
(3)子どもにとって養育者が安定的なアタッチメント対象ではなくなっている

などが、単独もしくは重畳して起きているといわれています。

このうち、(1)について。
養育者が対人関係において、不安や怖れや不信感を持っていて、他者と適切な距離がとれない場合、子どもも他者への信頼と適切な距離感を学習しそびれる可能性があることが、これまでの研究で指摘されています。

しかし、子どもは養育者だけから対人関係を学ぶわけではなく、保育者や他の身近な大人との関係の中で、安定的なアタッチメント・スタイルを身につける子どももいることが知られています。
この場合、養育者は所謂「反面教師」的な役割ですよね。

アタッチメント・スタイルと、上記(2)(3)については、次回のエントリーを楽しみにして下さいね。

院長

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