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愛着(アタッチメント)と対人的心的外傷(アタッチメント関連トラウマ)2

[2012.11.05]

ボゥルビィは、「アタッチメント(愛着)は、危険の察知やそれに伴う恐怖によって活性化される行動システム」と定義づけています。
つまり、アタッチメントシステムの主な役割は、「脅威や恐怖体験に対処すること」と言えますよね。

 

アタッチメントの対象を失うのではないかという脅威と、それに伴う恐怖体験は「アタッチメント関連トラウマ」といわれ、喪失、拒絶、見捨てられや葛藤というアタッチメント対象の利用可能性が損なわれるという脅威で、子どもではしばしば生存の脅威として知覚されます。

たとえば、乳幼児期では、見知らぬ場所や人など、恐怖を喚起させるような刺激を受けた場合、親との短期間の別離であっても、かなりのストレスとなります。
いわゆる分離不安ですね。

 

児童期になると、アタッチメントの利用可能性に対する評価が変化し、「必要な時に、アタッチメント対象を利用できる」と感じられるようになるため、アタッチメント対象と接近しなくても、長期にわたって対処出来るようになります。
こうして年長の子どもや成人は、アタッチメント対象や自分自身の能力を利用できるという自信と期待に従って行動するようになります。

 

トラウマティックな出来事として体験されるものは、PTSDの定義にもあるように、事件、事故、病気、自然災害、身体的攻撃など、「人の幸福や生存に深刻な脅威を与える」と評価されるもので、アタッチメントシステムが活性化され、アタッチメント対象から安全と保護を求めるように、行動や思考が方向づけられます。

 

一方、アタッチメント対象の喪失や見捨てられや葛藤などの「アタッチメント関連トラウマ」では、以下の4つのタイプが考えられており、成人のアタッチメント・インタビュー(AAI)によって「未解決の喪失/トラウマ(恐れ・回避型あるいは未解決型)」と分類されます。

 

1. アタッチメントの崩壊
両親の離婚などによる別離の極端な形態で、長期的でアタッチメント対象とのコミュニケーションの減少や、アタッチメント対象との再会の見通しもないまま、予期せぬ形で生じます。
母性剥奪』ということですよね。
子どもがその出来事をどう体験するかは、発達水準と経験の仕方によりますが、24ヶ月の時点で、脱抑制型の愛着障害を示した児はその後も持続すると言われています。
年長の子どもでは、別離が計画的で、コミュニケーションを維持できるかぎり、対処可能となります。
情緒障害が起きてくる場合、解離症状や依存などがみられるようです。

 

2. アタッチメント対象からの虐待
身体的あるいは性的虐待は、ほとんどの場合、極度の恐怖と無力感の体験となります。
虐待の加害者がアタッチメント対象でもあるため、本来なら安全基地となるはずの養育者が危険の源にもなるため、逃れられないジレンマと他者に対する信頼感の基盤をゆるがします。
(「無力化」と「他者からの離断」)
それでも子どもは、恐怖を与える養育者に適応しようとするため、「タイプD:無秩序型」のアタッチメント・パターンを示すようになり、成人では「未解決の喪失/トラウマ(恐れ・回避型あるいは未解決型)」といわれるアタッチメント・スタイルに移行すると考えられています。
ハーマンのいう「複雑性PTSD」やヴァン・デア・コークのいう「DESNOS」ですね。

 

3. アタッチメント対象の喪失
アタッチメント対象との死別は、恐怖体験になることもあれば、ならないこともあります。
恐怖はたいてい、実際の喪失よりも、喪失の脅威、たとえば、アタッチメント対象の生命の危険を感じるような出来事では、それが死別に至らないにしても、極度の恐怖を生み出します。
また暴力的な死(殺人や自殺、事故)は、自然死に比べて、極度の恐怖や喪失後の困難を生じやすいとされています(PTSD)。

 

4. アタッチメントの傷つき
緊急事態において、現在のアタッチメント対象によって、見捨てられたと感じる事に由来する傷つきのことで、極度の恐怖と裏切られた感覚です。
たとえば、イジメなどを受けた場合、アタッチメント対象がこのような出来事を無視し、軽視し、否定するなら、子どもは、見捨てられ、孤立したと感じるのです。
このあたりは、もう一つのブログ『如実知自心』でも書いたように養育者の「こころの能力と指向性」が影響します。

次回は「解決の喪失/トラウマ(未解決型)」とPTSD、および「アタッチメント関連トラウマ」の特徴についてみていきましょう。

院長

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