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愛着(アタッチメント)と対人的心的外傷(アタッチメント関連トラウマ)5

[2012.11.26]

アタッチメント関連トラウマでは、アタッチメント関係を安全基地として利用するのは難しいかもしれません。

ではどうすればいいのでしょうか?

 

アタッチメントが傷ついた場合は、「信頼に裏付けされた期待」と「安定したアタッチメント関係の回復」というプロセスを経る必要がありそうです。

また喪失体験の場合やアタッチメント対象からの虐待の場合は、代替あるいは第二のアタッチメント対象との間に、安定した関係を構築することで、アタッチメント対象の利用可能性(アヴェイラビリティ)は回復可能なようです。

 

Foaの情緒処理モデルによると、PTSDの症状は、「トラウマ状況に最初に「麻痺」で反応した人に生じやすい」といわれています。
麻痺の結果、トラウマ性の記憶と結びついた恐怖が凍りつき、トラウマティックな体験を処理し統合するのが困難となるのですね。

 

トラウマからの回復過程で、サバイバーがトラウマティックな出来事に関するネガティブな情緒に耐える事ができたとしても、極度の恐怖やネガティブな情緒を傾聴することは、他人にとって、とても覚悟のいることです。

アタッチメント対象が、このネガティブな情緒に耐え、トラウマティックな体験の記憶を探究する安全基地を提供することができるなら、トラウマティックな出来事を再評価し、統合するプロセスが進むと言われます。

 

トラウマからの回復に関する認知的な再評価や再構成の研究で、喪失を納得できた人は、喪失直後のストレスを報告する事が少なかったのですが、13〜18ヶ月後には抑うつ的となり、喪失にポジティブな意味を見いだしたと報告した人は、13〜18ヶ月時点でのストレスを報告することが少なかったという事実から、

・「意味の創出」あるいは喪失体験を自分自身や世界に関する広い前提に統合する能力
・その体験に長所やポジティブな意味をみつけること

が喪失からの過程で必要といわれています。

 

アタッチメントの性質は、トラウマティックな出来事から派生するストレス反応、解離的対処、過覚醒などのストレス反応を和らげますから、信頼に裏付けされた期待と、安定したアタッチメント関係の回復、あるいは代替あるいは第二のアタッチメント対象との間に、安定した関係を構築していくなかで、信頼、コミットメント、オープン・コミュニケーションなどを通じて、自分は価値があり、他者も利用可能で信頼出来るという体験を通して、トラウマに対して秩序のある出来事として述べることができるようになり、

・ストレスを適応的な方法で対処出来ること
・ポジティブな体験を再構築すること

という2つのトラウマ体験からの回復が起きてきます。
(このプロセスは、対人関係療法のすすめ方と重なりますよね。)

 

また、その効果は、自分自身や重要な対人関係に影響してきますから、トラウマや愛着障害からの回復においては安心出来るアタッチメント対象と安全な環境を構築することが何よりも必要不可欠になりますよね。

養育者や治療者が安全なアタッチメント対象であるためにはどのような要素が必要か?は、もう一つのブログ『如実知自心』で述べていますのでそちらを参照してくださいね。

 

『愛着(アタッチメント)と対人的心的外傷(アタッチメント関連トラウマ)』のシリーズは今回で終了になります。

次回から、トラウマ(衝撃体験)を受けた時に心のなかで何が起きるのか、そしてそこから回復するとはどういうことかを『刹那の反転』というシリーズでみていきましょう。

院長

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