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愛着(アタッチメント)と対人的な心的外傷(アタッチメント関連トラウマ)1

[2012.08.27]

もう一つの治療者ブログ「如実知自心」では「愛着(アタッチメント)」関連の記事の検索数が飛び抜けて多いため、こちらでも、シリーズ化して書いてみることにしました。

まず“Maltreatment or Witnessing Family Violence Can Lower a Child's IQ”(虐待やDV目撃は子どものIQの低下をもたらす)というJournal of Epidemiology and Community Healthに掲載されたショッキングな論文の紹介です。

 

著者のボストン小児病院のミッシェル・ボスケ・エンロゥ博士らは、小児の発達に影響 を及ぼす因子を調査することを目的として206例を8歳までフォローし、「対人的な心的外傷(interpersonal trauma)」を定期的に評価しました。

「対人的な心的外傷(interpersonal trauma)」には
(1)身体的虐待
(2)性的虐待
(3)精神的虐待
(4)持続的なネグレクト
(5)母親がパートナーから暴力を受けるのを目撃
などを含めています。

それで「対人的な心的外傷(interpersonal trauma)」を受けた時期を〔乳児期(0〜24カ月)か就学前期(24〜64カ月)〕でみたところ、36.5%が生後64カ月(5歳4ヶ月)までに「対人的な心的外傷(interpersonal trauma)」を経験し、乳児期にのみ「対人的な心的外傷(interpersonal trauma)」を経験した児の割合は4.8%で、就学前期のみが13%、どちらの時期にも経験していた児は18.7%だったそうです。
じつに3人に1人が「対人的な心的外傷(interpersonal trauma)」を体験していることになります。

「対人的な心的外傷(interpersonal trauma)」を経験した児は、経験していない児と比べ、いずれの時点でも、ベイリー精神発達検査、WPPSI知能診断検査、ウェイクスラー知能検査(WISC-R)の結果が有意に低く、「対人的な心的外傷(interpersonal trauma)」を2歳までに経験した小児がIQスコアの低下が最も顕著で、男性、出生時低体重、家庭の教育環境が整っていない児で、IQスコアが低い傾向にあったそうです。

ボスケ・エンロゥ博士は、『小児期、とくに2歳までに虐待や家庭内暴力の目撃などの「対人的な心的外傷(interpersonal trauma)」を経験すると、小児期早期の神経学的発達に影響し、小児期における発達の変化は生涯にわたり影響を及ぼす可能性がある』と述べています。

 

2歳までの時期といえば、ちょうど愛着(アタッチメント)の形成の時期、つまり、「分離と再接近(ラプローチメント)の危機」が特定不能の発達障害と類似した症候を示すのみならず、ADHDから行為障害や反社会性パーソナリティ障害への進展や、ハーマンらが複雑性PTSDと呼び、ヴァン・デア・コークがDESNOSと呼んだ特定不能の解離性障害などなど、後の対人関係に大きな影響を及ぼすこととオーバーラップしますよね。

そんな中で、「対人的な心的外傷(interpersonal trauma)」を2歳までに経験した小児でIQスコアの低下が最も顕著で男性、出生時低体重、家庭の教育環境が整っていない児で、IQスコアが低い傾向にあったというデータから、男性の愛着障害は自閉症スペクトラム障害(発達障害)に間違えられやすいという事実と、重なり合う可能性が示唆されますよね。

院長

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