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愛着障害と愛着の世代間伝達

[2014.01.27]

成人のアタッチメント(愛着)スタイルは、自分と愛着対象(養育者)との関係に類似した対人関係パターンを再構築するといわれています。

 

そもそも愛着(アタッチメント)は、個体が危機的状況に接したり、おそれなどのネガティブな情動を経験した際に最も活性化されやすいといわれます。

この際には、潜在的に活性化された近接関係の維持の仕方、ネガティブな情動に対する制御・対処の仕方で特徴づけられる「記憶表象としての愛着対象」をベースに、「現にその場に居合わせる愛着対象」に対する情緒的態度が表現されます。

 

養育者の愛着スタイルと小児の愛着(行動)パターンは、親の愛着表象が子に対する敏感な応答性を介して60〜70%で一致(愛着の世代間伝達)が認められます。

つまり、愛着の世代間伝達とは、「安定/自律型」の親(66%)が、情動の肯定的制御の「安定型」の子を、「愛着軽視型」の親(20%)が、情動の回避的制御の「回避型」の子を、「とらわれ型」の親(6%)が、情動の制御不全の「アンビバレント型」の子を、「未解決型」の親(8%)が、「無秩序/無方向型」の子を、持ちやすいという傾向のことです。

 

上記のようにまとめると「安定/自律型」の親、「安定型」の子のみがよくて、それ以外は良くないように思われがちですが、そうではありません。

「愛着軽視型」「とらわれ型」の親の子は、「安定/自律型」の親の子ほど安全基地行動が取れず、情動をポジティブに維持することが出来ないものの、母子相互作用でも、情動制御でも「未解決型」の親の子と比較すると、行動の整合性や組織化の程度が比較的高く保たれます。

 

問題は「未解決型」の親と「無秩序/無方向型」の子で、「未解決型」の親の特徴として「怯え/怯えさせる」が挙げられ、予測できない形で突然トラウマなどの記憶にとらわれて自ら怯え、不可解な行動をみせる母親は、結果的に子どもを怯えさせ子どもを不安状態にします。

本来、子どもが危機やおびえを感じたときに安心感を求めて近接する対象(安全基地)が母親になるのですが、この「未解決型」の母親の場合は、母親自身が危機を与える当事者にもなりうるため、子どもは回避も近接もままならない葛藤状態におかれるだけでなく、愛着システムは根本的に機能しなくなります。

これが「愛着障害(被虐待児症候群)」であり、施設に入所した子どもについての調査では61%が反応性愛着障害と診断されていますが、アメリカの一般人口では1%に満たないという報告があります。

 

つまり「愛着障害」とは、親からの虐待やネグレクトなどによる子どもの「無秩序/無方向型」の愛着パターンですが、虐待やネグレクトを受けたすべての子どもがこの障害を呈するとは限らず、子ども側に「アレキシサイミア(感情言語化困難症)」がある場合のみ関連があるということがわかっています。(『虐待と愛着(アタッチメント)2〜反応性愛着障害』参照)

また養育環境が改善されれば症状の軽快が起きることが特徴で、対人関係療法によるトラウマや慢性うつ病の治療で目指すのはこの部分です。

 

ちなみに、三田こころの健康クリニックで、過去に愛着障害(脱抑制性社交障害)の診断を満たしたのは、摂食障害で受診された3例のみでした。
そもそも、愛着障害は幼児期の診断であり、成人になっても環境が変わっても愛着障害が続いているという自己診断のほとんどは、発達障害もしくは適応障害だったんですよ。

ですから除外診断である「発達障害」や「適応障害」、「複雑性PTSD」、あるいは「関係性障害(養育者との相性の問題)」を鑑別する必要がありますよね。

 

院長

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