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対人関係療法による治療のすすめかた〜「治療の土台作り」〜予備面接1

[2012.04.13]
突然ですが。ダッシュ
・今までのやり方を変えること ・今までのやり方を変えられない理由を証明すること
皆さんなら、どちらを選びますか?   ほとんどの人は、「証明」の方を選ぶとわれています。汗 何かを変えて対処しなければいけない状況に直面したとき、自分の行動レパートリーの中で、最も良く使う問題解決法を使おうとしますよね。 たとえ、その方法が役立たないとしても、です。 だから、「うまくいかなければ、別のやり方をためしてみる」とか、水島広子先生の『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』にあるように、「自分の周りの状況(特に対人関係に関するもの)に変化を起こすよう試みる」というのは、頭でわかっていても、なかなかムズカシイですよね。   「ものごとの捉え方」で、ポーシャ・ネルソンの『5つの短い章からなる自叙伝』に触れたように、変化に対する抵抗の中心的要因は、アンビバレンスなんですよね。 変化はなぜそれほどまでに難しいのか、考えてみると、 などの理由がよく聞かれるところですよね。   この裏側にある気持ちを考えてみると、 などなど、過食や過食嘔吐の対人関係療法で扱うような感情があるみたいですよね。 こういう気持ちは、なかなか自覚できませんよね。 でも対人関係療法でやっていくことは、「自分の気持ちをよくふり返り、言葉にしてみる」ということですから、まず必要なのは、自分の気持ちをちゃんと感じることが出来るようになることなんです。   実は、変化という課題は、治療に取り組む患者さんだけではなく、サポーターとしてのご家族やパートナーにもいえることなんですよ。 サポーターとしての課題は、「病気と人格を区別する」ということで、患者さんと周囲の人たちが、「病気」が及ぼす影響を被って皆で苦労しているという図式がわかりやすいと思います。 そうなると[周囲+患者さん] vs. [病気]という構造(これが対策チーム)を作るという目的がはっきりしますよね。 「病気と人格を区別する」という視点は、対人関係療法での治療を進めていく上で「役割期待の不一致(ズレ)」を解消することにもつながりますよね。 どうしてもこれがムズカシイ・できないと感じられるサポーターは、ご自身も一緒に治療を受ける必要があるかもしれませんよね。   以前、「治療の土台作り」に触れたことがありますが、変化のプロセスを経て行動を起こすにはいくつかの段階を通ります。 ですから治療も、タイミングという意味で、変化の準備状況と一致させる必要がありますよね。 三田こころの健康クリニックの「対人関係療法に関する質問」に、
摂食障害の娘の件でご相談です。 病院になかなか行きたがらないだけでなく、こだわりが強く、家族全体が振り回されていて疲れ切ってしまいました。 娘に治療を受けさせるにはどうしたらいいでしょうか? またどうしても娘が受診しない場合、私が代わりに対人関係療法を受けることも可能でしょうか?
このような拒食症のお子さんをお持ちの親御さんから受けることの多い質問を掲載しています。 変化のプロセスとしては「前熟考期」ですよね。 このプロセスでは、周囲の人がなんとか変わって欲しくて「説得」をすることが多いのですが、これは逆効果ですよね。 もっとも適した対応は、聴き、共感し、限界を示し、変化することの利点に話をもっていくことですよね。このことは、いつか拒食症の対人関係療法で触れたいと思っています。 また、情報提供に興味を示すようになる「熟考期」になると、共感、フィードバックとともに支持的に接することが必要になりますね。 そうしてようやく、新しい行動を起こす準備ができた「準備期」に入るわけですよね。   『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』の第6章「治療に臨む基本姿勢」の中で
変化にはストレスがつきものです。どんなに不健康なバランスであっても、そのバランスを一度崩して変化させていくことには覚悟がいります。それで「どうせ私は治らない」と、その場にとどまろうとしてしまうのです。摂食障害の人は皆さん「心配性」なのですから、変化を怖れるのも無理はありません。 でも、身体は正直にできています。病気の症状が「このままではだめだ」ということを、繰り返し知らせてくれているのです。ですから、思い切って、今の不健康な「安定」に見切りをつける必要があります。変化するときには一時的にストレスを感じるものですが、今のストレスに比べればほんの短い間の、先が見えたストレスです。乗り越えることで必ず達成感が得られますし、その先には今よりも有意義な生活が待っているのです。 今の不健康な「安定」に逃げ込まず、健康な、本当の意味での安定に向かう勇気を持つことが治療の第一歩であると言えます。
と書いていらっしゃいます。 「健康な、本当の意味での安定に向かう勇気を持つ」というプロセスが、治療の「準備期」から「実行期」に進むと言うことですし、サポーターの方も、そういう意味で進んでいただく必要がありますし、三田こころの健康クリニックで治療の土台作りという予備面接を重視するのは、「変化を起こす(行動する)」という、このプロセスを進めてもらうためなんですよ。   過食症などの対人関係療法を受けたいと申し込まれる方は、すでに「準備期」の人が多いのですが、予備面接の期間に疾患教育を行い、治療者が共感を示し、支持的に接することで「治療準備性」を高めて、変化を体感する「実行期」に進んでもらうんですよ。 その中で、 という変化が起きてきます。 この変化は劇的で、患者さんによっては「変化しても大丈夫だ」という安心感と自信が生まれ、これまで大問題に感じられていたことが、「なんとかなりそうだ」という見通しが出てくるようになります。 水島先生がよく比喩としておっしゃる「霧の中で遭難していた人が、霧が晴れて進むべき道がわかった」という気づきの感覚ですよね。   実際、三田こころの健康クリニックに紹介された患者さんの中で、8回の予備面接の間にこの感覚を得られて、対人関係療法の本番を省略して、維持療法に入った患者さんもいらっしゃるのも事実ですし、対人関係療法の初期で治療の目標を決定する頃には、すでに自分でいろいろなことに取り組まれていて治療期間がすごく短くなった患者さんもいらっしゃいます。 そういうわけで、三田こころの健康クリニックでは「予備面接(治療の土台作り)」を重視しますし、じつのところ、土台作りでもあると同時に治療そのものなんですよね。 院長
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