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対人関係療法による摂食障害の治療〜病者の役割

[2012.05.18]

対人関係療法の重要な部分は

・医学モデル(「病者の役割」)
・症状とストレスの関連づけ
・焦点とする問題領域

という3つの柱でしたよね。

これらをもとにして、治療の土台作りから初期に入ります。

 

ということで、「医学モデル」について。
対人関係療法では、患者は治療可能な「病気」にかかっているため、病気であるために免除されることがあると同時に、病気から治るための義務という「病者の役割」があると考えます。

「病気」という考え方によって、「出来ること/出来ないこと」「すべきこと/すべきでない」ことを区別するので、患者と重要な他者との役割期待のズレの解消にも役立ちますよね。

 

対人関係療法による摂食障害の治療では、非適応的な対人関係パターンの変化に焦点を当てますから、治療は「変化の機会」として捉えることができますよね。

さらに、過食や過食嘔吐が病気の症状である以上、「過食をガマンすること」は「病者の役割」には含まれないということを明確にし、不要な罪悪感を減らす効果もありますよね。
しかしながら、「病者の役割」を引き受けることは、なかなか容易ではありませんよね。

 

対人関係療法による治療では、「過食や過食嘔吐などの症状は対人関係のストレスマーカー」と位置づけますよね。

ここでいう「ストレス」とは、出来事そのものと、出来事をどう体験したかということですが、対人関係療法の文脈でいうストレスとは、対人関係における「怒り・罪悪感・不安」ですよね。
患者さんの多くは、内的気づきが低い(自分の気持ちを感じられない)ため、「モヤモヤした気持ち」として感じられていることが多いのです。

そのような「モヤモヤした気持ち」が整理され解決されることなく過食へ向かっていることが一般的ですよね。

治療者が必ずと言っていいほど、「前回お会いしてから、いかがでしたか?」とか「この1週間、いかがでしたか?」と聞きますよね。

これは、「摂食障害(過食・過食嘔吐)の対人関係療法による外来治療」でも触れた、対人関係療法の4つの原則に沿っているんですよ。

 

さて、「前回お会いしてから、いかがでしたか?」とか、「この1週間、いかがでしたか?」という治療者からの問いかけに対して、「今週はほとんど毎日、過食してしまいました…」という答えが返ってきた場合には、過食につながるような出来事(重要な他者との関係)を聞きますよね。

また、「今週は母とケンカしてばかりでした…」という返事が返ってきた場合には、過食につながるようなイライラなどの気持ちと関連づけますよね。

これが、重要な他者との間の出来事と気持ちを整理するということですし、気持ちと症状の関係を知るということですよね。

 

治療初期は「針が振り切れている」状態であることが多いうえに、過食は、気持ちを麻痺させる手段にもなっているため、「怒り・罪悪感・不安」だけでなく、時には何でもない出来事も過食につながっていることもあるため、症状とストレスの関連がすんなり理解出来ないことが多いですよね。

 

1週間の出来事や、重要な他者とのやり取りをノートに記録してきてもらうようにお願いしているのは、症状とストレスの関連づけを行って行くためでもあると同時に取り組むべき課題を明確にする「病者の役割」なのですよね。

院長

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