メニュー

対人関係の土台となる自分自身との調和

[2017.06.12]

拒食症・過食症を対人関係療法で治す』を読まれると、対人関係療法は対人コミュニケーション理論に根ざしていることが理解できると思います。

間接的あるいは婉曲な言語的・非言語的コミュニケーションは、相手から配慮のある対応を得るかわりに、当たり障りのない反応や、場合によっては敵意を引きだしかねません。

初めのうちは、他者から配慮ある対応を引きだすことができても、次第に相手を疲れ果てさせ、最終的には拒絶につながってしまうことがあるのです。

「不安定な愛着スタイル(いわゆる「愛着障害」)」の人は、このパターンや他者への影響に気づかずに、問題を悪化してしまいがちです。そのため対人関係療法による治療では、まず自分のコミュニケーションのパターンを認識し、修正するように促します。

 

自分自身としっかり向き合ってください。

「私がこれを言ったら、彼女はどうするだろう?」「私がこれをしたら、彼はどう感じるだろう?」「私が一緒にいるということを、この人たちはどう思っているんだろう?」と当のではなく、「彼女が今言ったことに、自分はどう感じているのだろう?」「今彼がしたことに対する、自分の反応はどんな感じだろう?」「この人たちといるということは、私にとってどんな感じがしているのだろう?」と自問しなければなりません。

私たちは、自分自身が一番よく答えを知っているのに、外の世界に答えを求めすぎているのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

いきなりコミュニケーションを始めたり、他者に助けを求めたりするのではなく、まず「自分との関係を改善する(心の状態の変化についての気づき)」と「行動の仕方を改善する(考え・感情・情動のコントロールについての気づき)」と呼ぶ「自分自身との向き合い方(対人関係)」を変えていく「自己内対話」のプロセスが必要だということですよね。

 

過食症やむちゃ食い症の対人関係療法では、過食につながった出来事をふり返り、コミュニケーション分析を通して、自分自身の気持ちに気づいていく「衝動の波に乗る」ことをすすめていきますよね。

 

過食を始めたり、食べることをコントロールできないと感じたりしたときは、いったんストップして自問することです。
「何が起こっているのだろう。このきっかけになった対人関係上の問題は何だろう。それによって自分はどんな気持ちになっているのだろう。この状況を何とかするためには、どうしたらよいのだろう。」
はじめは難しいかもしれません。

ウィルフリィ『グループ対人関係療法』創元社

ところが、対人関係上の出来事がなくても過食は起きますし、ストレス過食よりもこちらがメインですよね。

何もすることがない時、手持ちぶさたな時に過食が起きる、いわゆる「過食が嗜癖(クセ)になった」と感じられている人には、普段から自分自身をふり返り、頭の中で繰り広げられる「摂食障害の部分」と「健康な部分」の対話を「コミュニケーション分析(自己内対話:対話型・思考記録)」することに取り組んでもらっていますよね。

 

他人と接している間でも、自身の考えと感情に気を配っていなければならない、ということです。これができるようになるためには、自分に投げかける質問を変えなければなりません。

  • 自分がこれをしたら、彼女はどう思うだろう?
  • 私があれを言ったら、彼はどういう反応をするだろう?
  • 今ここに私がいることを、この人たちはどう思っているんだろう?

といった質問の代わりに、

  • 彼女が今言ったことを、私はどう感じているんだろう?
  • 今、彼がしたことに対する私の反応はどんな感じだろう?
  • この人たちといるということは、自分にとってどんな感じがするのだろう?

と質問するのです。

こうすることで、自分自身や、自分らしさ、そして自らの価値観を失うことなく、他人と接して気を配ることができます。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

この自分自身に対する問いかけ方は、過食症や気分変調症の対人関係療法で「評価への過敏性」を治療焦点としたときに、頭の中の想像から離れて現実の対人関係に戻るために必要な心の使い方です。

過食症やむちゃ食い症だけでなく、気分変調症や不安障害からの回復、あるいは不安定型愛着スタイルの修正には、つねに自分自身を観察すること(自分自身との関係を修復すること)と対人関係に取り組むことが必要不可欠だということですよね。

 

自分の内なる声を見つけるには、自分と向き合う時間と自分を慈しむことの大切さに気づく必要があります。
他人との関係から離れて時間をとり、自分の考えや気持ちと静かに時間を過ごせるようになると、心が必要としている糧を得られるようになります。また、自分の感情、価値観、そしてリズムを見つけることができるのです。

(中略)

消耗させられるのではなく、糧を得られるような人間関係を築くには、自分の声を失わずに他人の声を聴けるようにならなければなりません。
自分自身との関係と、他人との関係のバランスを保てるようになる必要があるのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

院長

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME