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会社から休職を指示されたとき

[2021.06.24]

遅刻や欠勤、ミスが多い、時間内に仕事が終わらない、など、仕事のパフォーマンスが上がらないために、会社(上司)から休職を勧められ、「病院に行って診断書をもらってくるように」と指示されることがあります。(『休職の意味と課題』参照)

 

この社員さんの仕事のパフォーマンスの問題は、何が原因なのでしょうか?

 

時間内に仕事を終わらせることができない過重労働が原因なのか、長時間労働で心身ともに疲弊しているのか、本人の適性と合わない仕事を指示されているのか、あるいは、上司や同僚との関係で仕事どころではなくなっているのか、気軽に相談できる上司がいないのか、業績の評価に不満があってモチベーションが下がっているのか、など、さまざまな要因が考えられますよね。

 

このような職場環境面の負荷は「事例性」と呼ばれます。「事例性」が問題であれば、本来上司は医療機関の受診ではなく、産業医面談を勧めるべきなのです。

 

産業医が「個人的要因(ストレス対処力、遺伝要因、性、年齢)」「職場外の要因(プライベート、家族からの要求など)」「緩衝要因(上司や同僚、家族や友人からのサポート)」を考慮し、職場の環境調整を行って対処します。

あるいは「疾病性」が疑わしい場合には、産業医が医療機関を紹介するなどの措置をとることがあります。

 

実際、産業医から紹介されてこころの健康クリニック芝大門を受診される方も、多くいらっしゃいます。

産業医からの紹介で受診された方たちの中には、治療を継続しながら勤務を続けていらっしゃる方もいれば、休職しリワークでの復職トレーニングを経て復職された方もいらっしゃいます。

 

すべてのケースで、こころの健康クリニック芝大門を受診された時点で、現在の病状、治療方針、回復までの見通し、職場での配慮などの環境調整について、産業医に情報提供を行います。

こころの健康クリニック芝大門の院長も副院長も実際に産業医としても活動していますので、産業医が準拠する労働安全衛生法などの法律を熟知しており、職場との連携がスムーズに進みやすいのです。

 

しかし、産業医を通さずに会社(上司)が休職を指示した場合、多くの問題が起きるのです。

 

一般的な心療内科や精神科、メンタルクリニックでは、安易に「うつ病」「うつ状態」「適応障害」などと診断し、休職診断書を提出し、抗うつ薬を投与し、あたかも「疾病性」があるかのような対応をしがちです。

また、本人が希望するからとの理由で復職可能の診断書が提出され、復職したものの再休職にいたる人が後を絶ちません。そのような経験をした方も多いのではないでしょうか。

そもそも、産業医を通さなかった場合、主治医の診断書の信憑性を吟味するプロセスが抜け落ちてしまうのです。

 

一昨年、初回の緊急事態宣言が発出され、在宅勤務やテレワークが始まった時に、こういうケースがありました。本人が特定できないよう、いくつかのケースを組み合わせて書いてみます。

 

テレワークが始まったすぐは、出社してもしなくていいので楽だと感じていた社員さんでしたが、本来の業務時間が過ぎた夜間に届くメールへの対応で、次第に寝る時間が遅くなってきました。

業務開始時間ギリギリまで寝ていて、食事はデリバリーで済ませ、外出もほとんどせず、また友人とのコミュニケーションもSNSだけ。他者との関わりは毎日のウェブ会議だけという完全な引きこもり生活が3ヵ月ほど続いた頃、上司から休職をすすめられ、こころの健康クリニック芝大門を受診されたのです。

 

話をお伺いすると、業務時間にはうたた寝したり、横になって昼寝をしたりするものの、夜になると上司から連絡が来るかもしれないので、ネットで動画を見ながら起きている完全な昼夜逆転の生活でした。

さらに、SNSで友人の話を読んで自分は頑張ってないなーと気分が沈み、ウェブ会議の後には、あの時の同僚の発言は仕事ができない自分に対するイヤミだったのかも?、そういえば上司も何のフォローもしてくれなかったし、と自己関連づけを伴う敏感関係念慮や被害妄想が強くなったということでした。

 

この方の場合、治療すべき疾患はありましたが、休職は逆効果と判断し、週2日の出社日には必ず出社させることが必要との診断書を提出しました。幸い、産業医や保健師など産業保健スタッフが対応してくださり、上司が下した休職の決定も産業医が面談して解除することになり、大きな問題にならずに済みました。

 

また一方で、従業員に休職して治療する必要があるほどの「疾病性」が認められない場合は、後々、労使問題にも発展することもあります。

 

たとえば、上司との折り合いなどの対人関係の問題や、自閉症スペクトラムなどの発達障害の要素を持っている人の場合、会社が期待する業務のパフォーマンスは、病気の治癒過程と職場復帰準備性で判断できるものではなく、必要なことは環境調整や合理的配慮などの対応なのです。

 

あるケース(これも個人が特定できないよう複数ケースを組み合わせています)では、入社したばかりの自閉症スペクトラム障害の方が、不適応を起こして休職されました。

休職期限ギリギリの3ヵ月で別部署へ異動して復職したものの、業務内容が本人の特性と合わず、上司指示で再休職したケースがありました。

 

このケースでも産業医に連絡を取り、元部署への再異動や、それが叶わないのであれば現部署での業務に慣れるまでの教育的指導、短時間労働など職場環境調整とともに、発達障害特性に対する合理的配慮をお願いしましたが、会社としては対応できないの一点張りで、結局、休職期間満了で退職を余儀なくされました。

社員さんは、元部署に復職させなかった会社の対応や上司の休職指示の無効について労働審判に訴え、退職は無効となったものの、結局、転職されてしまいました。

 

休職の意味と課題』でも書いたように、会社からの休職指示は、ある意味、解雇猶予という意味合いがあります。もし上司から休職するようにと言われた方がいらっしゃいましたら、まず産業医面談をお願いしてくださいね。

 

院長

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