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休職中の生活とリワークを始めるタイミング

[2021.06.09]

レワークや在宅勤務のとき、昼間になんとなく怠かったり、眠気を感じる人も多いのではないでしょうか。

 

在宅勤務になって通勤がなくなったのはよかったものの、その分、朝起きる時間がずれ込み、始業時間ギリギリまで寝ている人も多いかもしれませんね。

 

起きる時間が遅くなると、睡眠覚醒リズムをコントロールするメラトニン・スイッチがオフになる時間が遅れます。

メラトニンは、網膜に光が当たってから16〜17時間後に再びオンになります。

 

例えば、出社するときには6時半に起きて7時半には出社していた人は、メラトニンがオンになるのは23時とか0時ですから、この時間には寝付くことができていたはずです。

しかし、在宅勤務になって9時10時に起きるようになると、次にメラトニンがオンになるのは1時2時ですよね。つまり遅く起きるようになると、寝る時間も遅くなるということです。

 

さらに、朝の起床時間が遅くなると、朝食をゆっくりとる時間もなく、朝の仕事のパフォーマンスがかなり落ちてしまいます。通勤もないため朝の身体活動量が低下しているので、身体が目を覚ましにくいのです。

ですから、朝の時間帯にリモート会議などがあると、ますます仕事のパフォーマンスが落ちてしまうのです。

 

在宅勤務では日照量、身体活動量、食事の時間と回数など、概日リズムと社会的リズムの同調因子を安定させることが非常に大切です。これが双極性障害にエビデンスがあるといわれる社会リズム療法の基本です。

また、日常生活モードと仕事モードの切り替えも重要な要素になります。

 

多くの人が、早く起きるためには早く寝ればいい、と考えてしまいますが、メラトニンという生物学的なメカニズムを知っておくと、早く寝るためには早く起きる必要があるのです。産業医が復職可能と判断する3つの要件のうち、第1.の「定時起床」というのはそういう意味です。

こころの健康クリニック芝大門のリワークプログラムでは、復職後に在宅勤務がスタートする人たちのために、このようなことも指導しています。

 

新入社員の中には、研修も終わって部署に配属され、人間関係もとくに問題はないけれども、みんなと一緒に昼食を摂るのがなんとなく面倒くさい。最近、下痢気味でお腹の調子も良くないし、なんとなくだるい感じが続いている。

うつなのかもしれないと思い、心療内科や精神科、メンタルクリニックを受診したら、抑うつ状態の診断で休職を指示された。そんな人もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

一方、うつ病や適応障害の診断で休職になってしまった人の生活はどうでしょうか?

職場のストレッサー(ストレス因)から解放されたことによる荷下ろし反応で、2〜3日は何もやる気がなく、寝てばかりいる人が多いのではないでしょうか。

 

3日を過ぎた頃から、このままでいいのだろうか?と焦りを感じるようになってきます。しかし、何をすれば良いのか、あの職場に戻るのか、と考えはじめると、気分がふさいでしまうので、また横になってスマホで動画を見たりして、何もせずにゴロゴロして過ごす日が続きます。

 

1週間もすると、外に出てみようかなという気持ちが少しずつ湧いてきます。本屋に出かけたり、服を見に行ったりしてはみるのですが、他の人が働いているのに自分だけ働いていない人生の落伍者になってしまったような気分になることもあります。

 

いずれの場合も、「主体的自己」の感覚を取り戻すことが、最初の課題になりそうです。

早く職場にもどらなくちゃ、頑張らなくちゃと思う一方、またあの職場で仕事をすることを考えると気が滅入る。

会社によっては休業制度があり、しばらくの間は給与はそのまま支給されますから、働かずに給与をもらえるのは楽だけれども、罪悪感に苛まれる。

 

このような葛藤が生まれてきたら、リハビリが必要な時期になったと思ってください。

自分の人生は自分が主人公という感覚で、今後の人生を選択していくために外部要因に責任を押しつけることを一旦ストップし、問題を解決するためには何が必要なのかを考えていく問題焦点型のストレスコーピングを身につける時期なのです。

 

リワークプログラム、とくに、医療リワークは問題焦点型のストレスコーピングを身につけるための最適なプログラムになっています。

※医療リワーク、職業リハビリテーション(職リハ・リワーク)、職場リワーク(職場復帰支援プラン)の違いについては『自分に必要なリワークプログラムは何か』、あるいはうつ病リワーク協会の『リワークプログラムについて』を参照してくださいね。

 

こころの健康クリニック芝大門では、リワークを始めるときの条件として、以下のことを挙げています。(『リワーク(職場復帰支援)外来』参照)

 

  • 復職に向けての意欲があり、リワークプログラムへの参加を希望される方。
  • リワークプログラムに対し、主治医の同意あるいは産業医や会社から指示を受けた方。
  • 生活リズムが安定し、定期的な通院が可能なレベルまで回復している方。
  • 休職の契機となった症状が回復し、週4日以上の自宅外活動ができる状態の方。
  • 小集団でのグループ活動や、職場とのやり取りについての社会機能が保たれている方。

 

上記の「復職に向けての意欲があり、リワークプログラムへの参加を希望される方」というのが、「主体的自己」感覚を取り戻すということですね。

 

ところが、適応障害の診断で休職中の新入社員の中には、「やったことのない初めての仕事をさせられたことがストレスだった」と話される方もいらっしゃいました。

よく考えてみると「仕事上の困難を乗り切る最善の方法は、仕事のやり方を覚えること」であって、休職することは解決法にはつながらないですよね。

 

また、苦手な人や価値観が合わない人との人間関係に対しては、自分自身との関係(自己志向)のうち「自己受容」を高めることで、価値観や考え方の違う他者を認めることのできる「他者受容」=協調性を高める必要があります。つまり、若いうちに現場でさまざまな人と接することで、対人関係の対応方法を身につけていく必要があるということです。

 

さらに、休職の契機となった症状が改善していることと、生活リズムが安定していることを土台にして、リワークプログラムの中でもさらなる改善をめざしていきます。

リワークプログラムの主眼は、身体的な体力(瞬発力と持久力)、集中力と注意力、コミュニケーション力や対人関係能力といった、心の体力トレーニングなのです。

 

リワークは4〜6ヵ月通えば復職できるといった、復職するための免罪符ではありません。いつでも元のように働くことができるための心の体力トレーニングによって、復職が可能な準備性を整えていくことが目的なのです。

 

院長

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