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リワーク治療の考え方

[2023.03.06]

休職にいたる要因にはさまざまなものがありますよね。

 

多くの場合、休職するには私傷病であることを証明するための診断書が必要とされます。

つまり、病気のために働けない(疾病性が事例性(勤怠・安全・パフォーマンス)に影響を与えている)ので、労働契約を一時的にストップして就労義務を治療義務に変更する「病人役割」を適用してもらうのです。(『休職診断書をめぐるトラブル〜仕事を休みたい』参照)

 

休職が治療に有効と考えられる場合

業務関連ストレスの場合は、休職することでその後の治療が進みやすくなる勝算がある場合に限って、休職が適応されると考えています。

 

精神科外来の初診には「会社を休みための診断書を書いて欲しい」という訴えで来院する患者がいる。

それが本人の希望の場合もあれば、会社から言われてという場合もあるが、どちらにせよ初診日当日に持って帰りたいらしい。

(中略)

こちらは初診でその判断を迫られるわけだが、その時の対応を間違えるとその後の治療自体が行き詰まるため、ある程度のパターンを想定しておく必要がある。

なぜなら著者自身の苦い思い出として初診で休職の診断書をお渡しし、その後一切通院しないケース、初診時はうつ病と判断し休職としたが、その後どうも本人の問題も大きかったケース、実は何度も休職を繰り返しているケース、休むようになったら朝からお酒を飲むようになってしまったケース、休職満了期間が短く気が付いたら退職させられていたケース、本人から労災であると書いてほしいと迫られるケースなど数々経験しているからである。

(中略)

診断をつけるとしたら身体表現性障害や身体症状症となるのだろうが、メンタルの問題だとなると会社側はうつ病と同様、とりあえず診断書をもらってきて会社を休ませようとするところがある。

(中略)

本人がうまくいかなくなった仕事の内容ややり方を誰かが一緒に紐解くことが重要になってくる場合は休ませることが解決にはならない。

澤山.「体調が悪いけど内科では異常ないと言われた。会社を休みたい。休みが必要という診断書を書いてください」―体調不良の職員から外来精神科医に―. 精神科治療学: 37 増刊号., 354-357. 2022.

 

業務関連のストレス因が原因で休職する場合は、「業務過多や相談できる相手がいない、業務の進め方がわからないなどで業務遂行に困難を感じたり、異動して新しい業務になじめない、昇進して役割が変わったなど、変化への適応が難しいこと」などに加えて、上司や同僚あるいは部下との対人関係の問題が多いようです。(『中村『復職のためのセルフ・トレーニング・ワークブック』金剛出版』)

 

業務過多などの業務関連性が疾病性に影響を与えている場合は、軽減業務や就業制限など業務量や業務時間の調整で対応できます。

また業務内容とのミスマッチや仕事への馴染めなさに対しては、ある程度の適応期間を設定することで対応可能と考えられますよね。

 

ですから「本人がうまくいかなくなった仕事の内容ややり方を、誰かが一緒に紐解くことが重要になってくる場合は、休ませることが解決にはならない」のです。

 

リワークプログラムでの治療

しかし、過剰適応から疲弊反応が出ている場合、これが冒頭に挙げた疾病性が事例性(勤怠・安全・パフォーマンス)に影響を与えている場合は、短期間の休職とともに、リワークプログラムでセルフマネジメント・スキルを高めるトレーニング、つまり疾病性の軽減治療を行います。

 

休職中のリワークで取り組んでいくことは、「なぜ努力する力を発揮できなかったのかを、自分の考え方や対人関係、業務遂行などの特性から分析し、休職原因を把握します。そして、今後はどんな場面で、どう行動したらよいか、どんなセルフマネジメントをしたらよいかを、再発防止策として検討する」ことが一般的です。(『中村『復職のためのセルフ・トレーニング・ワークブック』金剛出版』)

 

再発防止策として考えると、疲弊反応が回復し復職する時には、軽減業務や就労制限などで対応が可能になります。

 

しかし、対人関係の問題によって業務継続が困難になった

場合は、働きながら部署異動などの環境調整を待つことは現実的ではないですよね。

そのため一時的に休職し状態の改善を図りながら、会社に対して部署異動をお願いするということになることが多いようです。

 

職場が復職を支援する準備であるが、復職場所は元の職場(休職が始まったときの職場)となることが多く、「手引き」にも「まずは元の職場への復帰が原則」という記載がある。

これは、再発防止を目的とした業務軽減や調整がしやすいこと、休業中の労働者を受け入れられる異動先を探すのは短期間では困難なこと、たとえ好ましい職場への異動が実現したとしても新しい環境への適応には心理的負担があること、などが理由である。

ただし、メンタルヘルス不調の発症に職場環境の関与が顕著な場合は、異動を含めた環境を変えたほうが再発防止につながることもある。

髙野.「主治医から時短勤務にしてもらいなさいと言われましたが,可能ですか?」―うつ病で休業している社員の職場復帰面接時の精神科産業医の対応―. 精神科治療学: 37. 増刊号., 362-366. 2022.

 

会社には従業員に対する安全配慮義務があるものの、対人関係の問題で休職した社員の異動先を探すのが困難であることがほとんどです。

 

そうなると、対人関係の問題が残存したままですから、復職しても再発のリスクは高いままですし、休職を続けたとしても異動が可能になるまで復職の目途が立たないという、ジレンマに陥ってしまうことがほとんどなのです。

 

また、業務内容が本人の能力とマッチしていない場合も職場環境の関与(業務関連性)と考えられますから、部署異動や業務内容を考慮してもらうことになります。

 

なお、今回説明したように、医療リワークは治療場面と位置づけられます。

精神科での治療場面は、守秘義務および個人情報保護の観点から、他者に開示することができません。

その意味で、こころの健康クリニック芝大門ではリワークの見学は行っておりません。ご了承くださいますようお願いします。

 

院長

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