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ダイエットの反動としての過食

[2014.07.14]

摂食障害の精神病理の特徴である「やせ願望」は、やせたい気持ちではなく「体重や体型に対するコントロールへのこだわり」であり、「肥満恐怖」は、太るのがイヤということではなく「自己評価が体重や体型の影響を受けている状態」、のように、一般的な意味と、医学的な考え方はかなり違うことがあります。

 

たとえば「摂食障害はダイエットがきっかけ」と言われますが、それにとどまらず、ダイエットそのものに摂食障害を発症する作用があるのです。

「過食症」という病名から、ふつうの人は、過食症とは「食べたい病気」だと思っています。
でも実は過食症は「やせたい病気」です。
「やせたいのなら食べなければいいではないか」と思うでしょうが、やせようとしてダイエットする反動として過食が起こるのです。
(中略)
その証拠に、過食症の人は、まともな食事をとらない人が多いのです。
過食以外にはほとんど食べていないという人もいます。
過食以外に食べている人も、「過食するつもり」のときは高カロリーのものを好んで食べるのに対し、「過食しないつもり」のときは超低カロリーのものにする、というふうに、明らかに区別しながら食べています。
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』水島広子・著 紀伊國屋書店

このような身体のメカニズムから考えると、過食症の過食(むちゃ食い)に焦点をあてて過食をガマンするという方法は悪循環を形成するというのがよくわかりますよね。

 

水島先生も書かれているように、

無理に節食するとその後に反動でたくさん食べてしまうという経験を持つ人は多いと思います。
(中略)
人間の身体で脳に「もう食べなくてよい」という信号を送るのは、炭水化物や脂肪です。
ワカメやコンニャクなどでいくら胃を膨らませても、「もう食べなくてよい」という信号がいつまでも脳に伝わらないため、「もっと食べたい」という状態が続いて過食に走ってしまいます。
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』水島広子・著 紀伊國屋書店

食べない反動で過食になってしまうのは、身体の自然なメカニズムだとしても、一方で、食べすぎたことへの後悔や罪悪感で「次は過食をしないようにしよう」と食欲を押さえ込もうとし、あるいは「太ってしまう!」という思い込み恐怖から嘔吐したり下剤を使ったりして、さらに過食がひどくなる悪循環が形成されるのです。

 

このような「ダイエットの反動としての過食(飢餓過食)」は過去に何らかの心理的な問題があったり、あるいは愛着の問題や愛情不足があったとしても、過食が起きてくる文脈としては了解できないものです。

むしろそこに心理的な問題を見いだすとすれば、過食症に対する認知行動療法・拡大版で焦点を当てるような「体重や体型、そのコントロールへの過大評価(とらわれ)」ということになりますよね。

過食症の過食は、「ダイエットの反動としての過食」と「ストレス解消としての過食」が混在しています。
前者をなくすためには、きちんと食事をとって必要な栄養を摂取していく必要があります。
対人関係療法が効くのは後者の方ですが、ひどいストレス状況下ではきちんと食事をしようという気持ちにもなりませんので、対人関係療法は間接的には前者のタイプの過食にも効果を表すと言えます。
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』水島広子・著 紀伊國屋書店

と、水島先生が控えめに書いておられるのは、じつはこの「ダイエットの反動としての過食(飢餓過食)」は『ダイエット依存症』でも触れられているように、強迫および依存としての過食の要素が大きいだけでなく「回避」「否認」という要素が関わっているので認知に焦点を当てない対人関係療法がもっとも苦手とする領域なのです。

 

しかしそれでも対人関係療法では【評価】と【主体性】をキーワードにして「自分自身との対人関係(折りあい)」を【位置づけ】ていきます。
その具体的なすすめ方が、『対人関係療法による変化のプロセス~ありのままの自分と出会う』、『対人関係療法のこころの姿勢~ジャッジメントに気づき手放す』、『対人関係療法の取り組み方〜自分の選択に自覚と責任を持つ』で書いたようなやり方なのです。

 

このような【位置づけ】のやり方は水島先生流の対人関係療法での得意技なので、本を読んで見よう見まねでやっている似非カウンセリングではできないことですから、治療者が適切な治療を行っているかどうか(自分が正統な対人関係療法を受けているのかどうか)についての判断の目安にしてみてくださいね。

院長

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