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アレキシサイミアと情動対処行動〜多衝動型過食症

[2014.02.24]

感情の言語化障害と位置づけられるアレキシサイミアは、摂食障害や発達障害などの精神疾患だけでなく、一般人にもみられる「性質」と考えられています。
(性質については『摂食障害の愛着(アタッチメント)スタイルと気質』参照)

 

対人関係療法では気分不耐性をどう治療していくか』で挙げたアレキシサイミアの特徴は

(1) 自分の感情や身体感覚に気づいたり区別することが困難
(2) 感情や身体感覚を言葉で表現することが難しい
(3) 貧弱な想像力や想像力の制限
(4) 内省(自分自身を客観視する能力)の困難さ
(5) 自己の内面より刺激に結びついた外的な事実に関心が向かう(機械的思考)

などが挙げられますが、この中核は「感情や身体感覚への気づきと言語化困難」「空想や内省の困難」という2つの因子であることがわかっています。

情動コントロールと摂食障害』で触れたように、アレキシサイミアの情動コントロールの障害と情動解消行動は、おもにネガティブな刺激に対する処理の低下によって引き起こされます。

この対処行動は乳児期に母親のモデリング(観察学習)や直接的な指示(躾や介助)を通して身についていくものですが、この環境要因との相互作用であるプロセスが阻害され、情動認識と情動処理がうまくいかず(不安を抱えられない)情動コントロールが障害された状態が「アレキシサイミア」ですよね。

この情動(短時間の心の動揺)の持続が「感情」と呼ばれ、扁桃体によって「好き・嫌い」「快・不快」などの価値づけが行われ、これを情動価と呼びます。
この情動価によって接近や回避などの対処行動が生まれます。
(たとえば「怖れ」の情動価は「戦うか」 or 「逃げるか」)

感情にはもう一つ、身体的・認知的な状態である覚醒度の次元もあり、アレキシサイミアと扁桃体など辺縁系の反応性の低さの関連も知られています。(『過食症と衝動性』参照)

情動コントロールと摂食障害』の冒頭で書いた「反応性愛着障害・脱抑制型(脱抑制性社交障害)」児の扁桃体の働きの混乱はここでも関与してきますし、さらに、覚醒度は注意にも影響を及ぼすことからADHD(注意欠如/多動性障害)との類似性も見えてきますね。

つまり愛着の問題を背景に持つ「アレキシサイミア」は、擬死反射に似た覚醒度の低さが持続することで感情を感じないですむように対処している状態で、これが情動コントロール障害と呼ばれるんですよね。

 

ある研究では、非機能的な対処行動を行う児の養育者には、支配的、拒否的、矛盾した養育態度、回避的な愛着が関連していたとの報告があります。

このような非機能的な対処方法は

・子どもの情動の引き金に気づき(気づきと言語化)
・それと子どもの表出された情動を結びつけ
・母親がその情動をホールディング/コンテイニング(空想や内省)し
・情動体験そのものを正当なものと認める

というプロセスの阻害(愛着の問題)が一因となり、自尊心の低下につながっているようです。

そうなると子どもは、「覚醒度を下げ外界の刺激を感じなくするか(感情や身体感覚への気づきと言語化困難)」「他に注意をそらすか(空想や内省の困難)」「衝動的に情動解消行動を取るか(外的指向性)」など、「アレキシサイミア」にみられる非機能的な対処行動を取らざるを得なくなります。

 

このようなメカニズムが、摂食障害でいうと「過食症」や「むちゃ食い障害」でみられる気分不耐に伴う衝動性、つまり多衝動型と呼ばれるタイプの中心病理のようですね。

院長

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